マガジンのカバー画像

女の子のこと

16
「こんなに心を乱すのは、きっと女の子だけだろう」 これまで実際に経験した女の子との思い出や、思いや、想いを書きます。
運営しているクリエイター

記事一覧

銀河鉄道の夜

クリスマス当日は「銀河鉄道の夜」を読んで過ごした。 好きな人が遠くに住んでいる人ってこの世に何人いるんだろう? 遠くという言葉の定義も曖昧だが、例えば片道2時間以上かかるとか、1万円以上かかるとか。 そんな漠然としたものでいい。 予想もつかないが、俺もその中の一人だ。 銀河鉄道っていうのは一体なんだったんだ? 自分の中に答えはないけど、俺は銀河鉄道に乗りたい。 現実では、今日はもう会えないんだから、乗るしかない。 上手くいったら、夜の帳を切り裂いてあの人の家に行きた

その日が始まるのが、少し怖いのは。

少し肌寒くなってきた そうみんなが考え始めたある日。 その日俺は飛行機に乗ってないし、乗る予定もないのに関西国際空港に来ていた。 そんなロマンチックな男に育った覚えはなかったが、どうやら俺は帰国する女の子を迎えに空港まで行くようだ。 空港まで行くくらいだから、「待ちに待った」日なのに、なんだか少し会うのが怖い気がした。 始まる前から終わるのを恐れていると言うと、少し臆病過ぎるだろうか。 それほどに、この日を楽しみに生きてきた。 あれほど「早く過ぎてくれ」と思った時

待ち人

眠い朝の1秒は、夜の1秒とどうも同じように思えない。 後たった10秒でいいから寝かしてくれと思うのに、夜10秒早く寝るためになんの努力もしない。 それは俺が夏休みの宿題を最終日まで残していたからなのかもしれない。 終わりになってその儚さが、痛いほど実感できるのだ。 ならば、俺がその日空港まで行ってしまうのは、恋が儚いものだと知ってるからだろうか。 答えは出ないが、その日は来る。 とりあえず今日は寝る。

平成に生まれた俺たちは、過ぎ行く平成をどんな顔して見送ればいいのだろう

「平成最後の夏」という言葉が物議を醸した。 たしかに今年だけ特別扱いする必要はないと思うけど、個人的にはとってもセンセーショナルで、かつセンセーショナルな言葉が陥りがちな実態との剥離がほとんどない、素晴らしい言葉だと感じている。 平成が終わり、否が応でも俺はひとつ大人になる。 だが、未だに「性欲」と「愛」の狭間でピクニックをしている俺は青春の終わりを迎えられずにいる。 青春という言葉に含まれる「未熟さ」みたいな部分は、とても綺麗だ。 恐ろしいほど真っ直ぐに、現実を捕ま

何か月か前から感じてたやつ

自分勝手な言葉だけど 今思うと、俺は産まれてきてからずっと「自分の勝手」でしか生きていない。 相手の勝手を忖度するのも、その人との人間関係とか利害関係を忖度する自分の勝手だし 好きな人を大事にするのも、「その人を大事にしたい」という自分の勝手だ。 「私を大事にしてね」って言われたところで、俺が大事にするかどうかは俺の勝手だ。 逆に「あなたを大事にしたい」と言っても、それは俺の勝手でしかない。 独りよがりか決めるのは俺ではない。

最後の寿司

最後に食べたのは寿司だった。 特になんの思い入れもないが、美味しいので仕方ない。 なんでもかんでもエモさを求めるのもおかしい話なのだ。 最後の食事くらいは好きなものを選んでもいいだろう。 もう終わってしまうのだから・・・ あ、平成の夏の話だ。 気象庁の定義では、9月からは秋なのだ。 最終日である8/31は奇しくも金曜日だった。 何かが起こる気がした。 何か起きてほしいと願った。 なにやら楽しげなハプニングでも起こらんもんかと思っていた。 もちろん起こらな

あばよ風の残像

単刀直入にいうと 今日は淀川の花火大会で 去年の今頃、俺は付き合いたての彼女にドタキャンをくらい、絶望の淵にいた。 俺自身、自燃型の人間ではないので、何か行動をするには強いきっかけがいる。 誰かへの憧れとか、好奇心、または強い憎しみや劣等感。 俺の場合は「俺を相手にしない彼女」を見返したいという気持ち。 もう一度単刀直入にいうと、NOTEを始めたのも、ブログを始めたのも、VALUで上場したのも、いしかわTを作ったのも、アフリカにいったのも 全部俺をこっぴどく振っ

電話越しの声

”世界一好きだった女”から2年振りにラインが来た。 10年過ごした関東から地元に帰ってきたらしい。 俺はとっくの昔に振られてるから「結婚まで考えてたあの彼氏とは別れたの?」とは聞けなかった。 彼女の声が好きだった。 いつ電話しても「急にどうしたの?」とすっとぼけた声を出す。 誰よりも優しいのに、優しさを見せまいとする努力すら見せない、そんな声を聞きたくてよく電話をかけた。 電話する時はいつも「彼女の声を聞きたい」以外の目的がなかったので、理由を探すのにとても苦労した覚えがあ

スケアクロウ

昔好きだった女の夢を見た。 その子に関して今でも思い出すことが2つ。 家に泊まりに行った時、たこ焼きをしたのだが、具が豚肉だったこと。 その子を自転車の後ろに乗せて、大学から駅まで送る時の空気。 この空気は今でもしっかり胸の中にあって、鍵さえあればすぐにアクセスできる。 その鍵はthe pillowsの「スケアクロウ」という曲を聴くこと。 俺が音楽が好きなのは、こういった「空気」を含めて記憶に残してくれるからだ。 それは例えばYUKIのドラマチック、RADWIMPS

リビドー

グッと一足踏み込んで、あの子を飲みに誘う。 予防線を一歩だけ踏み越えて、今俺は勝負に出たのだ。 スマートフォンを置きキッチンに行く。 鍋を熱し、あらかじめ用意しておいた材料を投入する。 誰も見ていないが、自分自身のために全然気にしてないフリをするのだ。 出来上がった焼き飯を皿に盛り付け、机に持っていく。 刹那、微かな振動を感じたが、俺は焦らない。 「きっと気のせいだ」と自分に言い聞かし、伏せたスマートフォンを手に取る。 「いいよー!いついく?」 気のせいではなかっ

霧雨

別に気にしなくてもいいくらいの、微かな雨だった。 彼女が出してくれたのは大袈裟な特大の傘。 俺はそれを受け取る。 昨日食べたうどんを思い出した。 香川県出身の俺にとってうどんとは、好物以上の意味を持つ。 うどん以外に有名な名産品がないのでアイデンティティとなっている。 高校の時、何日連続でうどんを食べられるか、試したことがある。 結果は15日。 止まった理由は、そういえば今日のような雨だった気がする。 気にしなくていいくらいの、微かな雨だった。 はずだったが、高校帰りに

帰り道

初めて入る彼女の部屋から聞く雨音は、しっとりと重くて、世界に2人だけしかいないんじゃないかと、そんな気がして、たまらなくドキドキした。 人生とは知ることだと思う。 だから新しいことをどんどん知りたい。 逆に、この世に知らないことが何一つなければ人生なんてかけらほども面白くないだろうなと思っている。 そういう意味でも幸せな日だった。 彼女のキスの仕方も、テレビを見ながらしてもらう膝枕の快適さも、彼女が寝る前にタイマー機能でテレビを消すことも、そしてそれらを知らな

関係

見事な曇りだった。 晴れ間を一切見せない、なんなら雨が降るんじゃないかと不安になるくらい。 「晴れるといいね」 君はそう言っていたし、俺もそう思っていたので残念ではある。 でもそんなことは無関係だ。 なんたって今日はデートだから。 別に卵焼きが食べたかったワケではないし、万博公園に行きたかったワケではない。 君が作るものが食べたかっただけだし、君とゆっくりできるなら大和川の河川敷でもよかった。 今日、初めて君と手をつなぐ。 多分、きっと。 君が左手に荷物を持つもんだ

裸足の季節

最近ちょくちょく大阪の福島で飲んでいる。 温泉街のように活気に溢れ、綺麗すぎず馴染みやすい街並み、手頃な料金で美味しい料理。 人気が出るのも頷ける。 今日も飲みに来ている。もちろん女の子と。 偶然見つけたかのように馴染みの店に行く。 その方がかっこいいと思っちゃっている。 ハイボールを注文し、通されたカウンターに腰掛けた。 ふと隣の席に座っているカップルに目をやると男女ともに半袖だった。 もうそんな季節かと思いを巡らせる。 とても長い冬だった。 その分だけ春の喜びも大き