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グッと一足踏み込んで、あの子を飲みに誘う。 予防線を一歩だけ踏み越えて、今俺は勝負に出たのだ。 スマートフォンを置きキッチンに行く。 鍋を熱し、あらかじめ用意しておいた材料を投入する。 誰も見ていないが、自分自身のために全然気にしてないフリをするのだ。 出来上がった焼き飯を皿に盛り付け、机に持っていく。 刹那、微かな振動を感じたが、俺は焦らない。 「きっと気のせいだ」と自分に言い聞かし、伏せたスマートフォンを手に取る。 「いいよー!いついく?」 気のせいではなかっ
別に気にしなくてもいいくらいの、微かな雨だった。 彼女が出してくれたのは大袈裟な特大の傘。 俺はそれを受け取る。 昨日食べたうどんを思い出した。 香川県出身の俺にとってうどんとは、好物以上の意味を持つ。 うどん以外に有名な名産品がないのでアイデンティティとなっている。 高校の時、何日連続でうどんを食べられるか、試したことがある。 結果は15日。 止まった理由は、そういえば今日のような雨だった気がする。 気にしなくていいくらいの、微かな雨だった。 はずだったが、高校帰りに
初めて入る彼女の部屋から聞く雨音は、しっとりと重くて、世界に2人だけしかいないんじゃないかと、そんな気がして、たまらなくドキドキした。 人生とは知ることだと思う。 だから新しいことをどんどん知りたい。 逆に、この世に知らないことが何一つなければ人生なんてかけらほども面白くないだろうなと思っている。 そういう意味でも幸せな日だった。 彼女のキスの仕方も、テレビを見ながらしてもらう膝枕の快適さも、彼女が寝る前にタイマー機能でテレビを消すことも、そしてそれらを知らな
見事な曇りだった。 晴れ間を一切見せない、なんなら雨が降るんじゃないかと不安になるくらい。 「晴れるといいね」 君はそう言っていたし、俺もそう思っていたので残念ではある。 でもそんなことは無関係だ。 なんたって今日はデートだから。 別に卵焼きが食べたかったワケではないし、万博公園に行きたかったワケではない。 君が作るものが食べたかっただけだし、君とゆっくりできるなら大和川の河川敷でもよかった。 今日、初めて君と手をつなぐ。 多分、きっと。 君が左手に荷物を持つもんだ