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リビドー

グッと一足踏み込んで、あの子を飲みに誘う。
予防線を一歩だけ踏み越えて、今俺は勝負に出たのだ。
スマートフォンを置きキッチンに行く。
鍋を熱し、あらかじめ用意しておいた材料を投入する。
誰も見ていないが、自分自身のために全然気にしてないフリをするのだ。

出来上がった焼き飯を皿に盛り付け、机に持っていく。
刹那、微かな振動を感じたが、俺は焦らない。
「きっと気のせいだ」と自分に言い聞かし、伏せたスマートフォンを手に取る。

「いいよー!いついく?」
気のせいではなかった。
輝く文面が胸を強く打つ。
これだ、これ、、この感覚が好きなのだ。

リビドーという言葉の意味を知ったのは、大学生の時だっだと思う。

この、自分の予防線を一歩踏み越えて勝負をして、勝った時にしか起こらない胸の高鳴り。
この感覚を味わうために、俺は生きてるんだと思う。

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