「その先にあるもの」 (リーグ第9節・浦和レッズ戦:1-1)
0-0で始まった後半の開始直後。
鮮やかな時間差ボレーでゴールネットを揺らした背番号14が、Gゾーンと呼ばれる熱狂的なサポーターが陣取るバックスタンドの応援エリアに飛び込んでいった。
コロナ禍ということもあり、最近はGゾーンに走っていく選手の姿が見られなかっただけに、どこか懐かしい等々力の光景だ。
「決めた場所も近かったので。走っていくコースの目の前にGゾーンがありました・・・行っちゃえって(笑)」
こちらが尋ねると、脇坂泰斗はそう説明してくれた。
そして、あのゴールが生まれるときに流れていた時間のことも聞いてみた。家長昭博からのボールを太ももに当ててボールが宙に浮いていた瞬間、一体何を考えていたのか。
「いや、何も思ってないですよ」
そう笑っていた。とっさの身のこなしから、無心で叩き込んだ感覚のシュートだったと言う。
「アキさん(家長昭博)からのボールがももに来ていたのがわかっていたので、ももかひざで押し込もうとしていました。身体が反応したのが正直なところ。何を考えていたというのはないです」
自身にとってようやく生まれた今季リーグ戦初ゴールは、チームにとってリーグ戦初の先制点でもあった。なお去年、チームが最後に先制したのは最終節のFC東京戦になるのだが、それを決めたのも脇坂泰斗である。
ゲームの狙いも、少し詳しく聞いてみることにした。
プレビューでも言及した通り、この試合における攻撃のポイントに、浦和の最終ラインに鎮座している堅守のCBコンビをどうやって攻略すべきかがあった。具体的に言えば、ショルツとホイブラーテンである。デンマーク出身とノルウェー出身で、欧州の屈強なCBコンビが構えるチームというのは、Jリーグではあまり記憶にないほどだ。ここをどうやって攻略していくのか。
脇坂泰斗が口にしたのは、中央が堅いことの強みを逆手に取る発想だった。
「堅いので(センターバックが)真ん中で待つ傾向がある。だからこそ、サイドバックの背後が空く。そこのサイドバックさえ攻略すれば、嫌でも(サイドに)出てくる。それをうまくやれればもっとよかったと思います」
浦和レッズの両サイドバックがあれだけ攻撃的なのは、もしそこを突かれてもカバーする両センターバックが優れているからでもある。ただ、うまくサイドを突いてそっちに引っ張り出せば当然、中央エリアは手薄になる。
開始直後のランニングもそうだが、家長昭博が縦のスプリントを普段よりも繰り返していたのは、背後を突くチームの狙いとともに、強固なセンターバックであるホイブラーテンをサイドに引っ張り出すためだろう。その狙いは、川崎がベンチにドリブラーの名願斗哉を入れていたことからも透けて見えた。
実際、このサイドバックの背後狙いは、後半開始直後の先制点という形で結実している。そういう意味で、このプランはなんら悪くなかったと言える。
ただ、追加点は奪えなかった。もっと言えば、勝ち切れなかった。
なぜだったのか。
■(※追記:4月25日)「自分も8連敗を含めて経験しましたけど、勝っている時も勝っている時で苦しい部分はありました」。浦和戦とチームの現状、そして味方とのコミュニケーションについて、大島僚太が語ったこと。
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