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「KNOCKIN'ON YOUR DOOR」(リーグ第26節・セレッソ大阪戦:0-3)

割引あり

 ほんの3日前、信じられないほどの高温多湿だった新潟の地で120分を走り抜いた大南拓磨は、大阪の地でもフル出場をしていた。

 試合は90分だが、この日のアディショナルタイムは10分ほどあった。つまり、実質は100分ほどピッチに立ち続けたことになる。コンサドーレ札幌、アルビレックス新潟、セレッソ大阪と続いた真夏の過酷な3連戦を彼だけがフルで走り抜けた。

 試合後のミックスゾーンで、率直に疲労の影響を尋ねてみた。

「疲労は残っていましたけど、それは言い訳にならないので。そこは考えずやりました」

本人にとっては、さほど大きな問題ではなかったのだろう。そんな口ぶりだった。鹿児島実業時代に「一生分走った」と言うだけのことはあり、さすがのタフガイぶりだ。とはいえ、120分の死闘を終えた選手の中では、彼だけがスタメンだったことも事実である。この3連戦、特に新潟からの大阪の連戦で、自分だけがスタメンだと分かった時に戸惑いや驚きはなかったのだろうか。

「自分の中では出るつもりだったので、そこに驚きはなかったです。そういうのをタフにこなしていくことで成長していくと思いますし、試合に出ないよりは出たかった。ただそのチャンスを今日は掴めなかった。そこはしっかりと反省しながら練習していきたいと思います」

 疲れうんぬんで言い訳を並べることもできただろう。それよりも彼が目を向けていたのは、チームの結果が伴わなかったこと、そこに貢献できなかった自分自身のプレーに関する歯痒さだった。

 終わってみれば試合は0-3。
スコアレスだった前半はさほど問題がなかったはずだ。ただ疲れが見え始める後半、オウンゴールでゴールネットを揺らされると、そこから我慢しきれずに、PKでさらに2失点を重ねた。勝負どころでパワーを出せず、反撃も及ばず、そのまま力負けしたような負け方だった。

 悔やまれるのは、やはり先制点だろうか。

失点に至る場面の対応にも小さくない問題があったが、問題はその後だ。失点によってチームが間延びし始めて、攻守の歯車も噛み合わなくなった部分に、問題の本質が潜んでいるように感じた。大南の紡ぐ言葉には、失点後に選手間の試合運びにどこかズレが生じていたことが垣間見れる。

「失点で(気持ちが)落ちた感じはありました。そこからゲームがオープンになったのはあると思います。それでも(陣形を)コンパクトにするのはやらないといけない。失点後も前からも守備にいけていましたが、行かずに守ろうという時間を作ってもよかったと思います」

 失点したら、それを取り返すべく攻撃に出ていく姿勢を出すことは当然である。特に攻撃陣は攻めていきたい気持ちが強くなる。ただそれで前がかりになると、チームとしてのコンパクトさがなくなり、カウンターを受けるリスクも高まる。

 そこの幅をどれだけ選手間で許容しながらやれるのか。リスクはコントロールされているべきだし、どんな状況でもいつでも攻撃に出ていくことは勇敢ではなく、単なる無謀でしかない。

 思えばここ数試合、毎試合のように複数失点が続いている。現在の失点数は26試合を終えてすでに36失点だ。連覇した2021年シーズンは38試合を終えて28失点だった。そしてこの試合では3失点だ。オウンゴールとPKだからで、片付けるのではなく、これだけのエラーが起こっている原因を直さないと、同じ光景が再び繰り返されるだけである。

 問題は何だったのか。

※9月10日に鬼木監督に関するコラムを追記しました。当然ですが、監督というのはトレーニングに取り組む選手の姿勢を全て観て、選手の状態も把握し、四六時中、チームが勝つためのことを、誰よりも考え続けているわけです。そこで自身の描く戦い方を浸透させて、目の前の試合に臨ませる。迷いながらも決断していき、そして勝ち負け、ときに引き分けという試合結果を受け入れる。どのサッカー監督もそういう勝負の世界に生きる日常を過ごしているわけで、本当に大変な職業なのだと思います。先日のオンライン会見での質問を通じて、そんな過酷さをあらためて感じたので、それをまとめております。

■(※追記:9月10日)「結局、結果を残すというのは覚悟を決めなきゃいけないっていつも思っているので。最後はいつもそこに行き着いていますね」(鬼木達監督)。決断のプロセスにある指揮官の自問自答。そして、とことんまで考え抜く理由とは?


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