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「真夏の扉」 (リーグ第16節・ヴィッセル神戸戦:2-2)

 いきなり個人的な話をすると、久しぶりのノエビアスタジアム神戸取材でした。そういえばコロナ禍の期間は神戸取材まで足を運んでいなかったなぁ、と思い、「いつ以来だろうか?」と振り返ってみました。

・・・2019年4月のJ1リーグ第9節のヴィッセル神戸対川崎フロンターレ戦以来です。当時の試合は2-1で勝利。ちなみにフロンターレにとって平成最後のゲームでもありました。

このゲームは、当時若手の一角だった田中碧がボランチの相棒である大島僚太に「イニエスタとマッチアップしていいですか?」と申し出て、中盤の攻防戦を挑んだ試合として覚えている方も多いかもしれません。

「アオ(田中碧)が『行きたい。やってみたい』とずっと言ってたので、どうぞって(笑)。そこで空回りしないのもアオの良さ。しっかり力を出せたのは、良かったと思います」

 試合後のミックスゾーンで、大島僚太はそう言って微笑んでいた。

 そして田中碧はというと、勝利の結果や試合の感想よりも先に「楽しかったですね・・・うん。イニエスタとマッチアップして楽しかったです」と、開口一番に噛み締めながら話し始めてくれました。開始直後こそあのダブルタッチにひょいとあしらわれてしまってましたが、その後はうまく間合いを詰めて、クリーンなアプローチで粘り強くイニエスタと渡り合っていました。

「最初は飛び込んでいたんですけど、少しずつ距離感をつかんできたので。じれずに対応してれば取るチャンスもあるかなと思いました。やっぱりイニエスタが持ったときにまわりも動き出すので。そこの出どころをどれだけ潰せるのかは意識してました」

 前回ここに来た4年前、スーパースターとの攻防を初々しく振り返っていた若手が、その3年後には日の丸を背負ってワールドカップに出ることになったと思うと、少し不思議な感覚です。

そんな風にあの当時のゲームの記憶を掘り起こしていたら、あの場所にはいたけど、試合には出ていない2人の存在のことを思い出した。

 宮代大聖と脇坂泰斗です。

2019年からトップチームにプロ契約で在籍している宮代大聖が、初めてのベンチ入りを果たしたのが、このときのノエビアスタジアム神戸でのヴィッセル神戸戦でした。

 実はこの試合は脇坂泰斗がJリーグ初スタメンを飾るはずでしたが、試合前日練習に足首を負傷。帯同はするものの、出場の可否は当日判断にすることに。ただアウェイゲームなので、脇坂がプレーできない場合を考えて、11人(スタメン)+7人(ベンチ)に加えてもう1人、いわゆる19人目のメンバーとして帯同していたのが、当時新人の宮代大聖でした。

 結局、脇坂泰斗は足の腫れが治らなかったため、当時朝に出場を見合わせることに。初スタメンを逃し、彼はスタジアムの記者席でクラブスタッフと一緒に試合を観戦しています。スタメンとなったのは齋藤学で、不慣れな右サイドハーフとして出場。宮代大聖が繰り上がりでベンチに入りましたが、当時の交代枠は3だったこともあり、宮代は出場する展開にはなりませんでした。ただ記念すべきプロ初ベンチでもありました。

 なお宮代大聖の川崎フロンターレでのプロ初ゴールは、2020年9月にこの場所で行われたルヴァンカップ準々決勝の神戸戦です。川崎フロンターレでのJ1初ゴールも2020年9月のJ第15節の神戸戦(等々力)だったりします。宮代大聖はなぜかヴィッセル神戸戦に縁がある男なんですよ。

 そんな前回のノエビアスタジアム神戸取材のことをぼんやりと思い出していたら、この試合では宮代大聖と脇坂泰斗のその2人がゴールを決めました。

※7月26日に追記しました。神戸戦後のミックスゾーンでは、他の選手に話を聞いている間に通ってしまったので、高井幸大にコメントを聞くことが出来なかったんですね。日本を代表するFWである大迫勇也とのマッチアップを通じて感じたものがあったのか。オフ明けの練習後にそこを聞かせてもらいました。彼なりに感じるものがあったようです。そんなコラムを約2000文字で追記しております。


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