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取材対象者としての谷口彰悟に感謝したいこと。(中編)

 2017年はクラブが劇的な展開で初タイトルとなるリーグ制覇を成し遂げた年です。

 中村憲剛がピッチで泣き崩れる姿、ガッツポーズしながら倒れ込んだ小林悠にチームメートたちが重なってくる光景・・・あの記憶はいまだに鮮明です。

 このシーズン、チームMVPを挙げるならば満場一致で「小林悠」だと思います。キャプテンを任されて、優勝がかかった最終節でハットトリックを達成し得点王に輝きました。異論はありません。実際、チームだけではなくJリーグのMVPにも輝きました。

 ただし、もしチームの中で「影のMVP」を挙げるならば、どうでしょうか。

 おそらく谷口彰悟が名を連ねるのではないかと思います。

キャプテンの小林悠が点を取ってチームを勝たすならば、チームを後ろから支えて勝たせたのが副キャプテンの谷口でした。

「今年も無事是名馬」を体現するかのように、けがが少なく、リーグ戦は全試合フルタイム出場。高いレベルでフル稼働しておりセットプレーでリーグ7得点。攻守に大車輪の活躍です。

 前年の2016年ぐらいから、チームの中心選手としての自覚は明確に持っていたと思います。しかしこのシーズンになってからは、去年以上に自分がチームを引っ張るんだという気持ちが強くなっているのを彼のプレーからは感じましたね。

 語りどころもたくさんある選手ですが、印象的だった試合を挙げるとすれば、リーグ第20節のFC東京戦(1-1)です。

 今季リーグ戦は年間4敗。
シーズン通じて連敗もありませんでしたが、実はあわや連敗していてもおかしくない試合もありました。それが第19節のジュビロ磐田戦での大敗後の、等々力でのFC東京戦だったんです。

 後半に中島翔哉に頭で決められると、そのまま試合終盤に。真夏のゲームなので、選手の消耗も激しく、このままあわや敗戦という時間帯で得た89分のCK。

 中村憲剛がすでにベンチに下がっていたため、CKを蹴るのは森谷賢太郎でした。試合前日のセットプレー練習で森谷は一度も蹴っていませんでしたが、「ケンタロウくん(森谷賢太郎)のボールの質は独特だが、来ると信じていた」と、これが谷口彰悟の頭にドンピシャ。起死回生の同点ゴールになりました。

 ただこのゴール決めた終盤の時間帯、実は谷口彰悟はすでに限界を超えていました。ボールデッドの時間帯には珍しくその場にしゃがみこむほどの状態で、脱水症状になりながらピッチに立ち続けていたことが、試合後に判明。しかも起死回生の同点弾を決めた直後、試合終了直前には韋駄天・永井謙佑の高速カウンターに一人で対応して決定機を阻止する意地をみせています・・・・頭が下がります、というか、あんた、スゴイよ!!

 そんな風に水を向けても、谷口は「脱水症状っぽい感じになってしんどかったですね。最後は気力という感じでしたね。(あの時間帯の)永井謙佑嫌でしたよ。ズルいなと思った」と、相変わらず爽やかに笑ってましたが、彼の執念を垣間見た気がしました。

 ルヴァンカップでの大勝劇があったことでこの年のリーグ戦の多摩川クラシコはあまり印象には残っていないかもしれませんが、あの試合で谷口が見せた執念は印象的です。

・・・・というわけで、中編では初優勝の2017年、連覇を達成した2018年、そしてルヴァンカップ初優勝となった2019年の3シーズンの谷口彰悟について語っていきます。

なお、前編(2014〜16年)はこちらです。

では、スタート!!

■「フロンターレは勝負弱いと言われていて、そこに負けたくなかった」。キャプテン・小林悠と副キャプテン・谷口彰悟の良質な関係がもたらしたモノ(※2017年)

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