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やきとり酒場
沼津。
かつてお城があったという場所をぶらぶら歩く。
横手には神社の鳥居。お稲荷さんなので狛狐。
店の前には大きなお銚子のモニュメント。
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暖簾をくぐると残念ながら満席で。
それでは少しぶらぶらして時間を置いてまた覗いてみますね、と店を出る。
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駅前の、井上靖の言葉が刻まれた像を暫く眺め、原子力より大きな力を持つ「愛」とやらはいったい何処にあるのだろう、と考える。
愛ねえ。
愛にも質量とエネルギーの等価性は通用するのだろうか。
E = mc2
暫くして再び店に戻ると、どうやらカウンターに潜り込めそうなので一安心。
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赤星をいつものように手酌で飲んでいたら、横に座っていたカウンターのお隣さんが
「あの、すみません、思わず瓶ビール頼んでみたんですけど、飲みきれなくて。もし良かったら残り呑んでもらえませんか?」
流石に大瓶2本はどうかなあ、とも思ったけれど、そこを断るのはなんかカッコ悪い気がして。
よござんす、よござんすよ。
「このサッポロのラガーに憧れてて。でもワタシ、あんまりビール得意じゃないもんで」
なに、構いませんよ。では遠慮なく頂きます。
この小さめのビアグラスにね、いえいえ結構。あたしは手酌派で。
この泡を立ち上げる為に最初は勢いよく注いで、そこから暫く待ちまして、泡が落ち着いたところでグラスの端から静かに泡を持ち上げていくように注ぐ。グラスを傾けるなんてえのは粋じゃあありません。
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この店の凄いところは、一度満席で一人客のカウンターでも入れなくて、他のお店で時間を潰し、再度訪れた客をちゃんと認識していて、帰り際に「先程は申し訳ありませんでした。何度も足を運んで頂いてすみません」などとそっと声をかけてくるホスピタリティ。
そんなんされたらこれは通いますよ、ファンになりますよ。
接客の質と訪れたくなるエネルギーの等価性。
これが愛だな。
たぶん沼津でいちばん行ったお店。
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