石井力重

アイデア創出ツールの開発をしています。 創造工学の研究者です。 石井力重 (アイデア…

石井力重

アイデア創出ツールの開発をしています。 創造工学の研究者です。 石井力重 (アイデアプラント 代表) (早稲田大学 非常勤講師)

最近の記事

流れが戻らない今、私たちがすべきこと

コロナ以降、社会や生活の流れは大きく変わりました。一見するとコロナ前に戻ったようにも見えますが、実際にはかつての流れが枯れたり細くなっています。その一方で、新たな流れが生まれ、育っています。 ダムのモデル、アリのモデル多くの事業者は「一時停止していたものが再開する」と考えてビジネスを再開しましたが、思うようにいきません。流れが“戻らない”のです。これは、水門を開けば溜めていた水が流れ出すという「ダム的なモデル」が心にあるからかもしれません。 しかし現実は、意志のない水の流

    • 透明な、持ち歩かせるゴミ袋の実験

      何かの文献で(多分、システム思考のエッセイ的な書籍)で読んでいてこんな実験が書いてありました。 被験者は透明な袋を渡される。そこからの一週間は、そこに自分の出したごみを入れないといけない。どこに行くにももっていかないといけない。 その結果、その実験の被験者は顕著にゴミの量が減る、と。ゴミが出るものを手に入れないようにし始めるようで。 この被験者には、2つのストレスがかかる。ゴミを持って歩くめんどくささ、と、あんなものを食べた・買ったというプライバシーを見せて歩くことの恥ずか

      • 【51歳の展望】リタイアする日の自分が褒め、創業した日の自分が憧れる。そういう仕事を。

        2024年8月22日、奈良県の山奥、天川村(てんかわむら)にて、51歳の誕生日を迎えました。 源流に近い清流、みたらい渓谷には「みたらい休憩所」という有名な駐車場があります。その下に「ほどよく深さがあり、流れが緩く、下流へ流されない天然の止め石のあるエリア」があります。奈良県をよく知る友人に教えてもらい数年前に初めて行き、なんて気持ちのいい場所だろう、と。今回は一泊の旅程で来ました。ここからの一年間、51歳の展望を考えるために、夜になると何にもない山奥のこの村でゆっくり考え

        • 【ブレストの進行役のノウハウ】

          【ブレストの進行役のノウハウ】を、講義の中にちりばめてよ、というリクエストをもらいまして、今まで、即興でホワイトボードに書いてきたようなことを「1ノウハウ=1スライド」形式で作ってみました。 いわば、 やたらと貝の口をこじ開けないこと。 可能なら立ってブレスト。 出し尽くしたら、あと10個と告げる。 批判も階段の材料に使う。 ファシリがその場の社会規範を作る、くだけて見せる。 といった、非言語に、無意識に、いい進行役がやっていることに絞って、書いてみました。

        流れが戻らない今、私たちがすべきこと

          探求のテーマを作り出す「アイデア創出の授業」(高校の探求の時間の特別講義としてお話し&ワークショップをした内容です)

          高校で探求の授業において、各人のテーマを作り出す段階があります。これがなかなか上手くいかず悩ましいもの。それをアイデアの手法で実践する講義を作りました。探求に悩める高校の先生の一助になれば幸いです。(スライドの引用は許諾なしに行っていただいて結構です。知らせてくださったら喜びます。) ※スライドのほとんどは石井が著作権を持っていますので、転載の許諾を出せますが、中に「踏めば助かるのにロボ」が一か所あります。それは出版社さんの著作物を引用として活用していますので、その箇所だけ

          探求のテーマを作り出す「アイデア創出の授業」(高校の探求の時間の特別講義としてお話し&ワークショップをした内容です)

          同じ大福はもう二度と来ない

          関係性は大福のようなものだ。 遠目にはドライで素っ気なく見えるが、触れてみると意外に柔らかい。味わってみれば、その甘さと素晴らしさに驚かされる。そして、賞味期限がある。時が経つにつれ固くなり、やがて食べられなくなってしまう。 関係性を「消費」するようなことは避けたいが、できる限り良い時に「賞味」しておきたい。 関係性を「人と人とのもの」だけでなく、「人と対象」、あるいは「自分と自分の気持ちの間にあるもの」として捉えれば、考えが広がる。 「自分が好きなもの」との関係性に

          同じ大福はもう二度と来ない

          選択肢というものの特性

          人は多くなりすぎた選択肢を選べない。 なぜか。まず、心は「得ることの幸福」よりも「失うことの痛み」を大きく感じるという特性がある。そして1個を選ぶことは、N-1個を捨てることであり、Nが大きいと心の痛みは大きい。 このような時には、選択をせずに、選択肢を広げるだけ広げて、可能性をすべて持っておく。そして一旦ぐずぐずする。忘れるまで待ち、その後もやりたいと思えることが残っている状態にする。人間の忘却という「機能」を使うのだ。 これをすると最終的には、広げた選択肢の中で一番良

          選択肢というものの特性

          人は苦労するがAIは得意なこと(アイデア領域)

          AIの進化は日々加速しており、私たちは「考える」という行為の意味が初めて変わる時代に立ち会っています。数年後には、人とAIがタッグを組んで作業を進める時代が確実に訪れるでしょう。これは、創造や想像の仕事にも大きな影響を与えることでしょう。この新しい仕事スタイルを私は「人機共想」と呼んでいます。 この未来において、人間は単純作業や機械的作業、さらには高度な機械的作業から解放されるでしょう。その時、人間はどのような”脳作業”に専念するのでしょうか。 今日、チーム内で「アイデア

          人は苦労するがAIは得意なこと(アイデア領域)

          発想力は筋力と似ています。使わなければ失う。よく使えば、疲れてぐっすり眠れます。

          発想力は筋力と似ています。使わなければ失う。よく使えば、疲れてぐっすり眠れます。

          ブレインストーミング・カード

          https://ideaplant.jp/products/bc/index.html

          ブレインストーミング・カード

          起業100アイデアのすすめ

          これから創業する人に役立つかもしれない、創業時の思考の工夫を3つ紹介します。 ❶ 起業100アイデア 「〇〇を仕事にする(あるいは、〇〇で飯を食う)」という、その〇〇がなんであれ、こう考えてみます。 【100円でもいいからお金を出してくれる人(買ってくれる人)がいる〇〇のサービスや製品を考えよう】 これを、1行アイデアでいいので100個、列挙します。今はできないかもしれない案もOK。未成熟な案でいいからとにかく100個、あげてみます。 〇〇が、仮に「水泳」だったら、“百

          起業100アイデアのすすめ

          無限に言葉が生まれてきそうな夜

          無限に言葉が生まれてきそうな夜

          2024年の展望抱負:「人機共想(じんききょうそう)」時代への挑戦

          記事の要約人間とAIが共に想像する「人機共想」が重要となる時期にいます。人力のみでは達成できない水準の効率が実現し始めます。次第にAIのみではたどり着けない「高い人間性の仕事」が明らかになり、そこにじっくり時間をとる場面が増えます。人と機(AI)の共想をアイデアプラントは支援します。 2024年が始まるにあたり、未来に向けた展望と抱負を共有したいと思います。2024年は、人間と生成AIの協力がますます重要になる年となるでしょう。ポイントを述べます。 1. 人間とAIの共同

          2024年の展望抱負:「人機共想(じんききょうそう)」時代への挑戦

          1月7日に、安松健さんと私石井との「対談+α」のイベントがあります。

          AIと人が組み合わさった新たな創造力について探求します。 創造性の学会である「日本創造学会」では、一般の方の参加ウエルカム、の開かれたイベントを定期的に行っています。クリエイティブサロンといいます。 新春第一弾は、1月7日の午後4時です。登壇者は、安松健さんと私石井力重です。ともに、新任理事の二人です。 安松さんと「同期の理事」として時々ディスカッションをする間柄なんですが、彼は、KJ法、ユーザ観察、そしてAIの達人で、少し話すだけで多様な示唆をもらっています。 そん

          1月7日に、安松健さんと私石井との「対談+α」のイベントがあります。

          日本創造学会の研究発表大会で3つの登壇(パネルディスカッション1件、研究発表2件)を行いました。

          2023年9月30日と10月1日に開催された日本創造学会の研究発表大会では、私石井力重は、パネリストとしての登壇と2件の研究発表を行うという、通常よりもかなり多い登壇~発表をしました。 (私の学会経験の中では、過去最多で、多分これが最多だと思います。2つの研究を同じ年にするのはかなり大変でしたが、その2つは車の両輪のように、両方、今、大事なものでしたので。) 創造性教育と生成AI:教育における新たな地平 パネルディスカッションでは、創造性教育と生成AIの組み合わせがどの

          日本創造学会の研究発表大会で3つの登壇(パネルディスカッション1件、研究発表2件)を行いました。

          物は、距離を超えられない。心は、距離を越えられる。

          人々とオンラインツールを使ってみて、今思う。 物理的な実物が重要なものははかどらない。 手触りとか、その人が起こす振動とか、味、香り。これも減衰してしまう。 しかしそれらの成分を抜いた最後に残るもの、つまり心で感じるタイプのものはネットという細い線を遠くまで流れていた。 物は、距離を超えられない 心は、距離を越えられる。 そう強く感じた個人的な経験が僕にはある。 コロナの2年間で、父母が相次いで亡くなり2度の喪主をした。実家は300km以上遠方。 メイン級イベントは

          物は、距離を超えられない。心は、距離を越えられる。