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大きい絵と小さい絵――絵はサイズによって使用目的が異なる

最近、絵画の使用用途について考える機会が増えました。

どんな目的のための絵画を描くのか?

そのためのヒントとなるのが絵のサイズです。

絵のサイズは、おおまかにいうと、大きなサイズ(F20号(727×606mm)以上)と小さなサイズ(F10号(530×455mm)以下)に分かれます。

大きなサイズの絵

一般に、大きなサイズの絵画は、多くの場合、展覧会用かコンテスト出品用に描かれたものです。

これらの絵は、多数の大作と並べて、同じ壁面に飾られるので、どうしてもほかの絵と比べられてしまいます。

そのため、これらの絵は、周りの絵を圧倒するような、印象的で、インパクトが強く、目立つ絵である必要があります。こうした鑑賞目的を考えると、これらの絵としては、重厚な油彩画やアクリル画が向いているでしょう。

あなたは、展覧会を見に行くのは好きですか・

では、展覧会に出かける日のことを考えてみましょう。

自宅から遠い美術館まで、あなたは多くの場合、公共交通機関を使って、かなりの時間をかけて出かけます。美術館に到着したら、かなりの金額の入場料を払って目当ての作品を鑑賞しますが、混雑している場合は、見たい作品をせいぜい数分間しか鑑賞できません。その後は、かなりの金額の図録やお土産品を買って、疲れて帰路につきます。

それだけの時間とお金を使って鑑賞しに来たのですから、その日は充分な芸術的な満足を得られなければなりません。

展覧会の出品作品は、当然、大作で、感動的で、非日常的な体験を深く得られるものでなければならないのです。出品作品の中には小品も混じっていますが、目玉作品は圧倒的な大作でなければなりません。

次に、美術書(画集)について。

美術書に載っている作品は、ほとんどが、展覧会で見ることができるような大作ばかりです。小品だけを集めた美術書はあまりありません。もし、美術書に大作が載っていなければ、高い満足度が得られないので、誰も、高い金額を払って、そのような美術書を買うことはないでしょう。

また、美術書はほとんどの場合、一枚の絵だけを載せていることはなく、類似の多くの絵と比較しやすい順序で並べて載せています。この特徴は展覧会での展示方法と似ていますね。

こうしてみると、展覧会も美術書も、大きなサイズの絵を比較鑑賞するための舞台なのでしょう。

小さなサイズの絵

それにたいして、小さなサイズの絵は、一般に、住宅などの、私的な室内の壁に単独で飾って、日常的に目に触れて楽しむために描かれたものです。

小さなサイズの絵は、普通、ひとつの壁にひとつだけ展示されます。つまり、ほかの絵と比較されることなく、それだけが単独で鑑賞されるのです。

これは、大きなサイズの絵との大きな違いです。

そういった小さな絵画は、上品で落ち着いて、暖かく、気分を明るくし、温厚で、毎日見ても飽きない絵画である必要があります。

少なくとも、不気味な絵や、残酷な絵や、非日常の不安を引き起こすような絵は、この目的に合いません。こした用途を考えると、小品の特徴は大作とは大きく違ってきます。小品は強いインパクトを持つ、目立つ絵である必要はないのです。

こうした小品の絵としては、水彩画、特に、透明水彩画が向いているでしょう。

最近、私は、SM(サムホール)からF4号程度までの透明水彩画を描いてきましたが、こうした絵のサイズによる用途や特徴については、今まで、ほとんど考えたことがありませんでした。

しかし、今まで描いてきた水彩画を振り返ってみると、そのような小品の特徴に合った絵をだいたい描いてきたことがわかりました。なんとなく水彩画の特徴がわかっていたのですね。

画像1

(犬山城 ARCHES 中目 21.5 x 14.8 cm 1994年)

画像2

(倉 ARCHES 中目 23.0 x 33.2 cm 1994年)

これは、千葉県銚子市で見かけた倉をアレンジした絵です。なまこ壁の幾何学模様が印象的でした。


まとめ

絵は目的によって、表現方法やサイズや内容を決めるべきです。特に透明水彩画は、室内に飾る小品に向いているので、上品で落ち着いて、暖かく、気分を明るくし、毎日見ても飽きない絵画にしたほうが良いでしょう。図らずも、私の透明水彩画はそうした意図に沿ったものになっていました。

#水彩画 , #サイズ , #展覧会 , #美術書 , #室内

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