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石上ニモの笑った話No.019:若林正恭さんのファンです

 私はオードリーの若林正恭(わかばやし まさやす)さんの大ファンで、いつか、私の漫画が若林さんの目に触れる日が来ないかな、という密かな夢を持っている。密かな夢なので、当然、内緒にしている。若林さんとコネクションを持つ方が読者諸兄にいらっしゃったとしても、これは私の密かな夢であるので、どうかご本人には伝えないでほしい。いや、嘘。伝えてほしい。絶対に伝えてほしい。絶対に、確実に伝えてほしい。

 今、私はまだ漫画を描く人間としては全くの駆け出しで、電子書籍が1巻しか出ていないけれど、いつか絶対に叶えたい。5巻くらいまで溜まったら、高画質で製本するなどして、若林さんに見せに行く。オールナイトニッポンの放送前か放送後か分からないけど、ニッポン放送で出待ちをするのだ。無視されても、何度も何度も挑戦する。手数料として10万円を銀行からおろして持っていく。10万円のちからを借りて、私の漫画を読んでもらうのだ。「若林さん、私は10万円を持ってきています」というロゴをプリントしたTシャツも作って着る。

 そして、もし万が一、本当に読んでもらえたとして。若林さんは、私の漫画を読み終わったあと、

「いや、くだらねえな!」

 と言って、私の頭を強めに叩いてくれるだろうか。

 それとも、素に近い感じで、

「ちょっと……僕には合わなかったですね」

 と言って、10万円を固辞して、車でブーンと家に帰っていくだろうか。

 ああ、若林さんに見せられるようなものを、私はいつの日か、描けるのだろうか。

 そして、ここからがいつもの小話である。

 私は、若林さんの書籍は全部持っている。ある日、本屋に若林さんの新刊を買いにいったとき、店のどのあたりに陳列してあるのか分からなかったので、店員さんに声をかけた。著者名と本のタイトルを書いたメモを渡し、場所を訪ねたところ、店員さんはメモをじーっと見つめて、しばらく何かを考えていた。やがて、何かを思いついたような晴れやかな顔になって、こう言った。

店員「……ああ! これ、若林のやつですね!」

石上「若林『さん』な!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 石上の絶叫は、北関東の山奥の奥の奥まで響き渡り、冬眠していた熊が驚いて目を覚まし、そしてのそりと寝返りを打ったあと、そのまま二度寝したと言われている。

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