一人の人として生きる母親像『産める国 フランスの子育て事情』レビュー
初期にフェミニズムの揶揄←日本イマココ?
いきなりですが、日本には「フェミニスト(笑)」という言葉があります。
女性の権利のため主張する人々を揶揄する言葉です。ただこれは、日本が劣っているから、というひとことでは説明ができないようです。
意外なことに、本書曰く、フランスでもフェミニズム発祥の時期にはフェミニストに対する揶揄、罵倒があったとのことでした。私はこれを、日本の男女不平等について、日本にも発展の可能性がある、という希望であると解釈しました。
つまり、日本は「劣っている」のではなく、「途上」であるということです。
母親になると自分を失う慣例
日本は、「母とはかくあるべし」が強いと、本書では語られています。母子密着型の子育てで、母親は全ての時間を子供に費やすことが美徳とされている。
これを全く否定するわけではありませんが、フランスの慣習では「子供を自立させる」ことに重きが置かれています。
寝室を分けるフランスの親子
フランスでは、親子の寝室は早くて6ヶ月ほどで分けるそうです。
もちろん完全な1人寝ではなく、母親もしくは父親が寝かしつけて、子供が眠ってからは一人にさせているとのこと。
逆に日本では、もともと小さい家で家族みんなが同じ部屋で寝ていたというルーツもあり、所謂「川の字」もしくはベビーベッドを夫婦の寝室に設置する、という印象がなんとなくあります。
本書では様々な研究結果や説を交えて様々な角度から家族のあり方について検討されていましたが、いずれにせよ個々の生活スタイルや心身のバランスを考えて「ねばならない」を手放してみる、ということも視野に入れると気苦労が減るのかもしれませんね。
逆に周囲を気にして働くフランス女性たち
さて、ここまでフランス流を礼賛してきましたが、実際のところフランス女性たちが楽々とこれらの生活をこなして幸せな暮らしをしているかというと、それは一概にYESとは言い難い部分もありました。
フランスでは、「専業主婦=何もしていない」という、日本の「子供が可哀想」とは非常に対照的な圧力があるようです。
もちろん男性の家事への参加や家事の外注は日本よりかなり進んでいますが、それでもやはり女性の負担割合は多く、結局のところ、「家事も仕事も(それも結局時短勤務)」という女性が大多数とのことです。
本書はインタビュー形式でしたが、自分の時間を持つこと、夫婦の時間をもつことを大切にしている方がほとんどである一方で、それらをこなすために相当な努力を強いられているのもまた現状であるわけです。
また、家事や子育てのアウトソーシングは移民が請け負っている場合が多いという話も出ていました。
日本の発展を目指して
ここまで出版年当時と現代の日本を比較してきましたが、やはり日本は「もっと誰かに頼れなければならない」のではないかと考えられます。
現在課題とされている待機児童の解消や男性の家事参加などはもちろんですが、アウトソーシングの普及など取り入れて良い文化がもっとたくさんあるのではないかとも思います。
昨今は時短家電が普及しており(私も独り身ですが多用しています)労働人口が少ない日本であってもアウトソーシングに近い形式がとれることが増えていることもまた事実です。しかし、「じゃあこのホットクックの設定をして切った材料を入れてよそって釜を洗うのは誰?」「ドラム式洗濯機に洗濯物を入れて乾燥が済んだ洗濯物を畳むのは誰?」と、家電もそれほど夢のようではありません。これは実体験です。
やはり日本にはまだまだ発展が必要です。本書を読んで一番大切だと思ったのは、まずは些細なことでもきちんと話し合うこと。
如何にして夫婦"それぞれの"仕事・家事・子育てを成り立たせるか。人口減が叫ばれる今、私たちは問われています。
2008年の本なのでデータが多少古いかもしれませんが、本書は私の活動において大変勉強になりました。私は独り身で子供もおりませんので、勉強して実態に即した現実的な作品作りをしたいとずっと考えていました。そのひとつの糧となった本でした。
様々な背景の方に、考えるきっかけとなれば幸いです。
※画像はフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。
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