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『発達障害のある子のメンタルヘルスケア』レビュー

 発達障害は個々の差が大きく、一概に「これ」といった方法では解決に繋がらないことも多いため保護者・教員・友人関係など難儀することの多い課題です。

 そんな子供たちを包括的に支援するさまざまな職種の方の述べる現状をまとめたのが本書になります。

 とくに私が着目したのは、検診等により早期発見がなされていても思春期等環境の変化・本人の成長等により新たに問題が生じる点でした。問題の表出の仕方は様々で、自傷、他害、摂食障害、窃盗、不安症、抑うつ、などなど。一般社会でよくみられるこれらの疾患の背景に発達障害が関わっている点です。

 とくに不安症とASDを併発していると言語的理解ができないため、自らの感じている不安を言語で表現することが難しく、身体変化によってしか表現ができないため原因の特定や解決に難渋することがあるそうです。
 不安解消プログラムでは、まず本人には身体変化を参照して不安であるということを認識させる方法がとられているようです(冷や汗、手の震えなど)。そして、物事と自分がそれをどの程度不安に感じるかなどを可視化する。最後は、曝露療法により不安を小さくする(実際に不安と感じる場面を体感する、いわばショック療法)という風にすすんでいくようです。

 また、本書では育児支援についても言及されていました。発達障害を持つ子の家庭では、周りの子と同じようにできない劣等感や、日々の登校しぶり、暴力、癇癪、といったようなことで保護者の方が疲弊してしまうことがあるようです。一時的な親子の引き離しや、カウンセリング、保護者への接し方の指導などさまざまな支援が行われています。

 そのほか、スクールカウンセラー(SC)の役割なども記されていました。私は正直、学校でいじめられていたときSCの方は具体的な行動をとらなかったのでSCを信用していなかったのですが、SCは児童に関わるさまざまな立場の人からの相談を受け取りまとめ、具体的な支援やリソースに結びつける役割であることを知りました。いわゆるよろず相談とのことでした。これは自分以外でも誤解の多い職種なのではないかと思い、反省も兼ねて紹介させていただきました。

 さまざまな事例が載った本で、非常に参考になりました。現状行われている支援の紹介から将来的な方向性などが多職種のさまざまな著者によってそれぞれの視点から描かれていて、当事者の方に一番役立つ本なのではないかと思いました。

 これからの社会において誰もが避けては通れない問題であると認識しています。ひきつづき勉強していきたいと思います。

※画像はフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。

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