
ミラティブが突破するライブ配信の3つの壁
どうも、春にワクワクしている石ころです。
春といえば、出会いと別れの季節。いま話題の「ゲーム実況アプリ」のミラティブ上でも、石ころにはたくさんの出会いがありました(決して出会い厨ではありません。)
今回、春のミラティブ分析祭りの第3話を担当させて頂くことになりました。
ミラティブは「ゲーム実況アプリ」と呼ばれているが、「ライブ配信アプリ」の一つです。「ゲーム実況」に特化したライブ配信というだけだ。そんなライブ配信に、僕は今まで2度挑戦したことがあった。
忘れやしない、ライブ配信デビューの日
2017年。日本に台湾発の「17Live」が上陸した。「このビッグウェーブに、俺も乗っかってやる...ゼハハハハハ...いまに見てろよ!!! ヒカキン越えるぞっっ」当時僕は意気込んでいた。サラリーマンとして顔出しには抵抗があったので、ドンキホーテで新調した帽子とサングラスをビシッと装着し、机に座って17Liveの配信ボタンを押した。
「来るかな、来るかな、何話そうかな。。女の子だったらどうしよ。。。」とドキドキしながら待ち構えること30分。
誰も来なかった。
僕はそっと帽子とサングラスを外し、眠りについた。
この一件は黒歴史として、闇に葬り去った。
あれから月日がたち、僕も大人になっていった。
背が伸びるにつれて、伝えたいことも増えていった。僕は元気でいるよ、心配事も少ないよ。ただ、一つ、今も思い出すよ。予報外れの雨に打たれて、泣き出しそうな君の震える手を握れなかったあの日を。
闇に葬り去ったはずだったのに...
暗闇を照らすような微かな光を探したよ。そうして知った痛みを、いまだに僕は覚えている。
やっぱり忘れられない...
ライブ配信しだいっ...!!!!
2度目の挑戦を心に決めた。
もう一度君に会おうとして、スマートフォンをまた担いで、前と同じ午前2時、デスクまでかけてくよ。始めようかライブ配信、2分後に君が来なくとも、今というほうき星、君と二人追いかけている。
(BUMP OF CHICKEN『天体観測』を一部改変)
2度目は韓国発のラジオ配信アプリ、「Spoon」だ。ラジオという言葉から分かる通り、「Spoon」では映像ではなく音声のみの配信となっている。顔出しする必要がないので、最初のハードルがだいぶ下がった。しばらくすると、ようやく誰かが入室してくれた。
来てくれたはいいが、見ず知らずの人と何を話せばいいか分からない。積極的にコメントをしてくれたら、こっちも話しやすいんだけども、挨拶しても無言で見ているだけだったりする。そして気付いたらいなくなっている。なんだこれ、全然楽しめないじゃんか。
冬を乗り越え、訪れた春
こうして完全に見る側の人間に舞い戻った自分を、再び配信する側に引き戻してくれたのが、日本発のアプリ「ミラティブ」であった。「ミラティブ」は2019年1月の頭に、本連載を共同企画している「世界一TikTokを愛する男」として有名なtoricagoさんに教えてもらった。まだミラティブ社が35億円の資金調達を実施し、スタートアップ界隈を揺るがす前のことであった。
最初は、「またライブ配信かよ?もう傷つくのはこりごりだ。」
ふてくされながらも、騙されたと思ってやってみた。
その日から2ヶ月が経った。
誰一人に見られることがなかった、かつての石ころの姿はそこにはなかった。
基本的に何をやらせても三日坊主である石ころが、まさかの「まいにち配信者」の称号をも手にしてしまった。
なんで何度もライブ配信に挫折した石ころはミラティブを続けることができているのか?それは、ミラティブというプロダクトの設計が非常に秀逸であるからだ。
顔出しの壁を突破
ミラティブでは「エモモ」というアバターを通してコミュニケーションをする。
僕のような会社勤めの人は仮面を買わなくても配信ができる。(YouTuberのラファエルも元々はサラリーマンである。)容姿に自信が無くて顔出しに抵抗がある人だって、「エモモ」を作って顔出しをしなくても配信ができてしまう。
配信を始めてから誰かが入室してくれるまで
17LiveでもSpoonでも、誰かが来てくれるまでじーっとスマホ画面の前に待機している必要があった。もちろん画面のコメント欄には「故スティーブ・ジョブズさんが入室しました。」と表示されるのだが、画面のコメント欄を見ていないと気が付かない。最初の5分くらいは待てるけど、スマホを机の上に置いておいて、同時に違う作業をすることがある。しばらくしてから、もっかいスマホに戻ると、少し前に誰かが入室してくれていたっぽいけど、もういなくなっていたなんてことはよくある。それに対してミラティブでは、ミラティブを起動したまま他のアプリを開いていたとしても、「イーロン・マスクさんが入室しました。」とポップアップが出てくるのだ。さらに、コメント読み上げ機能をONしておくと、スマホを見てすらいなくても「堀江 貴文さんが入室しました。」と読み上げてくれる。なので基本的に取りこぼしはゼロだ。細かい話だが、配信側にとっては大きな違いだ。誰かが来るまで指をくわえてじっと待ち続けるか、誰かが来るまで好きなことをやっていてもいいか。僕もミラティブでの初配信では「とりあえず誰か来るまで先にTikTok見とくか。」という感覚でTikTokを見ていた。仮に誰も来なかったとしても、機会損失はゼロだ。普通にTikTokを見て楽しんでるからね。
話すネタがなくて困ることがない
僕の2度目の失敗で語ったように、ライブ配信初心者の頃は喋ることがない。アプリ上ですでに一定のファンが付いている人は、配信を開始したらすぐにたくさんの人が入室してくれて、コメントがどんどん付くのでそのコメントに対して返事をしていく形で話が広がっていく。また、ギター弾き語りなど、何かしらの特殊なスキルを持ち合わせていれば、喋らなくてもそれらを披露すればいいので、そもそも困らない。だが僕のような、なんの取り柄もない、この世に生まれてきた価値すら疑われかねない、踏みつぶされそうな小石のような存在には厳しい。
だがミラティブでは、「荒野行動」「PUBG」などいろんなゲームで遊べばいいだけだ。視聴者との共通の話題はそのゲームになる。何か1から面白いことを言う必要もなく、ただただゲームをプレイしてその感想を言うだけでいい。
僕も最初はTikTokを一人で見ていたら、しばらくして、誰かが入室してきた。そのタイミングから、僕も喋り出す。「◯◯さん、いらっしゃい」。すでにTikTokを見ているので「え、これ同一人物か??!! Before/Afterすごいww」「この曲好きだ〜」と淡々と喋る。特に身構えずに、友達とTikTokを見るような感覚で、感想をつらつらと述べていくだけだ。内心「こんなんでいいのかな...??」と少し不安に思いながらも続けるが、視聴者はちゃんとコメントをしてくれている。気付いたら、立派にライブ配信ができていた。ラジオ配信アプリSpoonでは、コメントがない間は、沈黙が続いてしまう。ミラティブでは、沈黙になってもこっちはスマホをいじり続けるし、その様子は画面共有によって視聴者にも見えているので、沈黙に気まずさがない。コンテンツはちゃんと動き続けているからね。
初心者ブースト
誰かが入室するまで待機する必要がなくても、永遠に誰も来てくれなかったら意味がない。この課題に対しては、おそらくミラティブは初心者優遇のアルゴリズムで対応しているはずだ。登録したての初心者には「期待のルーキー」という称号が与えられ、オススメ欄に乗りやすい設計になっていると思われる。オススメ欄に出ている人のアプリ登録日をチェックすると、当日だったり、1日前だったりする人がたくさんいる。石ころ的にも、初期に配信していた時はガンガン新しい人が入室してきてくれたが、2ヶ月目が経過した今は新規流入が比較的少なくなり、基本いつもの固定メンバーである。TikTokが無名の初心者にも平等にチャンスを与えたように、ミラティブでも同じことが行われているようだ。ただTikTokでは動画がバズらなくても、次の動画を出せばまた一定数の人に見てもらえて、セカンドチャンス、サードチャンスと続いていくはずなのだが、ミラティブでは登録したての最初の期間しかチャンスがないように感じる。僕は初心者ブーストをもっかい利用するために、一度退会してやり直そうかと考えているくらいだ。そういう意味で、初期のブーストで十分な人気を獲得できなかった場合のセカンドチャンス問題に運営側がどう対応していくのか、これから注目していきたい。とはいえ、複数の固定メンバーが付いたらもう立派なコミュニティが出来上がり、十分楽しめるので、「トップミラティバーに俺はなる!」という野望でも燃やしていない限り、そもそもセカンドチャンスはいらないとも思える。
長々と書いてしまったが、ライブ配信では、①そもそもの顔出しのハードル、②人が来てくれない or 来ても気付かない、③人が来てくれても話すネタがない。という3ステップの課題がある。これらを全てクリアしないと、配信者側がアハモーメントを迎えてドハマりすることはない。ミラティブは、①はアバターの時点でクリア、②は初心者をオススメ欄に混ぜること・誰かが入室した時の通知、③はゲーム実況・画面共有によるネタ提供で解決だ。
今までもライブ配信はたくさんあったが、配信する側は結果的に一部のアイドルやアーティストに限られていたりして、一般人の手からはほど遠いものであった。上記によってミラティブは人類史上はじめて、民衆にまでライブ配信文化を浸透させることができるかもしれない。
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