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名前をつけてやる

このままではただ内向的な人間が唐突にブランドバッグを買っただけの記録になってしまう。
別にそれでも良いのだが、ここでは自問自答の道のりを書いていきたい。

さて先にバッグを購入しておいてなんですが、ようやくコンセプト作りです。長いです。

・そもそも何に悩んでいたのか

実を言うとここ最近の何年かは、服選びに悩む~とか、着たい服がないとか、そういう悩みはなかったのです。おしゃれかどうかはともかく、自分の持ち物はわりとお気に入りばかり。ネットでの買いものが多いのは改善した方が良いと思っていたし、お気に入りのレベルを更に上げられるなら上げたいという気持ちはあったが。

私が漠然と悩んでいたのは、人から持たれるイメージと自分の内面にギャップがありそうだな? と感じていたこと。
自分を取り巻く環境が変わりゼロから人間関係を構築するにあたって、それを実感することがあった。
ファッションでもう少し自分の内面を表現できたらそれが改善されるかもしれないと思っていました。

・糖衣かもしれない

コンセプト作りに本腰を入れ始めたときに頭をよぎったのは、先日購入したGUCCIのバッグのことです。
私は自分の記事の中でバッグのことをこう書きました。「端正な佇まいで、存在感あるのに押し付けがましくない。品と鷹揚さも感じる。」
実はちょっと、やってしまったか? と思いました。
どちらかというとこれは私の糖衣(※)寄りのバッグかもしれないと感じたからです。自己紹介であるはずのバッグをセイロガン寄りにしなかったのはどうなんだろう…と。
(※簡単に言うと糖衣=社会性、セイロガン=糖衣の下の核である個性のこと。
詳しくは→自問自答ファッション通信『ファッションの“セイロガン糖衣A”のお話』

GUCCIの店舗に行く前に私が公式サイトで下見しスクショしたバッグは3つありました。そのうちの2つはホースビットで、実際に購入したのも色違いのホースビットです。
問題は残りのひとつのバッグ。これ、実際に見るまでは実は私の内面を表すバッグなのではないかと思っていたのです。

GUCCI公式サイトより

ディオニュソス。
この美しくも一筋縄ではいかない感じ、いい意味でオラついています。
でも実際に持たせてもらうと私には似合わなかった。私が持つとこのバッグの存在感(オラつき)が唐突なものに感じられたのです。ちょっと主張があからさまだな。これを持つには全体的にもう少しエッジの効いた雰囲気が必要だな……と思ったのを覚えています。

ここまで振り返って、ふと気付いたことがありました。わりと衝撃的で重要なことです。
それは、そもそも私の今の服装がかなり厚い糖衣なのではないか? ということです。100%まではいかないかもしれないが、95%くらい糖衣かもしれない。なんということでしょう。

私の今の服装と外見について書きます。
服装はカジュアルよりもどちらかというと綺麗めな雰囲気。外見は少し作り込んだ方が垢抜けるタイプ。木綿のTシャツよりもポリエステルのブラウスな感じです。意識しているのは「小綺麗・感じよい・まともに見える」。足元はパンプスではなくメンズライクなローファーか紐靴で、コンサバになり過ぎないよう自分なりにバランスを取っています。
髪はロングで、 その理由を美容師さんとの会話の中で「ショートよりも擬態しやすいから」と言ったことがあります。

擬態。そうなんです、私はこの社会を生きやすいようにめちゃくちゃ擬態しています。
なぜなら本来の私は社会性が著しく乏しいから。ありのままの自分では他人と関わって社会生活を営むことができない。
もともとの顔立ちや雰囲気に合っていて、人から引かれず、私がいちばん堂々とできる生きやすい格好。それが今の髪型や服装です。
そして糖衣95%と言えど好きな服しか着ていないため、問題がないと言えばないはずだったのです。
しかし実際には糖衣95%が原因と思われる困ったことが出てきた。

・糖衣95%による問題点

①自分の内面と外面との乖離。内面が存在を忘れるなと咽び泣く。
②人から理解されにくい(もしくは理解されないだろうと自分が思ってしまう)、そして気の合う人と知り合うチャンスが減る。

①は、まあ、noteを始めたきっかけでもあります。
つまり「私は実はもっと面白い人間なんです」と言いたかったわけですね。恥ずかしい! 何を根拠に言ってるんでしょうね。自らハードル上げてる。
でも、noteを書き始めて、自分のその欲求に自覚的になっただけでも内面の咽び泣きはかなり宥められました。

②は、そもそも内面についての説明を自分がしていないのですから、理解されないのは当然です。
結果的に「類は友を呼ぶ」の逆パターン現象が起こってるというか……
「類は友を呼ぶ」ためには自分の属する類を示しておかないとならないのに、その札がない、もしくは中身と違う札が貼ってあるわけです。上手くいくわけがない。

しかしこれファッションの問題なんでしょうか?
うーん、言動が大切な気もする。
これだけ自分について長文を書いておいてなんですが、私は人に自分のことを話すのがとても苦手。些末な雑談ほど苦手。後から「自分のことばかり話し過ぎたかな?」「あの表現でちゃんと伝わったかな?」と気に病んだり後悔することが多い。
でもファッションが人の印象に与える影響力は大きいから関係はあるはず! ということで話を進める。

・改めてコンセプトを考える

社会に適応するための自分をA面とするならば、いま考えるべきなのはB面の方です。
とにかく自分のアンダーグラウンドに目を向けてコンセプトを考えることにしました。
キーワードはつらつらと出てくるものの、こりゃ難航しそうだなと思ったところで、途中までしか観られていなかったこちらのアーカイブを最後まで拝見しました。

この中で語られているムーンプランナーさんのコンセプトについて、個人的にはっとした点がありました。
あれだけ凄まじい文才を持った方が、そこに纏わる直接的な単語は一切コンセプトに使ってないんだなということです。(しびれる)

私はキーワードひとつひとつに囚われ過ぎていたかもしれないな? と思い、考え方を変えてみました。
これは小説におけるタイトル。自分のキャッチコピーを考えるということなんだなと。必ずしも自分に関わる単語をすべて入れる必要はない(私の場合)。イメージを浮かべて言語化する方がやりやすいかもしれない。
出来れば端的に核心を突いたもの。さらに叶うなら綺麗な語感であってほしい。

そうしたらまず浮かんできたフレーズがありました。

「秘められた宝石」です。

ええやん。
ええやんええやん。

人知れず静かに煌めく宝石の姿が浮かびます。
なぜかザコシショウの声も聞こえました。
私は石が好きでジュエリー販売の仕事をしていました。その経験とも重なります。

宝石は私の内側にある綺麗なものや面白いことの象徴です。積み重ねた過去の結晶でもあります。
私の趣味はずっと『この世の美しいものに思いを馳せること』でした。今もそうです。そういう名前の趣味はこの世に存在しないようなので人に言ったことはないですが。

そして過去に絵を描いていたこと、ピアノを弾いていたこと、小説を書いていたこと。どれも中途半端で辞めてしまいました。現在まで続けていることはひとつもないのに、自分だけはその過去を大事にしていることを、私はどこか恥ずかしく情けないことだと思っていました。今の自分には何もないのにくだらない感傷だと。
しかし全ては過去のことになってしまっても、それは今の自分を形づくる大切な要素なのだから、そのまま大切に抱えていけば良いのです。

で、結局……私はあからさまにそれらを表に出すのはどうやら趣味ではないようなので、宝石は秘められています。
その美しさを誰かと分かち合いたいときに、分かち合えそうな相手にだけそっと見せるイメージです。感じ悪いな。

ただ「秘められた宝石」だけだと主語が宝石になってしまうので、ファッションのコンセプトにするならもう1歩アプローチが必要です。
はい、秘められた宝石は誰の中で煌めいているのか? ということです。
いや、まあ、私なんですが……。
私はこの世界で一体どのように存在していたいのか。

私は、孤高であり、静かに光っていたいです。
私は村上龍の著書『テニスボーイの憂鬱』に出てくる「人生はシャンペンだ」論が好きです。

他人は必要ではない、そんな生き方をしなければいけない。つまりグラスのシャンペンみたいにキラキラと輝いていなければいけない、他人に対してできることは、キラキラと輝いている自分を見せてやることだけなのだ…………………

村上龍 『テニスボーイの憂鬱』

人は皆孤独な星です。静かに各々の命を燃やすだけです。

浮かんだイメージは、月、夜の砂漠に立つサボテン、灯台。
灯台はかなり良い線いってると思いました。暗闇の中静かに光る。しかし「導く」ニュアンスがあるのがどうも引っかかるな(人を導きたくない)。あと灯台が着る服とは……????
さらに考え、灯台のビジュアルから連想してこれだ!! となるものが見つかりました。

隠者(世捨て人)です。

フリー素材の隠者たん

私はタロットにまったく詳しくありません。
「隠者」という単語と、灯り(灯台から連想した)を持った陰のある感じの人がいたな~という記憶がうっすらとあったので検索して辿り着きました。
隠者には本来は宗教的な背景があるようですが、ここでは口語的な意味(俗世を離れた世捨て人)として使わせていただきます。

タロットカードにおける「隠者」のキーワードは「内省」「探求」「思慮深さ」「孤独」。説明しているサイトによって多少の違いがありますが、しっくりくるものを抽出してみました。あとこれは正位置の場合の意味で、逆位置になるとまた変わるそうです。
(ちなみにサイトによっては「自問自答」もキーワードにありました笑)
隠者……イイ。

・決定

というわけで私のコンセプト(仮)は
「宝石を内に秘めた隠者」です。
わあ、社会性ゼロだあ。

でも、ええやん。
ええやんええやん。

裸のザコシショウも褒めてくれます。

我ながらううむ。と唸ったのは、はじめに自分のキーワードを考える時点で「優しい・明るい・親しみ」などの対人的にポジティブなワードが一切出てこなかったことです。ううむ。
おそらくその部分は糖衣に一任している。

忘れちゃいかんのですが、私は全体的には「感じよく」いたいのです。これはコンセプトが決定した今も変わりません。
そう考えると私の糖衣……対人面(社会性)を重視した上での「なりたい・似合う・好き」なら、なかなかに実現してるかもしれないと思います。ここは大きく変えないかもしれません。
好きで似合うものを選んできたし、この糖衣も私の一部です。
「宝石を内に秘めた隠者」の要素は、あくまで自分の本質のヒントとしてさりげなく取り入れたい。

・ホースビットは失敗だったのか?

まったく失敗じゃないです!(よかったー)
コンセプトが決まってからGUCCIに行ってもこちらを選んでいたことでしょう。
やっぱり見るたびに大好きだと思うし、似合うし、今後の服装にコンセプトの要素を取り入れても受け止めてくれそうな懐の深さを感じます。というか、今後のことは不確定要素なので本当のところは分かりませんが! このバッグを失敗になんてさせません。
私の場合はこれを買ったからこそコンセプト作りに本腰が入ったと言える。
結果オーライです。


コンセプトをどう取り入れるかは今後の課題ですが。
ガンバレ~。(自分)
服に少し個性的な要素を入れていくのか。
靴でがっつり表現するのか。

なんにせよ、心の中にINJAが居てくれると思うと心強いです。
あと多分、ときどきZAKOSHIも居るね……??


私にとって宝石といえばこの小説
暗く美しい

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