できる社会科教師は新聞チラシを収集する?
新聞に挟まってくるスーパーマーケットの折り込みチラシは、子供たちに社会科の資質・能力を育む上で大変役に立ちます。
特に3年生における農業生産の仕事や販売の仕事の学習で、知識・技能を身に付けたり、思考力等を身に付けたりするのに、効果的な資料となります。
以下、そのチラシの使い方の例を紹介します。
農業生産の仕事の学習では
チラシに記されている「産地」に注目させます。
自分たちの暮らす地域名が書かれている農作物があるはずです。
子供たちは、普段何気なく口にしている農作物が地域で生産されたものであることを知り、驚きさえします。
地域の農業生産の仕事が自分たちの暮らしと結びついていることに改めて気づくのです。
地域の農業生産の仕事が身近なものとして感じられるようにもなります。
関心も高まるので、農業生産の学習の導入としても使えます。
販売の仕事の学習では
チラシの様々な「産地」に着目させることで、販売の仕事の学習における他地域や諸外国との関わりについての理解も深まります。
私の場合は、子供に都道府県名だけを記した日本の白地図を渡して、農産物と水産物をその産地に書き込ませていきました。
その際、調べ終わったチラシを子供同士でローテーションさせると、収集する情報量が増やせます。
海外からの生産物は、付箋に書いて掲示用の世界地図に貼らせていきました。
これで、農水産物の産地地図が完成します。
自分の食生活が他地域や諸外国とつながっていることが、理解できます。
さらにその「地図」から(その調べた結果にもよりますが)、例えば、「自分の家では、海外の物はできるだけ買わないようにしていると家の人が言っていた。なぜだろう。」とか、「どうしてわざわざ遠い所の物を販売しているのだろう。」といったや「新たな見方」へとつなげる「問い」を生むことも可能です。
また、チラシを読み取らせることで、販売者の工夫も調べられます。
値段の工夫や特売日、ポイントの設定等などです。
従って、チラシは見学の前段階としても使え、見学後の補足学習としても利用できます。
価格の変化に着目させることで
さらに、どの学年の社会科学習の基本となる「ものの価格は需要と供給のバランスで決定される」ということを、チラシによって学べます。
今の時期ですと、わかりやすいのが、「いちご」です。
11月頃から意識してスーパーマーケットのチラシを取っておくと、「いちご」の価格変化がひとめでわかる、「優れた」資料になります。
11月頃、1パック700円等と表示されていたものが、数カ月後には、400円ぐらいに値が下がっていきます。
11月は、供給量が少ないことと七五三祝のケーキへの需要があるためのようです。
また、クリスマスが近づいた頃と正月には、下がってきた値が少し上がる場合が多く見られます。
そして、4月頃には、販売当初の11月時点の半額くらいになります。
この時の学習で、ケーキ店のチラシを組み合わせて使用することで、学習効果がより上がります。
チラシのケーキに乗ったいちごを見て、子供の中で思考が繋がるのです。
農作物に限らず、需要量が多くて供給量が少なければ価格は上がり、供給量が上がれば価格は下がります。
また、そのバランスは、天候や季節、また社会的要因によって変動します。
端的な例が、今の世界全体のインフレ現象がロシアとウクライナの戦争によって引き起こされていることでしょう。
世界はまさにつながっているのです。
このように、季節の農作物の販売価格の変化に着目させることによって、子供たちの「値段」を見る「目」が変わっていきます。
この「目」があれば、例えば6年社会科での江戸末期の米の価格を巡る一連の歴史上の出来事の理解の助けにもなるでしょう。
ちなみに、農作物の販売価格の変化を扱う際には、地域の特産物と関連付けて指導すると一層効果的だと考えます。
さて、これらの他にも、工夫した折り込みチラシの使い方があると思います。自分ならこう使う、あるいはこう使ったという思いで読んでいただけたなら幸いです。
その一方で、近年は新聞を定期購読しない教師・学校も増えているのかもしれません。
その場合は、ネット上でもチラシを見ることが可能ですので、私はネットチラシを授業で使用したことはありませんが、上記と同様の使い方ができるのではないでしょうか。ただし、価格変化に着目させる場合は、ネットチラシを長期間に渡って収集、保存しておくことが必要でしょう。