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体育の「授業開き」アイディア-様々な相手と多様にかかわる運動で「仲間づくり」を

 前の記事では、「居場所づくり・仲間づくりの第一歩」としての「自己紹介」をお伝えしました。
 私は、体育の「授業開き」でも、それにつなげて「居場所づくり・仲間づくり」をねらいました。
 
 「授業開き」とは、1年間で最初に行うその教科などの授業のことです。見通しと期待をもたせ、その教科などを少しでも好きにさせることがねらいです。そのねらいに「仲間づくり・居場所づくり」を重ねたわけです。
 
 最初の体育授業で、並ぶとか座るとかの集団行動を口やかましくやらせている光景を時々見かけます。体育嫌いを増やすだけです。逆にいきなりドッジボールでは、実は「仲間づくり」は進みません。一部の子だけが優越感によるエセ「楽しさ」を感じるだけです。

 そこで、次の2つのポイントを大切にしました。

ポイント1 様々な相手と一緒に行う運動に数多く取り組ませる。
ポイント2 その時、仲間と協力して課題を達成する運動を取り入れる。

 
 もちろん、体育の「体つくり運動」としてのねらいも、大切!<体を動かす楽しさ><工夫・伝え合い><安全にきまりを守り仲良く>です。
 
 なお、体育の「授業開き」は断然、体育館がオススメです。「集団」になっていない段階で、運動場で行うと子供たちが集中できず、ねらいに迫りにくくなります。
 
 ある年の授業展開に沿って説明します。
 

1 まず、「体育開き」だからこその一言


・「体育の時は、先生は厳しくなるよ。ふざけてやると事故・怪我につながります。」
 体育は、他の学習に増して安全第一です。
 

2 体育用ドラムのリズムに合わせて動く


・スキップ、片足ケンケン、両足ジャンプなど指示を次々変えて。
・体育館全体に広がるように。
・初めに準備運動をしていなかったら、準備運動代わりにも。
 

3 「○人組づくり」


・2につなげて、ドラムに合わせてスキップ→打つのを止めて、子供たちもストップ→吹いた笛の数の人数の組作り。
・2人組から始めて、数を増やしたり減らしたりして繰り返す。数によっては必ず余りが出るので、その子は「罰ゲーム」。<威張って「エッヘン」と言う>とか、<「罰ゲーム大好き」と叫ぶ>とか楽しくなることをさせました。
・ちなみに、笛を吹く場面では、どの子も口を閉じて聞き耳を立てます。「静かに集中して聞く」という集団生活のルールを自然に学び、学級づくりも進みます。こうした相手を尊重する態度がルールとして機能しているクラスは、どの子も安心して生活できると思います。これも「居場所づくり」です。
 

4 全員で大きな輪を作り、体を使ったゲーム


①3の最後に「全員!」と指示し、手をつないで大きな輪を作る。

②ルールを伝える。…「ゲーム中は声を出してはいけない。これが守れないとゲームができなくなる」。これも学級づくり=居場所づくりです。子供たちは楽しいことのためにはルールを守ります。こうしたことの繰り返しで、ルールを守ることがお互いを大切にすることになり、それが心地よいことであると学んでいきます。

③「手つなぎリレー」…一人の子を起点に手を強く握る合図を順に伝えて一周するまでの時間を計ります。声で隣に伝えるのはもちろん禁止。顔を見て伝えるのもだめ。どうしたら速く一周させられるかを考えさせます。「すぐにぎゅっとする」とか「集中する」とかの工夫が出ました。

④時間が速くなったら、みんなで「喜びのポース」。遅くなったら、「悲しみのポーズ」。(楽しいポーズを考えてみてください。)

⑤「ウェーブリレー」…「手つなぎ」をウェーブに代えて順に送ります。以降は同じです。

⑥「フラフープリレー」…大きいフラフープを一つ、手を離さずに順に送ります。体の使い方について様々な工夫が出されました。
 

5 2つのグループに分かれて対抗戦


①「裏返し」…それぞれのグループで手をつないで内側を向いて立ち、手を離さずに全員が外側を向いた状態に変えます。どちらが速くその方法を見つけるか競争です。この記事をお読みの方は、やり方をご存知ですよね。

②グループ対抗リレー…ただ走るのはこの時間のねらいに合いません。体育備品で大きなビニールボールがあれば、それを2~4人で背中合わせにして協力して運ぶリレーがオススメです。平均台を中間地点に置き、二人組で手をつないでリレーをするのもいいです。手をつなぐことで、進んで協力して平均台の上を歩きます。高い所が苦手な子への支援にもなります。

※「対抗リレー」だと勝ち負けにこだわり空気を悪くすると思われるかもしれませんが、ある時、負けチームのアンカーに拍手と声援を送った勝ちチームの子供たちがいました。すかさず褒めて価値付けました。すると、次のレースでは、偶然勝敗が逆になり、今度は反対のチームから拍手と声援が送られました。子供たちは、ますます笑顔になりました。教師がどこに目を向け、何を大切にするかで変わります。
 また、対抗戦が白熱することで、作戦を考えて指示を出す子も出てきます。その子の「リーダー性」を育むチャンスにもなります。いつでもどこでも、一人一人のよさに目を向けて引き出そうと構えていると、多くのチャンスが見えてきます。
 

6 全員で大長縄跳びに挑戦


・仕上げには、決まって全員で大長縄跳びに挑戦させました。挑戦時間は、数分間でいいのです。1回跳べれば十分に子供たちは達成感を感じ取ります。ある時は、こんな様子でした。  

 全員で二列に並んで一本の縄を跳びます。たったの一回転がなかなかできません。
 「ドンマイ!」「もう1回!」「集中!」などと何度も声を掛け合います。
 すると、やはり、「教育の神様」はいるのです。チャイムが鳴る寸前、見事に縄は全員の足の下を抜けたのでした。「やったー!」歓声が上がりました。

 終わりの挨拶の時に、
「どうですか。仲間がもっと増えましたか。」
と聞くと、
「はいっ!」
という元気な返事が返ってきました。
 
◎「4 全員で大きな輪を作り、体を使ったゲーム」で行ったことは、大熊雅士氏の「いっしょに楽しく 集団づくりの連続エクササイズ」(『エンカウンターで学級が変わるPart3 小学校編』監修 國分康孝 図書文化 1999,p.p170-173)を参考にしています。