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タイBLドラマ「180 Degree Longitude Passes Through Us」

主演:POND Ponlawit Ketprapakorn, NIKE Nitidon Pomsuwan, MAM Kathaleeya McIntosh
2022年 全8話(1話約40分)
いしゃーしゃ的オススメ度:★★★☆☆
(写真=GagaOOLala公式サイトより)

何となくロマンチックな響きのタイトルに惹かれて観てみたタイBL。ちょっと学生ものはあまり見る気がしないのだが、大人っぽい雰囲気なところも気になっていた。

予期せぬ再会で喚び起される過去

20歳を迎えようとしているワン(POND演)は、寄宿学校で育ち、人生のほとんどを家から離れて過ごしてきた。 悲劇的な事故で父親を亡くした彼は、一応母親のモル(MAM演)と二人暮らしであるものの、ドラマ監督として有名な彼女は忙しくてほとんど家にもいない。しかし2人は仲のいい兄弟のような親子であった。
ある日、モルの最新ドラマのロケ地へ二人で向かう途中、道に迷ってしまう。そして森の真ん中に、人里離れた邸宅が近くにあることに気づき、助けを求めに行ったところ、何とそこはモルの長年の友人イン(NIKE演)の家だった。
 しかし、この予期せぬ再会が、3人の魂の関係を永遠に変えてしまう一連の出来事の始まりにすぎないことを、彼らはほとんど知らなかった。。。
GagaOOLalaより引用、抜粋

少し毛色の違うタイBL

第2話まで配信リアタイで視聴していたのだが、ちょっと止まっていた。しかし、全話配信されてBLファンのディスカッショングループで話題となり、感想がかなり賛否両論になっているようだったので、興味が出てやっと全話観終わることができた。

観始めてすぐ、人気のある他のタイBLドラマとは違う作品だということに気づいた。学生たちのラブストーリーではないのはわかっていたが、約40分のエピソードが8話あるにも関わらず、登場人物は3人だけ。しかもほとんどの場面は人里離れた大邸宅の中か、その庭でしか展開されない。別に低予算というわけではなさそうだ。
そして場面も非常に静的で、動きがほとんどなく、終始会話劇が続く。

不思議に思って調べたら、MDLによれば本作の監督はアメリカで演劇制作を学んだようで、ほとんど演劇やミュージカルの監督業をメインとしているらしい。通りで場面がまるで演劇の舞台のようなのだ。
会話劇も大きな声ではっきりと、まるで舞台から観客に向けて話すような感じである。人物の動きも振りが大きいのも特徴と言える。

台湾のLGBTQコンテンツ専門のGagaOOLalaでの配信ということも、ある意味他の商業BLドラマとはちょっと一線を画していると言えるだろう(日本はジオブロされているので、おそらくどこかが配信権取得済)。

メタファーが良い

本作のタイトル、意訳すると「私たちの中にある180度経線」という感じだろうか。よく知らなかったのだが、経度180度というのは東半球と西半球に分ける線で、ほとんどが太平洋を通っているらしい。つまりそう簡単に辿り着いて、渡ることができる経線ではないわけだ。

この線がワン、モル、イン、そして死んだ父親シャムのそれぞれの関係間で引かれている。お互いに好きだった、好きであるにも関わらず、結局は一線を越えることができない。何をどうしても二人の間には「見えない線」が引かれている。
そんな意味を持っているのだろう。ちなみにタイ語でも「セン」って言っているようなのだが、同じなのかな?

見えない線で分けられているため、誰もが孤独に感じている。それが「52ヘルツのクジラ」と表現されている。人里離れた森の中で暮らすインは、自分のことをそう呼ぶのである(日本でも今人気の高い同名の本があるとは知らなかった)。
しかし、孤独なのはインだけではなく、それぞれが孤独の闇の中を生きているのである。

映画でも良かったんじゃないか

というわけで、とてもポエティックで、絵的にも各場面がとても美しいのであるが、全8話というドラマには適していないような気がする。これは2時間の映画にまとめた方がインパクトが出たのではないかと思うが、どうだろう。
とにかく会話劇がメインなので、字幕で読むのも疲れる。過去の思い出など、ドラマならたいてい回想シーンで表現されるが、本作では全てそれが会話で説明されるのである。この辺はせっかくドラマなんだから別撮りのシーンにしてほしかったが、やっぱり低予算だったのかな(笑)。

上記のように非常に好み、評価の分かれる作品ではないかと思うが、個人的には観て良かった。

こちらが主演のPONDが歌う主題歌で唯一の劇中音楽♫ とても美しいメロディで、角度によっては横浜流星に見えるPONDくんの声も良い。(「角度によっては〇〇」シリーズ、作ろうかな、笑)
にしても、いい曲とはいえ、もうちょっといろんな挿入曲があってもよかったのでは?あ、やっぱ低予算(笑)?


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