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脱X(Twitter)から「おひとりさまSNS」へ

X(Twitter) を数か月前からやめている。 @ish1kur0@social.ishikuro.info に籠っているので、Mastodon ユーザの人はさりげなく教えてほしい。

私のアテンションエコノミー前夜

2010年前後までのいわゆる"情報強者"はアクセス権を広く持っている者のことを言っていたように思う。店舗に行かなくてもネットで買える、テレビで報じないこともネットである程度検索できる、口コミサイトを自在に使いこなしてハズレのない店に行くなど。言うなればヒルナンデスみたいなマスメディアに左右されず消費活動をコントロール下におけるという意識があった。

そのこじんまりとした"情報強者"観が私の中で揺らいだのは、東日本大震災(2011)のときだった。

震災当日は、慣れない福島市で孤立し家族も消息が分からない状況で、あのときは生きるか死ぬかの境目が Twitter の TL 頼みになっているかのようだった。mixi の延長のお遊び SNS から一気に転換せざるを得ない事件だった。帰宅後、母親に Twitter アカウントを作らせもした。あのときは大真面目だった。

それから福島県の会津大学で学部1年生になった(というか、震災は入学手続きの帰路の出来事だった)。すでにネットは一部のギークの居場所ではなく、テレビに代わるメディアになっていて、福島というのは政治イデオロギーやら陰謀論やら、あらゆる人々のおもちゃにされていた。フェイクニュースという言葉が出てくる前から、明確な悪意による情報が大量生産されていくのを見ていた。

私は、情報を多く持つことが"情報強者"だという風潮が間違っているとこのときから思っていた。大学ではコンピュータ理工学という、情報を作り出す専門教育を受けていながら、情報から身を守る仕組みこそ重要だと確信していた。アイディアも技術も無いのでこれについては何も着手できていないが。

牧歌的な SNS だった Twitter はその後、広告がつき、そしてインプレッションこそ正義だという気持ちにさせる機能を拡充していった。

脱 X(Twitter)

イーロンマスクが買収する前から、Twitter には愛想をつかしていた。TikTok, Instagram, YouTube, LINE VOOM も同じだ。運営はコミュニティの醸成などにクソほども関心はない。下品なショート動画で画面に張り付かせ、広告を見せるというシンプルなビジネスモデルだ。彼らにとっての客は広告主だ。これをアテンションエコノミーと言うらしい。

我々一般のユーザは客ではなく、商品ですらない、養分なのだ。大事にされるわけがない。ベストセラーの「スマホ脳」で有名な話になったと思う。

アテンションエコノミーは巧妙で、ここまで分かっていても蟻地獄のように引き込まれていく。若い女性のセクシーなダンス、交通事故、喧嘩、戦争、自警行為、自作自演のスキャンダル。脳からすれば薬物中毒とほとんど同じ報酬の強化だ。よほど意識して回避しなければ本を読む時間も取れない。

付き合い方の工夫では対処できなかった。タイムラインはシャッフルされ、下品で強いインプレッションを呼ぶものだけが厳選される。自分に関係無いニュースがどうしても入ってくる。世界トップレベルの天才的なデータサイエンティスト、UXデザイナー、エンジニアたちが、愚鈍な我々を一方的に狩っている構図だ。どうしたって勝てない。

かのネオ麦茶事件以来のネットユーザでネトウヨ黎明期も経て、2ch、ネットポルノに20年ほどどっぷりハマっていた人間だからこそ言うが、いまの SNS は異常だ。私たちが2000年代に見ていたマスメディアへの猜疑心よりも強い警戒心を、アテンションエコノミーには向けている。

2023年になって脱Twitterの潮流がやっときたかと思ったが、ユーザにあるのはイーロンマスクへの嫌悪であって、アテンションエコノミー自体への警戒ではなかったことが分かった。Threads も試したが、やはり Instagram と同様、パーソナライズされた過剰に感情をあおるタイムラインがデフォルトになっていて、抑止する方法は無かった。オーブンソースの分散型 SNS である Mastodon なども試したが、LTL (サーバーにいる全員の書き込みの洪水)が曲者だった。また、ほとんどのサーバーで、結局ニュースやトレンドを表示する機能が有効になっている。

落胆し、私は読むことも書くこともやめてしまった。

おひとりさまサーバー

しかし、思考を書き留めておくマイクロブログは使いたいし、民主的なプラットフォームの上で他者とコミュニケーションすることこそ、この状況に対するハッカー的な反骨心に違いない。"ホームブリューSNS"を各コミュニティのみならず各個人で持ち、自分のコントロール下で自由なコミュニケーションができるならそれに越したことは無い。

ということで、「おひとりさま Mastodon インスタンス」が私の解になった。これなら他者とフォローしあうことはできるし、それでいて UI やデータは自分の思いのままにできる。

@ish1kur0@social.ishikuro.info

ほかの大規模インスタンスと変わらず互換性はあるので、この記事を読んでいる Mastodon ユーザの方がいればフォローして気軽に交流してほしい。

セキュリティやらメンテナンスの手間をかけたくなかったのと、自前でも維持費はかかるのでサーバーは https://hostdon.jp をレンタルすることにした。月550円で民主的なコミュニケーションツールが得られ、ハッカー的態度を貫徹できると思えば安いものだ。

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