宇都宮さん、都知事選なのに何故わざわざ九条？②

あなたが”人権派”、少なくとそう評判されている法曹である候補だから、①に引き続き、これを問う。

「政府の一存で憲法９条の解釈を変更し集団的自衛権行使を容認する」と、あなたは安倍政権を糾弾する。それはそうかもしれない。しかし、「憲法９条の解釈」を国際法に抵触するまでやってきたのは、自民党政権だけか？

アメリカに言われるままに武器を買い続け、９条の国日本を、世界有数の軍事国家にしたのは、自民党政権だけか？

ついに、違憲という国民の総意ができるまで自衛隊は合憲とまで言うようになった共産党のように、あなたを含むであろう護憲派の法曹界の罪はどうなのだ？　９条条文が維持できれば、自衛隊の存在も、その軍拡にも、（”しばらく”）目を瞑ることにした、あなた達の責任はどうなのだ？

①で述べたように、今では国家の正規軍以外にも「戦争犯罪」を律するようになったジュネーブ諸条約（つまり、現代の国際法は、自衛隊と軍と呼ぶかのくだらない名称問題は全く意に介さない）の基本中の基本、戦争犯罪が発生した時に、その命令権者を正犯として立憲する義務の履行を、そのための法整備を、日本は全くやっていない。

そればかりじゃない。

あなたは、法曹として、国外犯規定をご存知だ。日本の刑法は、日本人が日本の領域内でおかす業務上過失致死に対しては管轄外であることを、あなたが知らないわけがない。だろ？

では、なぜ、日本が加害者である「日ジブチ地位協定」に口を閉ざす？　集団的自衛権云々、戦争反対云々の話じゃないよ。法曹として、日米地位協定で被害者である日本人の法曹として、なぜ、この国外犯規定の問題に口を閉ざす？　自衛隊が駐留する相手国に代わってちゃんと裁くという前提があるからこそ相手国から裁判権を奪えるのが地位協定なのに。なぜ、この無法に口を閉ざす？　チンゲ焼き（自衛隊のいじめ）で隊員の人権を憂慮する、あなたのような”人権派”弁護団は、なぜ、日本の無法の実力組織の脅威の下に、今この瞬間に置かれている異国の無辜な民衆の人権侵害に口を閉ざす？　

今回、あなたの出馬にあたって写真に収まった野党の党首たちに直接聞いてみるがいい。特に、自民党政権から引き継いだジブチ駐留を恒久化した旧民主党政権。その時に権力の中枢にいた御仁たちに。この問題を護憲派の手によって解決するのが一番いいと、当時、説得に立ち回った僕のことを、福島瑞穂氏に聞いてみるがいい。その後も、この無法問題を日本国内外に（特にジブチ政府。外交詐欺だと怒るに決まっている）訴えるのが、あなたが公約で糾弾する集団的自衛権行使の象徴である、自衛隊海外派遣を止めさせる、最も手っ取り早い方法だということを、僕の研究室と自宅にまで足を運んで、僕と懇談した志位和夫氏、そして小池晃氏に聞いてみるがいい。

みんな同じだ。集団的自衛権行使を即座に止めさせられるのに、この無法問題を頑なに問題にしないのだ。いや、問題提議するだけだったら共産党にもできる。野党は一致して政局にしないのだ。なぜか？　簡単だ。あなたたちが、９条条文を守るために目を瞑ることにした問題だからだ。

皮肉にも、今、この無法問題に、一番敏感になっているのは、当の自衛隊、特に海外駐留の尖兵になる陸上自衛隊だ。「もっと出ろ。もっと撃て」という安倍政権の安保法制に危機感を抱いた陸自は、旧民主党政権がはじめた南スーダンPKOへの部隊を撤収し、結果、安倍政権になってから、この無法問題が一番影響する部隊の海外駐留の新規派遣をやっていない。つまり、その観点からすると、安倍政権は、平成期でもっとも平和的な政権という逆転現象。無論、一番好戦的なのは、護憲派勢力が権力の中枢にいた旧民主党政権だ。

宇都宮さん、重ねて問う。なぜ、都知事選に９条なのだ？　９条にかかわる問題は、安倍政権だけでなく、護憲派政党の欺瞞の問題なのだ。詐欺と言ってもいい。そして、この問題に気付き、そして是正するために護憲派政党から離党する国会議員も出た。そんな日本のリベラルを二分する問題を、なぜ都知事選に掲げるのだ？　前回の都知事選で、セクハラ疑惑の一本化候補のために、あなたとあなたの支持者の公民権までも蹂躙した野党共闘に、あなたの法曹として義を売り渡すのは何故だ？　（もちろん、これを法曹の義の問題でないとあなたがいうなら、僕はあなたの法曹としての資質を問わなければならない）

都知事選の公約に、不必要に９条護憲という欺瞞を掲げたあなたに都政を任せるわけにはいかない。残念だ。宇都宮さん。

つづく