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宇都宮さん、都知事選なのに何故わざわざ九条?①

宇都宮さん。あなたが法曹だから敢えて問う。あなたの重要政策05の初っ端から出てくる「関東大震災朝鮮人虐殺」。

これが現代に起これば、明確なジェノサイド、もしくは国際刑事裁判所ローマ規定による「人道に対する罪」であると、国際社会は認定する。しかし、日本はジェノサイド禁止条約を批准さえしていない。ローマ規定は批准しているが、肝心の、そういう犯罪が同国人によって、もしくは領域内で非同国人によって、引き起こされた場合、同規定にそって、まず国内で起訴する法整備を”完全”に怠っている。”完全”とは言い過ぎだ、刑法がある、とあなたは言うだろう。いや。刑法とローマ規定のような国際法は、その「保護法益」が、根本的に異なるのだ。

ジェノサイドは、”殺人”の集合ではない。「朝鮮人」のような人間の”アイデンティティ”を抹殺しようする政治的組織犯罪である。だから、殺人の実行犯ではなく”煽動し命令した者”を優先的に主犯として裁く。ここだ、日本の法体系が決定的に欠くのは。法曹のあなたも知っている通り、命令した者が誰も裁かれなかった関東大震災朝鮮人虐殺から1世紀を経て、国際法が目まぐるしく発展しているのに、日本のは、依然、「親分と鉄砲玉」のそれなのだ。ローマ規定は、現代の「国際人権法」である。そう、日本は(たぶん世界で唯一の)人権後進国なのだ。


何故か? そこだ。あなたが考えるべきは。はっきり言おう。九条が原因である。


戦時ではなく平時に、そして軍隊ではなく、一般民衆によって引き起こされる「人道に対する罪」を立件するローマ規定の発展には、それに先行する”礎”がある。「戦争犯罪」を立件するジュネーブ諸条約だ。同条約は、「戦争犯罪」を引き起こした国家に、その「上官」を起訴することを義務付ける。日本は、同条約を批准しているものの、依然、刑法で対処できる、としている。繰り返す。国際法が求める「保護法益」が違うのだ。日本の法体系は、そういう「戦争犯罪」を認識しないのだ。何故か? 

「九条があれば日本は戦争しないから戦争犯罪を起こすはずがない」という安全神話を、あなたが長を努めた日弁連でさえ、日本の「法理」にしてきたのだ。これがまかり通ったら、あなたの天職の「法」は要らない。現在、世界有数の軍事国家になった自衛隊を律する刑法と自衛隊法の法理は、「親分と鉄砲玉」のそれだ。最高司令官を嘯くあの首相を正犯にする法体系がないのだ。日本には”礎”が元からないのだ。


宇都宮さん。関東大震災朝鮮人虐殺のようなことは、絶対に、二度と引き起こしてはならない。この思いは一緒だ。だからこそ、ヘイトを煽る政治家に、言論人に、思い知らせようではないか。ヘイトの結果、人道に対する罪を引き起こしたら、まず誰よりも真っ先に彼らを裁くという法の整備で。しかし「そんな大それたことは日本では起こるわけがない」と、アイデンティティの抹殺にいたる政治的組織犯罪を日本人に「想定」すらさせない九条が、最大の障害なのだ。


戦後70年、日本人が想定していなかったことを、今さら急に彼らに教え覚醒させるのは難題であることは分かっている。しかし、法曹であり人権派であるあなたが、この九条の問題に気づいていかなったとは、思いたくない。もしそうであったら、僕はあなたの法曹としての資質を疑わざるを得なくなるからだ。だから、思うのだ。宇都宮さん。なぜ、そんな九条護憲という難題を、”わざわざ”都知事選の公約にいれるのだ。護憲派政党、そして護憲派市民団体への”気遣い”か。だったら、それは、不必要な、唾棄すべき”政治”だ。あなたのウリである、あなたの「人権」へのintegrity(誠意、品位)への侮辱である。残念である。

つづく

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