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泣いているのは

誰かが泣いている。
だが、わたしの知ったことじゃない。

そんなこと、わたしにはどうでもいいことだ。
構わず踏み台を蹴ろうとした瞬間、さらに泣き声が高くなった。
あまりに悲しげな声に、反射的に振り返ってしまった。
鏡の中でわたしが泣いていた。

泣いているのはわたしだったのか。

首にロープをかけて、今にも踏み台を蹴ろうとしているわたしが。
泣いている。

——いや違う。
——あれはわたしじゃない。

わたしの姿をした私の守護天使だ。

そう直感した。
わたしの背にあんな大きな羽根などあるはずがないのだから。

そうして悟った。

わたしが今しようとしていることが、どれほど彼を悲しませているのかを。

それとも、あれはわたしの姿なのだろうか。
あれはわたしだろうか。

鏡をもっとよく見ようとして、まとわりつく紐を振り払い、
わたしは踏み台から足を下ろした。


54字の物語


今日は、私自身の経験を反映させたものをひとつ。
守護天使でも内神さまでもなんでもいいのですが
わたし自身さえも見捨てたわたしを
それでも見捨てず、悲しんでくれる存在があると、ふと気がついた瞬間がありました。
それを思い出して綴ってみました。

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