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【ショートショート】上手に焼けますか?

 6年3組は課外授業の一環で豚を飼った。1年後、中学生になる前に食べるまでが課外授業だ。名前はトン太。いわゆる《命の授業》だ。
 1年の月日がトン太を大きくした。そして、トン太の体重に比例して6年3組全員のトン太に対する愛情も大きくなっていた。結局のところ食べるのは可哀想と言う声が上がり、ペットとして次の学年に引き継ごうと決まった次の朝、トン太は死んだ。

 トン太は火葬にすることにした。しっかり燃えるように脚を縛り一本の棒に吊るして焼いた。焚き火の火力が足りなかったのか黒焦げになる前に火が消えた。
 誰かがお清めに塩をふろうと言いってポケットから塩を取り出した。また誰かが酷い匂いだからニンニクを擦り込もうと言ってチューブのニンニクを持ち出した。次はハーブ、胡椒と皆が各々もってきた物を取り出した。そして最後に先生が「私はタレ派だ」と言って巨大な焼肉のタレのボトルをカバンから取り出した。
 皆、堪えきれずにこんがり焼けた豚肉に群がった。


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