【ショートショート】才脳
脳を解析する技術が開発され、人は5歳になると才能を明らかにすることが義務付けられた。
私に眠っていた才能は『殺し』の才能だった。
来る日も来る日も、あらゆる殺しのアイデアが湧く、若い頃は死ぬほど悩まされた。救いだったのはアイデアだけで殺意は無かった。
毎日、毎日、アイディアをノートに書き留めた。30年が経ちノートは部屋を埋め尽くした。5歳のあの時から30年、私はこの閉じられた部屋から出ていない。『殺し』の才能を持った人間が外に出られるはずもなく、かと言って実際に殺人を犯した訳でもないので刑に処されることもなく、結婚も財産を持つことも許されない。
このとめどないアイデアだけが、この狭い部屋で小説家として生きることを許された私の財産だ。
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