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【ショートショート】事故物件

 N氏は深夜の騒音に悩まされていた。泣き叫ぶ女性の声、ガリガリと壁に爪をたてるおと、上階からはやたらと大きい足音。今、このアパートには誰も彼も住んでいないことは確認済みだった。
 もう、こんなところには住んでいられない。今日こそは肝理解に文句を言って引っ越してやろう。そう、決心してN氏は電話をかけた。

「深夜に隣から壁を引っ掻く、女の泣声、上階からはやたらデカい足音。よくも事故物件を紹介しやがったな!金を返しやがれ!!」N氏は精一杯の啖呵を切った。

「も〜、またですか?」電話にでた男は呆れながら間延びした声を出した。N氏の怒りのボルテージが上がる。

「…も、も〜、とは何なんだ!失礼だろぅ!!」

「だって、そのアパートで成仏できてないの貴方だけなんですよ〜。勘弁してよ〜」


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