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【ショートショート】足の父

「行ってくる」

 いつも通りそう言って父がトラックで仕事に出掛けた日、地球外から侵略者達が飛来した。いつもなら長くても2,3日で仕事から帰る父は帰って来なかった。

 数週間が経ち、各地が侵略者に襲撃され壊滅したというニュースを怯えながら目にしていた。そして遂に、私の町にも奴らがやって来た。母と避難所に移動している最中、それを目撃した私と母は目を疑い、しかしすぐに確信して涙した。
 
 侵略者に立ち向かうまるでテレビの戦隊ヒーローのような巨大マシンが侵略者の戦闘機を破壊している。右腕はクレーン、左腕はショベルカー、右脚は大型バス、そして右脚は父のトラックだった。間近で戦うマシンの左脚のトラックのナンバーは確かに娘である私の誕生日だった。
「パパだね。パパのトラックだったね……」と私は泣きながら母の手を引き避難所に向かった。母も泣いていた。
 運転席に父の姿を確認することはできなかった。でも地球が平和を取り戻した時、父は帰る。そんな気がする。


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