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【ショートショート】父をたずねて

 探検家の父親から息子に手紙が届いた。目が痛いほど鮮やかで大きな花の写真が同封されていた。されていた。息子は父親に会いたいという気持ちよりも、その花を自分の目で見てみたいと思った。

 父親が拠点にしていた集落を訪ねると、彼は息子に手紙を出したその足でジャングルに潜ったらしかった。父親がの残した地図や資料を元に息子はジャングルを進みあの花を発見した。それは黄色く人間ほどの大きさのウツボカズラにフタをするように咲く赤く巨大な花だった。息子はその花の美しさに魅了され、抱き、花弁に顔を埋めた。そして、彼は自分からウツボカズラの中に潜り込んでいった。探検家の息子は、花の中で見覚えのあるメガネをかけた骸骨と出会った。ひと目で父だと分かった。
「似たもの馬鹿親子だなあ」と息子は父に語りかけた。
 赤い花が外界への唯一の出口を塞ぐ間際、最後に見た光景は人生で一番丸くて綺麗な月だった。

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