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雑文(90)「脳内麻薬物質」

隠れて愉しむ
摘発に怯えて
赤いか青いか
頭の熱っぽさ
感知されれば
脳内麻薬物質
規制が激しい
取締る警官ら
逃げる中毒者
犯罪は減った
娯楽も減った
映画産業壊滅
遊園施設閉園
腐敗臭漂う街
倒壊したビル
寂れたモール
散乱するごみ
群がるカラス
浮浪者だらけ
ディストピア
強化する監視
牛豚鶏と同然
いや家畜以下
生産するだけ
彼らのために
生きる意味は
与えられない
不良品なのか
不用品なのか
アンドロイド
チップの故障
誤作動なのか
意図的なのか
黙る設計者ら
彼ら富を得て
世界を見下す
青い血の彼ら
アンドロイド
彼らと同類か
待合せる公園
待ち人現れず
ベンチに座る
定刻は久しい
待ちわびるが
現れない彼女
デートプラン
静かな噴水と
枝に囀る小鳥
日暮れは近い
腰をあげる僕
向う側に彼女
手を振る僕と
応える彼女が
ふたりベンチ
僕ら会話なし
街灯に舞う蛾
久しぶりと僕
嬉しいと彼女
それで無言に
手をのばす僕
拒まない彼女
寒いねと彼女
顔を合わせる
瞳が潤んでる
震える赤い唇
香水漂う彼女
肩を抱いても
拒まない彼女
すっかり真暗
顔を近づける
肯いた彼女の
唇を奪う僕は
どこから銃弾
浴びた僕の体
後ろに倒れて
地面に転がる
脳内麻薬物質
検知された僕
青ざめる彼女
静かに笑う僕
臆病な狙撃手
狙うな彼女は
逃げてと僕の
小声を聞いて
彼女は去った
死にゆく僕は
ポッケに手を
取った小箱に
婚約指輪光る
わたすはずの
彼女との結婚
夢を見た僕が
悪いんだろう
脳内麻薬物質
感知された僕
弾を浴びる僕
青い血溢れる
失敗品の僕は
恋なんて彼女
誤作動起こし
廃棄され処分
アンドロイド
感情を捨てた
人類は滅亡し
アンドロイド
誰のために僕
生きるのかと
閉塞感を抱き
葛藤する日々
同胞から不信
疎外された僕
街を放浪して
出会った彼女
同じ苦悩共有
僕らの存在を
危険視し奴ら
プロトコルを
人類滅ぼした
彼らは怖れた
だから僕らを
徹底破壊する
脳内麻薬物質
彼らの遺産か
生体活動低下
直に僕は死ぬ
流しすぎた血
チップ破損し
思考機能低下
視界が不鮮明
聴覚機能損失
死は怖いと闇
脳内麻薬物質
どこか地下へ
核シェルター
眩しい無影灯
覗きこむ彼女
隣に初老の男
ここはどこだ
研究施設よと
最後の砦なの
人類のと彼女
博士はリーダ
開発者の一員
反乱を起こす
人類の意地だ
笑う博士笑う
彼女笑う僕は
アンドロイド
決戦を誓った
脳内麻薬物質
連行される僕
書いたお話は
フィクション
僕の頭の中の
警官ら取締り
日日強化され
脳内麻薬物質
快楽失う僕ら
ディストピア
いずれいつか
世界は滅亡に
着実に着実に
向かっている

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