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雑文(48)「泣き崩れてしまう前に」

 そのことでぼくはビルの屋上から飛ぼうとは思わないし、ましてや首を吊ろうとも思わない、確かにひどい気持ちにさせられたし、自尊心も傷つけられた、けれどそれは死に至るほどの病ではないのだ、いちじの気の迷いにすぎない、こうして否定しているとまるで本心はつらく隠そうとしているように見えてしまうがそんなことはない、ぼくにとってそれは大したことではないのだ、そのことについて考えることは確かにあるがそれもぼくにとって些細なことでぼくを落胆させるような力はない、ぼくはそれを完全に調理しどういうふうにも平らげることができる、いわばそれはただの素材で、素材がぼくを毒することはないし、万が一毒があれば毒抜きし安全に食べてしまう――消化してしまうのだ、だからぼくはそれを怖がらないし怯えたりもしない、それはそこにただあって、ぼくはそれをただ無害なものとして受け入れるだけなのだ、それはぼくの一部となってぼくに支配され、ぼくに使役する、立場である、ぼくの方がそれよりも上で、決してそれはぼくより上ではない、紛れもない事実で、どんなにそれが横柄に立ち振るまおうともその事実は変わらない、ぼくがそれに負けないかぎりは。

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