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66 好きなのは「演出」なんだと気づいた2021年

ずっと前から映画を作る作ると言って、結局今年も作ることが出来なかった。最近また演者の方に協力いただいて進め出しているのだけど、やっぱり同じ所で手が止まってしまう。

僕はどうもシナリオを書くのが苦手らしい。苦手というか、興味としてそこにあまり意識が向かない。本を読んでいても、起承転結とか、衝撃の結末とか、そういう「あらすじ」的な所よりも、文章表現だったり、心理描写だったりに趣を感じやすい。

ちなみに何度も話してるんだけど、僕が文学に興味を持った作品は綿矢りささんの『蹴りたい背中』だった。高校生の時だった。文章を読んでいるだけでこんなに面白いものなんだと、文学熱が出たのはその頃。それ以来同じような作品を探していろんな作品を読みました。その頃は女性作家の作品が多かったかも。江國香織さん、田辺聖子さん。

『蹴りたい背中』の空気感は今思い出してもなんとも言えないオーラがあって、あらすじを説明するというより空気感を感じて欲しいのに、当時幼馴染の子におすすめしたら読んでくれたんだけど「なにがおもしろいのかわからない」と言われたのを思い出す(笑)。趣の向きは人それぞれ。

映画にも(映画こそ?)あらすじと空気感の区別があると思うんだけど、これは文学とはちょっと違って、あらすじ(というか展開)がはっきりとしていないと間延びした感じになって観るのがつらくなる時がある。文学よりは進展する感じを観る立場として求めているのかもしれない。ここ数年やっとアクションとかミステリーを観だして(今まではヒューマンとかが多かったから)、その感はいっそう増したのかも。

だけど、これが作る側に回ると話は変わって、やっぱり自分の生み出すものとなると、自分が本当に好きなものを作りたくなる。今までは漠然と「映画を作りたい」と思っていたけれど、いざ作り始めると手が止まってしまうのは、シナリオ作りの難しさに直面するからだ。

シナリオ作りの難しさの原因は2つあって、1つはさっき話したそもそもの僕の趣味嗜好の問題。もう1つは実写であるということ。僕がいくら頭の中で空想しても、実際に撮影しなければいけないとなると、場所は? 人は? といろんな問題が出てきてしまう。コンビニのシーン1つ撮るのだって撮影可能な場所を人づてとかで探さなければいけない。

難しさについては本題じゃないのでここまでにして、そうやって映画作りを悩みながらにもやろうやろうとしていたここ数年、やっと気づいたことがあって、それは「演出」が好きなんだということ。「描写」と言った方が正しいのかな? 何気ないワンシーン、ひと仕草にこだわること。

今年観た映画を今日振り返っていて、年始の方に『男はつらいよ』シリーズのタイトルが並んでいたんだけど、そういえば、このシリーズも今年とうとう全部(50タイトル)を観てしまったんだと思い出した。「演出が好き」と気づいたのはこの『男はつらいよ』シリーズを観たからかもしれない。

「そこに人が存在している」「そこに人々の生活がある」ということを『男はつらいよ』シリーズはいろんな演出方法で描写している。本当に何気ないシーンだったりするんだけど、僕にとっては「ああ、いいなあ」としみじみしてしまうようなシーンがたくさんある。

僕は「その演出をやってみたいんだなあ。そして、自分のカメラワークでそれを収めたいんだなあ」と思っている。もしかしたら、もしかしたら、それが出来るなら映画自体は作れなくても良いのかもしれないとさえ思う。ほわあっとしみじみするような良いシーンを作りたい。物語は、勝手に進んでくれ!ってかんじ(笑)。

実写のMVの制作を何度かやって、その点MVは音楽がメインなので、作りやすいなと思う。長さも映画に比べたら圧倒的に短いし(短いゆえの苦労もあるんだけど)、歌詞が伝えたいことを表してくれているので、それを助長するような演出や演技を加えれば(簡単に言っちゃうと)良くなる。そう考えるとMV制作は僕の趣向に合ってるのかもしれない。

ということで、今日はこの辺で。あばよ!(寅さん)



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