44「ひとり」が途切れずに
眠れなくなって、気づくと不安でいっぱいになっている夜がある。そんな時は眠りも半端なのか、ようやく寝られても明け方にふと起きてしまったりする。すぐさま、ずっと待っていたかのように訪れる不安。頭がスッキリしない。目尻のあたりがピリピリと緊張している。
昨夜はそれが何かのお告げに思えた。警告のように思えた。天井を見上げて、神様か何か浮いてそうだと思った。
不安の種はやっぱり仕事のことだ。今ある恩恵も、明日あるかどうかはわからない。フリーランスというのはどこまでいってもこういうものなのだろうか。
僕は昔サラリーマンだった。サラリーマンの時は働きたくないと思っていたのに、今は働きたいと思っている。おかしいな人生って。
不安は危機感に変わって、あれをしなきゃ、あれをしようと、頭の中で考え出すともうしばらくは寝られない。ポーズだけ寝返りを打ちながら、ぐるぐる回る頭の中。
僕は、でも危機感が好きだ。なんだかんだと言って、結局それはモチベーションになる。やる気になる。危機感が好きだなんて、これもかおかしな話だ。
寝たり起きたりを繰り返して、お昼前に目を覚ました。仕事に行くんだ。ささっと支度をして、あっという間に家を出た。
最寄りの駅。東西線に乗って仕事に向かう。車両の一番はじに窓台がある。そこにコンビニで買った紅茶やパンを置いてゆったり旅気分。スマホに仕事の連絡が入る。
「あけましておめでとうございます。(仕事の話……)」
「音源聴きました、いいですね!」
電車に乗っている僕は、そこでさーっと自分の体が周りの風景に溶けていくのを感じた。社会と神経が繋がるような、あっという間の結びつきだった。家から途切れないまま「ひとり」を引きずって、今の今まで「ひとり」だったんだ。街に出ても、街と自分がしばらく結びつかないということが、こうしてあるらしい。
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