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#30 「ひとり時間の終焉」など無いと信じてる。たとえ何が起こっても|伊佐知美の頭の中

昨年2022年の11月、10年ぶりに宮古島を訪れた。

当時の写真。懐かしいね、なぜかサイズが小さいね

10年前に訪れた時の季節は、確か夏だったと思う。いや、確実に7月だった。三井住友カードを辞めて、半年ほどの専業主婦期間を挟んで(ぷらぷらした)、講談社に再就職する前の日々に、羽田空港から那覇空港行きの片道切符だけを買い、那覇に飛んだ私は、那覇にて突然の台風の予報に怖気付き、その時台風の進路になかった宮古島に、やはり片道切符で飛んだのだった。

自由って、こういうことを言うんだな。って、宮古島の空を見ながら思った。

昔から、旅先の美しい風景写真を見るのがすこぶる好きだった。私が新潟県で暮らしていた中学・高校の頃は、SNSも電子書籍もなかったから、とにかく本屋や図書館に通い詰めて、「旅コーナー」とくくられて、並べられている本や雑誌、写真集は、片っ端から手に取った。

今振り返れば、旅に憧れていたけど、自由には旅に出られなかったあの頃の「いつかの未来に訪れたい風景の蓄積知識」みたいなものが、のちに大人になって旅に出た私を、「次はここに行こう」と連れて行ってくれるようになったのだと思っている。

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さて、その時訪れた宮古島も、例に違わず、過去に私が蓄積した「いつか見たい景色リスト」にゾロリと名を連ねていた。10年前には、まだ観光に柵も制限も設けられていなかった砂山ビーチ、白い砂浜の先に離島が見える与那覇前浜ビーチ、マンゴージュースが濃厚でおいしいと評判のカフェ「楽園の果実」、みんなが訪れる来間島「竜宮城展望台」に、夕暮れが綺麗に眺められる名もなき丘など……

ミーハーに、どきどきもワクワクもたっぷりに、ひとりでレンタカーを借りてサトウキビ畑をひた走らせた。中でも、一際訪れるのを楽しみにしていた場所が、宮古島の東端「東平安名崎見晴台」だった。

なぜこんなにサイズが小さいのか?我々はその謎を解くためにアマゾンの……

それまで太陽を覆っていた雲が、見晴台に近づくにつれて去っていく。南から吹く風、島の先っぽまで見える高台、草が揺れる音と波が島にぶつかる音。7月といえども夏休みシーズン前だったから、夏を迎えた宮古島の自然の美しさを、まるで私だけが享受させてもらっているような、そんな贅沢な勘違いをさせてもらえる瞬間があったドライブだったことを、10年以上経った今も鮮明に思い出せる——。

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そして時間は、冒頭の2022年、昨年の11月に戻る。
あれから10年が経った私は、存分に「いつかの未来に訪れたい風景の蓄積知識」をしらみつぶしにして、沖縄本島で暮らすようになっていて、そして弟の結婚式のために久しぶりに宮古島を訪れていたのだった。

あの頃と同じマンゴージュースを飲んだよ。お店が続いてくれるのって嬉しいことだね

前後の日程には、少し余裕を持たせて前乗りした。どうしても訪れたい場所があったから。それは、宮古島の東端「東平安名崎見晴台」。

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