『ただの遊び』

ひどい! 書くものがなくなってしまった。書くという行為でしか、頭を整理できないというのに。気が付けばノートもない。お気に入りの本もない。ああ全く、この部屋はなんでも食い尽くす。本や服、瓦礫の間は、宇宙空間とでも接しているのではないか。

寝そべったおれの体は重力を全面に浴びて床に伸び切っている。力無く横に垂れたおれの視線は醜く重なる瓦礫の影を見据えていた。
光があった。

久しく娯楽に興じていなかった。だがいま確かにおれは見た。みるみるうちに体に力が漲った。おれの全身は肉食獣の四足歩行を図らずも模倣した。本能に従って歩いた。欲動に煽がれて進んだ。目線は揺らがない。あの光だ。

暗がりに足を踏み入れた。おれの自意識が「落下」を「浮遊」と捉えるに足る時間が流れた。眼下には青く美しい星が浮かんでいる。生命の環が漲る完璧な調和を持った世界。
ああおれは、またこうしてゲームを始めてしまう。一つの調和を台無しにしてしまう

・・・

大地を躍動する生命が一斉に上を見上げた。強烈な、焼けるような光が、一瞬にして消えていった。何も変わらないように思えた。
しかし、この星には新たな種が誕生していた。錯綜する、調和をかき乱す、悪魔のような、二足歩行の怪物だった。

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