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東日本大震災から12年経って


今年もまた、この日がやってきた。
東日本大震災から12年。
あの年に生まれた子供は中学生になる。
あの時、中学生だった私は、25歳になった。

でもまだ、覚えている。だんだん、当時の記憶が薄れて、震災の爪痕は徐々に癒えてきて、それでもまだ、私は覚えている。あの瞬間、私は東北にはいなかったけれど、遠くの関西の地で揺れも感じなかったけれど、でも覚えている。

震災から少しして、初めて行ったあの街の匂いを覚えている。寒くて、心細くて、暗くて、そんな時に声をかけてくれたあの人の顔を覚えている。

あの震災で亡くなったあの人の息子さんの部屋の匂いも、あの部屋で初めて見たピンク映画の衝撃も、遺品を整理した時のあの人の顔も、遺品を燃やした後の温かいのに苦しい胸の感覚も、まだ覚えている。

庭が燃えカスで黒くなって、それを何度もホウキで擦って、でもなかなか無くならなくて、泣きそうになったあの人の顔を、まだ覚えている。

あの人は亡くなって、きっと家も亡くなって、私はあれからあの街に行っていない。忘れないとは言えない。記憶は思い出すたびに、色を変えて、歪曲していく。けれど、私はまだ覚えている。

私は今年、ピンク映画を撮る。きっと、あの人も、あの人の息子さんも見てくれる。

だから、頑張る。

合掌。


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