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なくなったカツサラダ

ロンドンにはWasabiという中途半端な日本食を売る飲食チェーン店がある。サーモンのお寿司とか、焼きそばとか、カレーとかを売っている。値段は高いけれども、まあまあな味のご飯を食べることができるので、気が向いたときに訪れている。9月に渡英してから一度も行っていなかったなと思い、日曜日の昼下がりにちょいと足を運んでみた。

6月までロンドンのwasabiにはカツサラダという、とんかつと野菜サラダの詰め合わせが日本円で1500円くらいで売られていた。私の好物はそのカツサラダだった。だから、今回もカツサラダを買おうと意気揚々とwasabiに足を踏み入れたのである。しかし、ない。カツサラダは店頭に並んでいなかった。そんなはずはない。カツサラダは美味しいのだ。と思い、他の店舗にも足を運んでみた。だが、ない。3店舗回ったが、どの店舗にもカツサラダは置かれていなかった。悲しいことである。たった三ヶ月ロンドンにいなかっただけなのに。そんなことならカツサラダを食べだめておくべきだった。と少し後悔しながらスーパーで塩と胡椒を買って帰った。

今年から私は自炊をしなければいけなくなった。家が燃えるから料理はしなくていいと言われて育った女が自炊をするという、面白いことになっている。薄力粉も酒もみりんもないので、野菜のトマト煮ばかり作っている。簡単だし、3日くらいに分けて食べられて、毎日料理をしなくていいので、気に入っている。野菜だけを1週間食べ続けていたのだが、ふと肉を食べたいなと思い、鶏の胸肉を買った。同じ賞味期限のパックでも、ドリップの量が全く異なっていて、「大丈夫かよ、この肉」と思いながら料理した。胸肉をぶつ切りにして鍋の中に入れてそのまま煮ればいいかなと思っていたが、ちょっと調べてみると下味をつけてから肉の表面を焼いた方がいいとのことだった。塩と胡椒で簡単に下味をつけて、フライパンで表面を焼いてからトマト煮の鍋に肉をぶち込んだ。どうせトマトの味になって、肉の味とか、下味の味とかわからないんだよと斜に構えて、出来上がったトマトと缶詰とともに煮込まれた肉を食べてみたら、しっかりと塩コショウの味がして、斜に構えててごめんなさいという気分になった。肉は下味をしっかりつけましょう。料理スキルが1レベルアップした日だった。


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