『沈黙のパレード』感想🎞

ミステリーには所謂探偵役が付き物であり『ガリレオシリーズ』では主人公の湯川学がそれに該当するが、湯川学は刑事でも罪を裁く事の出来る人間でもないので、被害者とも加害者とも一定の距離を保っている。
その距離感の心地良さが『ガリレオシリーズ』の魅力だろう。

そんな湯川学が様々な事件と人に遭遇する様を見て、人間に対しての理解を深めたり社会の出来事について考えたりするきっかけとなる・・・映画ではそのような人間ドラマ要素が多分だ。
その為『ガリレオシリーズ』にミステリー要素を期待するのはもう止めた方が良いかもしれないと思っていたが、正直その人間ドラマすらお腹いっぱいだと言わざるを得ない。

中盤辺りまでは『オリエント急行殺人事件』を彷彿させるが、結局起こったのは『容疑者Xの献身』・『真夏の方程式』と変わらない「事件Aの犯人を庇う為に誰かが事件Bを起こす」という出来事であり、パターンとして全く同じなのである。
これが非常につまらなくしている。

人が人を愛する表現がこうも同じパターンになるか?
いっそ「和製オリエント急行殺人事件」を目指してくれた方が物語として面白かったと思う。(個人的に『オリエント急行殺人事件』自体の結末は好きでないが、探偵役が湯川学なら別の結末が見れるのではないか?)

また、『真夏の方程式』では成実の動機と行動の結び付きが不十分に感じられたが、今作では「本橋優奈ちゃん事件」と蓮沼の深堀りが足りないため視聴後にかなりモヤモヤした。
原作では「本橋優奈ちゃん事件」は解明されていないものの詳しく書かれているらしいが、映像化する上で尺の都合上入れられないのなら、まるっとカットして貰った方がスッキリ見終えられるかと思う。

さらに、バレッタの問題もある。
後頭部を強打し出血した際にバレッタを着用していたとしても、血液は必ずしもバレッタのある位置に流れるとは限らない。
依ってバレッタから血液が検出されなかったからといって犯人ではないと断定する事は不可能だ。

バレッタに関してはこのような考察もある。

急性硬膜下血腫などが該当するかと。

その辺の曖昧さを指摘すると、『容疑者Xの献身』の頃から湯川は「石神が花岡靖子を愛した結果だ(石神が人を愛する事を知らなかったなら、罪を犯す事も無かったかもしれない)」と結論付けるなど考慮が一歩及ばないところがあるのだが・・・。(湯川が専門家で無いにしても、私のような素人が気になる程度は思い至って欲しいと思うが)

ここまで書いた所で「ミステリー要素にも人間ドラマにも期待しない方が良い」という話に戻る訳だが、所謂「キャラクターもの」として見た場合、一定の満足感は得られるのではないかと思う。
その点においてやはりファン向けの作品と言わざるを得ないし、ドラマのサクッと見れるようなくらいが『ガリレオシリーズ』を楽しむにあたってちょうど良い形式なのかもしれない。

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