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<日本小児科学会雑誌から思うこと>

毎月送られてくる小児科学会雑誌。この場で考えをまとめることで自己研鑽になればと思っています。今回は2024年5月号です。

Vol.128, No.5(2024)767-776
小中学校・特別支援学校教職員を対象とした「教育と医療の連携」に関するweb調査

私は日々、発達障害の診断やフォローアップの外来を行っています。そこで必ず聞くことは「学校で困っていることがあるか」ということです。もちろん不登校や登校しぶりが原因で、外来受診に結びつく児もそれなりの数がいますが、いずれにせよ学校との連携が非常に重要になってきます。

学校の先生と連携できたら良いのに!と感じることは色々ありますが、次の様な場合は特に強くそう思います。

① 学校から受診を促されたが、家ではあまり困っていない。実際に学校でどのように先生たちが困っているのか親が把握していない。

このような場合は、親は受診を快く思っていないケースも多く、「うちの子は何もおかしくないのに、学校に言われたから受診をしている」という態度を全面に出してくることも多いです。そうなってくると、学校でどのような困り感があるのかなかなか話が聞き出せず、苦労することがあります。中には担任からの手紙を持ってきているケースもありますが、手ぶらの場合と比べるとかなり助かります。その手紙から問診を広げていくことができるからです。

②外来で提案したことが、保護者を介してでは学校に上手く情報伝達されてなさそう。親自身が発達障害の傾向がありそう。

学校から手紙を持たされて受診をしている児が多い印象ですが、外来中にしている提案を親御さんが学校に伝えられていないんだろうなというケースもあります。診断や提案を書面にまとめたり、学校に電話をしたりという形は、診療時間(診療報酬にはつながらない仕事は後回しになってしまう)や個人情報(守秘義務ですね)という観点から現場では難しいと感じています。実際、親の中には学校に診断名を伝えないでほしい、発達の検査の結果が学校に伝わるのが嫌だから検査をしたくない、という考え方の人たちもいらっしゃいます。

③学校から薬を出してもらうように言われて来た。薬だけほしい。

学校で、ものすごく困っているのだなあという事実はわかるのですが、それ以外が全く伝わってこないこともあります。大抵の場合、親はやや怒って外来にやってきます。おそらく優しく促しても医療機関につながらず、だからこの様なコミュニケーションになったのだろうというのは推察できるのですが、受診時点で親は教育に対しても医療に対しても不信感がいっぱいで、外来は難航します。

連携の実態としては、教職員サイドからもまだまだ不十分と感じておられる様です。同時に医療と連携するということに負担を感じておられます。双方の視点から、教育現場と医療の連携を「気軽に 手軽に タイムリーに」いかにするかが課題であるのは間違いありません。それが不可能になっている一因として、医者は教育の現場をわかっていないし、教職員は医療の限界をわかっていない、ということが大きいように感じます。同じ小児科医という肩書きであっても、人によって発達障害の診断や学習指導にどこまで精通しているかは違うように、教職員も特別支援の必要がある児の経験がどこまであるかは変わってくるので、教育のプロとして「知っているだろう、できるだろう」という前提でアプローチするのが必ずしも正解ではありません。

私が小児科医としてやりたいことは

  • 医療者がフリー参観日に学校見学(私の地域にはありませんが。。。)

  • 定期的な多職種情報交換会

なのですが、教育委員会や行政が連携を仲介してくれたら良いのにぃと思いつつ、自分から動くことはしていません。私の今後の課題にしたいと思っています。この仕組みが地域にあれば、「どう連携したらいいかわからないから、とりあえず保護者任せで」となることが減ります。はい、現状では保護者次第で子供に提供できるものがかなり変わってきてしまう仕組みであると言わざるおえないのです。

発達障害は人口の10%程度とも言われているので、これは必要不可欠な課題と言えるでしょう。この連携が上手くいけば、長期的に考えれば、みんなの負担が減って、子供たちにより良い環境が提供出来るのではないかと思います。

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