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【角田裕毅】F1 2022シーズン前半戦レビュー その1【定点観測】

①開幕戦で見せた最大値(第1戦 バーレーンGP)

奈落の底に落とされたフリー走行。不完全燃焼の予選Q1敗退

フリー走行1回目はまずまずのタイムで走破し、僚友ガスリーがトップに立つ。今年はテクニカルレギュレーションの大幅な変更が加えられ、序盤は全てのコントラクターにとってバウンシングの解消に成功したとは言えない中でのこの走行結果。今となってはフェラーリ躍進の序章となったわけだが、この時点ではアルファタウリが耐久性において全体を通して一歩リードしたと目されていた。

しかしその目論みはすぐに消え去ったフリー走行2回目、最初の結果がウソのように角田はおろかガスリーすらもトップから遅れをとる。そして角田はロングランでアウトから侵入してきたルクレールとのニアミスで戒告処分を受ける。自身の認識と裁定側のジャッジのスレ違いなんて今に始まったことではないが、フリー走行3回目は油圧系トラブルで未走行。試行が不十分なまま予選はQ1敗退。不穏な流れの中で迎える決勝となった

完勝より完走。ビハインドをひっくり返した決勝

16番手スタート。スタートのタイヤ選び失敗。2回目ピットイン直後のセーフティーカー導入(ガスリーがやらかした)。これらのマイナス要素が一気に積み重なりながらも角田は積極的なレース展開を見せる。何より素敵だったのがポイント圏内付近の走行で必要以上の色気は出さず、海中に潜るサブマリンのごとく、ひたひたとタイム差を縮めながら追われる側を窒息させる策略で終盤で一気にまくったこと。自分が焦る前に相手を焦らせる。初年度でポイントをとれたレースで実施した戦法に磨きをかけて、昨季からの諸々の変数の値を変えたことを証明した。まるであのアブダビの栄光を思い出させるような、高らかな中東の夜空の再現であった。

ドライバーの勝利。パワートレインズの敗北

角田の躍進の陰で、失望の幕開けとなったレッドブル・パワートレインズ。ガスリーはマシン引火によるアクシデント。終盤にはフェルスタッペン、ペレスのリタイア。と、最悪の結果が待っていた。特に問題だったのはレッドブルの両者ともにしきりにマシンの異常を無線で訴えていたのにも関わらず、メカニック側は「そんなログは吐かれていない。問題ない」と取り繕わなかったこと。開幕前のマシンテストの順調な仕上がり具合から今季の最有力と目されてきたレッドブルは、復権を目指すイタリアの跳ね馬に久々の栄光を譲り、やれることをしっかりやってきたメルセデスにポイント差をつけられる波乱のスタートとなった。

②多発する異常事態(第2戦 サウジアラビアGP)

忍び寄るバーレーンでの黒い影

スタートポジションや道中の展開を鑑みれば最高のパフォーマンスと結果を発揮したといっていい前走の開幕戦。しかし楽観視ばかりできる状況でもなかった。フリー走行2回目で突然不安定さを見せた走り、そしてガスリーをリタイアに追い込んだ引火トラブル。アルファタウリのマシンに何かしらの不具合が隠されていたのは明らかだった。「エネルギー貯蔵システムがおかしいのかも」(メカニック側)、「タイヤの解釈が間違っていたのかな」(角田)。チーム内で幾度とない話し合いがもたれて、それぞれの役割の中で答えを探していく。しかしこの第2戦を臨むにあたって抱いていた懸念は最悪の形で現実となった。

抜群の走りを見せたフリー走行。それでも拭えぬ不安要素

自身はタイヤの理解を深めることに集中して臨んだフリー走行1回目はなかなかの走りを見せた。全体6位のタイムを叩き出し、コーナーの視座が広げられた今回のコース変更を見事に活かした。しかし異変は突然起こる。フリー走行2回目でも良い走りを見せたのだが、セッション終了直前にトラブル発生でストップ。ドライバーシートからパワーユニットの一部が完全に故障していたことを嗅ぎ取ったからだった。パワーユニットを交換して臨んだフリー走行3回目もトップ10入りする抜群の走り。走りは良い。走りは良いのだが….。心に引っかかるものを抱きながら予選に突入することになった。

コースインすら叶わなかった予選・決勝

予選。コースインしようとした直後の角田にメカニック側から無線が入る。「ピットに戻って」。ウォーターシステムに不具合が発生したのだ。これで予選は走行できないまま終わることとなった。本来であれば予選を走行せずに決勝に参加することはできないが、フリー走行で相応の走りを見せていたことでFIAから特例で決勝の参加が認められた。しかし決勝開始直前にパワーユニットが完全に停止してしまい、スタートラインに立たないまま、角田のサウジアラビアGPは終わりを告げた。
開幕戦のガスリーの引火トラブル、フェルスタッペンとペレスのリタイアの前兆が角田に襲いかかった。相次ぐパワーユニットの問題多発。この解決は中2週間で開催されるオーストラリアGPに向けた最重要課題となった。

意地の大逆転。一騎討ちを制したフェルスタッペン

ポールポジション獲得はペレスだったが、2・3番手にはフェラーリ勢が立ち並んだ。15周目付近でペレスがピットインした直後にセーフティー導入という憂き目に遭い、トップがルクレール、2番手がフェルスタッペンに。この隊列がそのまま終盤までデットヒートを繰り広げる。41周目でフェルスタッペンがオーバーテイクしたと思いきや次の周でルクレールが抜き返す白熱の展開。ラスト3周のところでフェルタッペンがついにルクレールを完全攻略してトップチェッカーになった。無念の開幕戦を経てレッドブルが凱歌をあげた。
敗れたもののフェラーリ勢は2人とも表彰台に(ペレスは4位)。この結果から早くもイタリアの跳ね馬が今季のレッドブル対抗の1番手に完全に名乗りを挙げた形となった。一方、本来その位置にいたはずだったメルセデスはラッセルが5位に入ったものの、Q1敗退という衝撃を見せたハミルトンはポイント獲得が精一杯。どうもパワーユニット関連の不安が取り除けなかったのか。メルセデスはトップ争いから後退を余儀なくされた。


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