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LINEグループ

 去年一年間、大学の講義は原則オンライン授業となり、僕だけでなく学生全体がパソコンの前で授業を受けることになった。そのため、学生同士の関わりが少なくなった。
 去年はゼミがあった。ゼミというと、少人数で楽しくグループ活動を行ったり、課外活動をして仲を深めたり、さらには飲み会をしたりと所謂、大学生っぽい授業が出来ると一昨年は思っていた。しかしオンライン授業になったため、実際に会うこともできず、しかもしっかり同じゼミの人たちの顔を見たのは2,3回だけだった。
 

 僕はちょうど人との出会いに飢えていた時期だった。普段なら絶対に思わないのだが、人と会話したい欲が溜まりに溜まって爆発しそうになっていた。だからどうしても関わりが欲しいと思い、どうしようかと考えていた。

 「そうだ。LINEのグループを作ろう」

 しかし僕は事あるごとに率先してLINEのグループを作る人が苦手なのである。というより、飲み会の幹事とかを楽しく行える人ややたらと仕切りたがる人の気持ちがあまり想像できない。自分が楽しめれば周りも楽しいと思っているんじゃないかと疑わしくなってしまうのだ。だから、自分の頭の中にこの考えが浮かんだときは、とても驚いた。
 

 ラインのグループを作るためには、全員のLINEの連絡先を知らなければいけない。そして知るためには全員に連絡先を聞いていくしかないのだが、なんて理由をつけて連絡先を聞けばいいのだろうかと悩んだ。男同士なら「グループ作りたいんで、連絡先教えてもらっていい?」とストレートに聞いても違和感がないが、女子にストレートに聞いたら下心丸出し変態バカと思われ、線引きされてしまうと思った。せっかくグループ作るならみんなと仲良くしたい。僕はメールでゼミの人たちに送った。
 ゼミ論を書くときに生じる疑問点等をグループラインで共有したいこと、どのような方法でグループに招待するか。そして、僕が一番大事にしたかった文句を最後に添えた。


 「グループラインが嫌い」とか「みんなで共有する必要がない」と思う人がいたらメールを無視してもらって大丈夫です。


 僕も以前は嫌だったし今も嫌だから、断っても全然気にしないよ?ということを伝えたかったし、もし断られても不必要に自分が落ち込まないようにこの文句を担保にしたというズルい考えもある。結果、全員参加してもらえてホッとする反面、この先、顔を知らない相手とどのように仲良くなっていけばいいのかという不安が大きかった。

 全員が揃い、「よろしくお願いします!」の応酬となった。グループラインの最初ってこういう風に始まるんだぁ~と他人事のようにトーク画面が動く様子を見ていた。

 それから数日後、トーク画面の動きが止まったままになってしまった。僕は焦った。僕がグループを作ったから、トークを動かし続けないといけない気がしてしまった。でもみんなが盛り上がるようなネタが思いつかない。どうしよどうしよ…と思いながら1日経ち、面倒になって放置した。その日から今日まで、トーク画面は一切動いていない。

 慣れないことはするもんじゃない。このような行動を起こすのは多分後にも先にもこれっきりだと思う。

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