がん保険を売る人
がん保険が必要か不要という永遠に終わらないテーマがある。
がん保険に加入をしていて、がんになった人はよかったとおもうけど、加入せずにがんになった人は後悔をする。周囲の人からも保険はいっていたの?と聞かれることもあるので、加入していない人は自業自得だと咎められているような気分にもなる。
加入者と未加入者のギャップが大きいので、がん患者どうしでも話題にしにくいことだ。
がん保険が必要か不要かと質問されれば、ぼくは不要だと答える。
でももしもぼくが、がん保険会社の人間だったらめちゃくちゃセールスする。
"2人に1人ががんになる。"どっかでこんな言葉を聞いたことがないだろうか。
がん保険のCMや勧誘にはお決まりの言葉だ。
確かに2人に1人は生涯でがんになる可能性がある。でもそれは"生涯"だ。
とても説得力がないことをいうのだけど、確率的にいえば30代はがんになりにくい。
30代男性のがんの発症率は1%未満だ。
30代でがんになったぼくがいうのはアレだけど、確率でいえばとても低いのだ。
がんのリスクはだいたい60代から増加して、高齢になるほど高い。
30代でがん保険に加入して、70歳でがんになり診断給付金で100万円をもらっても、そもそも支払った保険料はいくらだ?という話だ。それでいてがんになるのは2人に1人だ。
ぼくががん保険会社の人間だったらめちゃくちゃセールスする理由がこれだ。
がんになった半分の加入者は診断給付金を自ら積み立てて、がんにならない半分の加入者の保険料は利益になる。
0.001%の超低金利であつめたお金に高い利息をつけて貸す銀行と、がん保険の販売はバカでもできる二大お金儲けなんじゃないだろうか。そりゃCMもバンバンうてる。貯金をするのが正しいこと、保険に加入するのが正しいこととおもわせれば商売はさらにやりやすい。
商売をやりやすくするためなのか、たまにがん保険の会社から仕事のオファーがくる。ぼくみたいなパターンは販売促進にぴったりなのだ、仕事盛りの30代のパパで妻とちいさい子どもがいる。BGMはオルゴールやピアノがぴったりだ。
がん保険の最大のデメリットはがんにしか適用されないということだ。(まぁ、あたりまえなんだけど)
世の中にはがん以外にもたっくさん病気はある。職場にパワハラくんだったり、配偶者がモラハラくんだったり、親が毒親くんであればうつ病になりかねない。交通事故のリスクだって新型ウイルスのリスクだってある。
がんのリスクにしか対応しないがん保険に30代や40代で加入をするよりも、20年で資産形成をしてプールほうがいい。がんだけでなくどんな病気にも使えるし、引っ越しだって車の修理代だって、旅行にすら使える。
ぼくはNISAができたときに変化することができなかった、がん保険の負けたのだとおもう。もちろんNISAは損をする可能性があるけど、2人に1人が掛け金を失うがん保険よりもずっといい。
先進医療特約だってほとんど使えないというのが実情だ。
だから保険会社もここは高額に設定して、診断給付金につぐ第二の目玉にしている。
先進と銘打っているが、治療効果があるとは限らない。
すべてにおいてがん保険に優位性はないのだ、だからぼくは必要がないとおもっている。
そもそも国民皆保険制度と高額医療費制度がとてつもなく優秀で、さらに会社員だと社会保険まであるので、がん保険が必要ないほど強い。
しかし働く人の4割が非正規雇用だ。日本人の所得は下がり続けている。じゃあ所得に余裕がない人にがん保険が必要かといえば、そこに使うよりも別のことをした方がいいだろうと感じる。就業不能保険などの加入を検討したり、せいぜい医療保険のがん特約ぐらいでいい。
ちなみにぼくはがん保険には加入をしていなかった。でも、がんなどの大きな病気になったときに補償額の半分までを支払ってくれる生命保険に加入をしていたので、診断給付金の代替にした。医療保険にがん特約をつけたので、入院するときはいつも個室を使っている。がん保険にこだわる理由などないのだ。
がん保険に加入したい人は安心をしたかったり、不安なのだとおもう。
保険会社に不安を煽られた結果かもしれないし、ぼくの存在すらも不安材料なのかもしれない。
でもがん保険では不安は解消できない、それは健康な人の発想だ。
低リスクだろうがリスクに備えることが保険の本質なんだともおもう、でもがん保険というのは医療の進歩と時代の変化についてこれていない。
もちろんこれはぼく個人の考えだ。でも、ぼくの存在を知ってがん保険に加入をしたという人もいるので、ぼくは必要ないとおもってますよってことを伝えたい。いつかいいたかったことだ。
幡野広志
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