新型コロナウイルスの医療機関・介護施設等への影響調査(まとめ)【7/11更新】
この記事のポイント
新型コロナの医療機関・介護施設への影響に関するデータが各団体から公表されています。
整理の意味を込めて、この記事に各公表情報をまとめておきます。
※6/12 日本医師会と日本薬剤師会の資料を追加しました。
※7/11 WAMの資料を追加しました。
■病院経営動向調査(2020 年 6 月調査)|独立行政法人福祉医療機構
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/hp_survey_202006_covid.pdf
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が311病院へのアンケート調査を行い結果をまとめました。
4月の診療については入院・外来ともに1~2割減と答えた病院が多いようです。
6月時点の状況についても「受け入れ制限は行っていないものの、引き続き患者数が減少している」という趣旨の解答が多いようです。
■社会福祉法人経営動向調査(2020 年 6 月調査)|独立行政法人福祉医療機構
https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/sh_survey_202006_covid.pdf
独立行政法人福祉医療機構(WAM)が430施設へのアンケート調査を行い結果をまとめました。
以外にも社会福祉法人においては、4月の収益実績が横ばいと答えている施設が多くあります。特に入所系については、多くが横ばいという結果になりました。
一方で、運営面の課題は多々、出ているようです。
”従事者の体制に対する課題”という項目では、「感染予防・感染者対応に伴うストレス・心身の不調」や、「職員の家庭の事情(子の休校・休園等)に伴う人員不足」を課題に感じている施設が多いようです。
■医業経営状況等アンケート調査|日本医師会
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200610_6.pdf
日本医師会が、病院 120 施設、診療所 533 施設の計655施設にアンケート調査を行い、結果をまとめました。
診療所にも調査を行っており、診療科別の調査結果が公表されていることが特徴的です。
あとで紹介する「処方情報データベースにおける調査|JMIRI」の調査結果と同様に、耳鼻咽喉科と、小児科で特に大きな影響が出ていたことがわかります。
調査結果の最後は事例でしめられています。
事例をみていると、風評被害というキーワードが散見され、直接的な影響にとどまらず、間接的な影響を受けていた医療機関も多い印象を受けました。
■新型コロナウイルスによる薬局経営への影響調査 |日本薬剤師会
https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/activities/20200521.pdf
日本薬剤師会の調査結果は、政府に提出した「新型コロナウイルス感染症対策に関する薬局経営等に関する要望書の再提出について」の資料内で紹介されていました。
薬局においても患者数が20%程度減少しているところが多いようですね。
医療機関や介護施設への影響が目立っていましたが、薬局も大きな影響を受けています。
■病院経営状況緊急調査|日病・全日病・医法協
http://www.hospital.or.jp/pdf/06_20200527_01.pdf
日病・全日病・医法協の3団体が合同で、病院経営への影響調査を行いました。
調査結果からは、病院の患者が大幅に減少し、経営状況が悪化している様子が見て取れます。
資料では、以下のようにまとめられています。
4月度は病院の外来患者・入院患者共に大幅に減少しており、経営状況は著しく悪化していた。地域医療を継続するためには様々な支援が必要となる。
特に新型コロナウイルス感染患者の入院を受入れた病院では、診療報酬上の様々な配慮はあったものの経営状況の悪化は深刻であった。また、病棟閉鎖せざるをえなかった病院の悪化傾向は顕著であった。
これらの病院への緊急的な助成がなければ、今後の新型コロナウイルス感染症への適切な対応は不可能となり、地域での医療崩壊が強く危惧される。
■処方情報データベースにおける調査|JMIRI
https://www.jmiri.jp/files/topics/20200521_PressRelease.pdf
JMIRIでは処方箋情報データベースによる調査結果を公表しました。特に、診療科目別・年齢別のデータが公表されている点がありがたかったです。
以下のようにまとめられています。
■診療科について
患者数を診療科別に見てみると、前年同月に比べて耳鼻咽喉科と小児科が大きく減少しました。特に、耳鼻咽喉科では外出自粛の継続や花粉の飛散量の減少などが、患者数の減少に影響していると考えられます。一方、精神科、循環器科、糖尿病内科など、定期的な通院が必要な患者が多いと考えられる科は、あまり変化が見られませんでした。
■年齢について
さらに、患者数の前年同月比を年代別に見てみると、10 歳未満~10 歳代は減少が顕著でした。このことから、子の受診を控えるなど、医療機関での二次感染の防止を意識した人が多かったことが考えられます。一方で、70~80 歳以上では、患者数があまり減少していません。慢性疾患の罹患(りかん)率が上がる年代では、受診を控える患者が少ないことが特徴であると言えます。
■経営状況への影響について『緊急調査』|全国介護事業者連盟
http://kaiziren.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/kinkyuutyousa20200515.pdf
全国介護事業者連盟では、介護サービスごとの影響についてアンケート調査を行いました。自由記述で確認した経営課題についてもまとめられており、わかりやすいデータとなっていました。
以下のようにまとめています。
・全体集計結果によると、「経営への影響を受けている」と回答した事業所割合は第一次分の49%から第二次分は56%と増加している。
・サービス別にみると、通所介護事業所が第一次調査に引き続き最も経営への影響を大きく受けており、「影響を受けている」が91%に達している。ことから、さらに5月の減収割合増についても経営打撃が予想される。
・また、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム等入所系のサービスについては、現時点では「影響を受ける可能性がある」の割合が最も多いが、自由記述回答からは「新規問い合わせ激減」「新規利用者希望受入を制限している」等、5月以降の影響を示唆する経営課題が多く挙げられている。
・さらに、利用者減による減収に加えて衛生用品等の価格高騰や、体調不良や学校休校による職員の欠員補充、感染症防止対策に伴う業務量の増加等による人件費の増加によって経費増についても苦慮している回答が複数見られた。
■新型コロナウイルス感染症に関するWEB 調査の結果|日本訪問看護財団
https://www.jvnf.or.jp/blog/info/korona
日本訪問看護財団では、訪問看護ステーションへのアンケート調査結果を公表しています。特定の事業に関して深く分析されており、参考になりました。
以下のようにまとめられています。
〇感染防護具は 84.7%が不足と回答
業務に必要な感染防護具は 359 人(84.7%)が不足していると回答していました。今後感染症者(疑いのある人を含む)への訪問看護が増加するなか、訪問看護ステーションの看護師が濃厚接触者又は感染者にならないように感染防護具の充足は必須と考えられます。
〇訪問看護回数は 52.4%が減少と回答
通所サービスの閉鎖等により訪問回数が増えたところもありますが、222 件(52.4%)は減少していました。減少した理由で最も多いのは家族・利用者の意思で 195 件(50.0%)、次いで、医師やケアマネジャーからの依頼でした。リハビリテーションを主としたケアが全体的に減少しています。小規模の訪問看護ステーションが事業を継続できるような支援が必要です。
〇電話等による対応は 62.3%が希望
電話等によるオンラインの訪問看護が必要な対象については、状態が安定している利用者が201 人、看護師のアセスメントにより訪問を控えたほうが良い利用者 193 件、外部来訪者に過剰に反応される利用者 159 人となっています。
〇訪問看護ステーションが休業した場合の連携体制が必要
BCP(事業継続計画)を作成していたのは 58.3%で、利用者やスタッフに感染者又は濃厚接触者が出た場合の対応については 85.1%が取り決めていました。しかし、自分の訪問看護ステーションが休業した場合に利用者を引き受ける他事業所を決めているのはわずか 13.4%でした。実際に、近隣の訪問看護ステーションとの利用者移行等、連携体制が必要になったのは 16 件(3.8%)でした。今後、さらに近隣・行政等との連携が重要と思われます。
■新型コロナの介護・高齢者支援への影響と現場での取組み|ひとまちラボ
一般社団法人 人とまちづくり研究所では、各団体と連携をとり3種類の調査レポートを出しているようです。
BCP(業務継続計画)の策定状況や、資金繰りの現状など、他のアンケートでは見られない調査結果も出ていました。
私も今日、教えていただいたばかりなのですが、興味深いアンケート調査でしたので、お勧めです。
おわりに
今回は、新型コロナの医療機関・介護施設への影響に関する各団体が公表しているデータをまとめました。
昨日は東京での感染者数がまた増えました。緊急事態宣言が解除されたとはいっても、まだまだ油断はできない状況かと思います。
データが伝わることで少しでもお役に立てれば幸いです。
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それでは、今日も良い1日を。
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