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令和2年7月豪雨で被災した企業経営者が伝えたい、災害時に大切な3つの必要性

7月4日未明に熊本県南部を襲った豪雨。球磨川水系が広範囲に渡って氾濫し、人吉市を始め球磨村や八代市など甚大な被害となりました。熊本南部豪雨に際し被害を受けられた皆様やご家族、関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

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私が代表を務める人吉市の第3セクター球磨川くだり株式会社も壊滅的な被害を受けてしまいました。川下りの船が出航する人吉発船場では事務所が約1.5mの浸水。パソコンやその他備品、パンフレットや売店の商品も含め全てが廃棄処分となりました。また、全ての船が流出し大半の船が大きく破損し再使用が不可能なレベルに。送迎用のマイクロバス・ワゴン車、輸送用のクレーン・トラックなど全ての車両も水没となっています。

被害状況_200706_1

また、球磨村渡にあるラフティング拠点の渡発船場の被害は更に大きく、事務所や更衣室の建物そのものが跡形もなく流出。ラフティングボート・ウェットスーツ・パドルなどの各種道具の全てが流されてしまいました。今回の豪雨で最も被害が大きかった場所の一つである渡地区は本当に戦場のような状況です。

球磨川くだり株式会社被害状況
【人吉発船場】
①船 舶:10隻全てが流出。数隻を除いて使用不可能。
②車 両:全て水没(トラック・クレーン・マイクロバス・ワゴン車)
③建 物:1.5m浸水(事務機器・PC・書類・売店商品など全て廃棄)
④社 員:全員の無事を確認(船頭を含む)※3名が床上浸水被害
【渡発船場】
①建 物:事務所・更衣室・船大工小屋が流出して不明
②備 品:ラフティングボート・パドル・関連ギア一式の全て流出
③その他:新造船用の木材も流出。テナント業者の事務所も全て流出

最終的に当社の社員は3名が床上浸水の被害があったものの全員無事だったことは不幸中の幸いでした。尚、このタイミングで呑気にnoteを書いている場合かとご指摘されるかもしれませんが、まだ沖縄以外は梅雨空けしておらず、国内どこでも再び同じような大雨に襲われる可能性があるかもしれません。現在リアルに被災中の企業経営者が感じた3つの必要性をテーマに、災害時に経営トップに求められる大切なことを少しでもお伝えしたいと思い書かせて頂きます。

1.常に最悪を想定して対応することの必要性

水害当日、私は大阪へ出張中。そんな中、大雨の予報もあり午前2時ごろから目が覚めて天気予報のチェックを行っていました。そうしていると午前2時30分ごろ球磨川水系の渡・坂本地区が氾濫危険水位を超えたとの情報を目にしました。その後、午前5時40分ごろ社員から急激な増水によって見たこともない水位に達した人吉発船場の動画が会社のグループLINEにアップされました。その後の生々しい社員とのやり取りは下記の通りです。

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ご覧の通りです。私が避難を呼び掛けてから、最後まで対応をしてくれた社員2人が避難するまで2時間かかりました。危険を顧みず、責任感を持ってギリギリまで対応してくれたことは本当に感謝をしておりますが、もっと早く避難して欲しかったと思っています。LINEのやり取りにある通り、私は報告を受けてすぐから社員に対し安全最優先、避難をするように呼び掛けています。また、球磨川くだり社屋が浸水を始める1時間30分以上前に氾濫することを前提での行動を指示しています。

なぜ、現場にいる社員より大阪に出張中の私の方が危機感を感じているのか。それは私は”常日頃から最悪を想定する癖”がついているからです。水害後社員の口から発せられた言葉は

・まさか氾濫するとは思いませんでした。
・ここまで急激に水位が上昇するとは思いませんでした。
・たぶん自分の家は大丈夫だと思っていました。

つまり、”多分大丈夫だろう”と油断していたということ。これは自然災害が起きる度に各地で繰り返される”救うことが出来た命、防ぐことが出来た被害”の話に繋がっていると言えます。どうしても人間は不都合なことより都合が良い情報を好みます。でも緊急時にはそれが命取りになってしまいます。
これは自然災害に限らず会社経営も同じで、業績を皮算用で考えてしまうと想定より悪い業績となった場合、途端に窮地に陥ってしまいます。リスクマネジメントを行う上で大切なのはやはり最悪を想定することだと思います。

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2.冷静な判断の必要性

今回の水害のような緊急事態ではどうしても慌ててしまいがちです。難しいことではありますがこのような時こそ冷静な判断が必要となります。前項で書いた通り、冷静な判断が出来ないと危険リスクが高まります。どう考えても優先順位は” 命 > 施設・設備 ”です。命が助かれば大きな損害があったとしても再チャレンジ出来ますが、亡くなってしまったらどうしようもない訳です。社長の私が再三避難を指示しているにも関わらず、責任感を優先してしまった社員。冷静な判断が出来なかったことがあわや大惨事に繋がるところでした。

また、冒頭にお伝えした通り、当日は関西にいた私がなぜ球磨川の氾濫を予想出来たか。それは行政が提供している球磨川水系の防災情報から人吉発船場付近の水位だけでなく上流から下流までの幅広い水位を確認していたことや各種気象サイトで提供されている雨雲レーダーから熊本県南部は完全に線状降水帯となっていることが確認出来たことから総合的に判断しての予想であり、それなりの精度の高い根拠から導いた結論でした。

もう一つ、冷静に判断したことがあります。それは関西から慌てて現地に駆けつけなかったことです。社員からの報告だけでなく、TVからの映像、インターネットからの情報を見ているといてもたってもいられませんでした。しかし、現地にいた当社の取締役から今人吉に来ても危険だし、何も出来ないから来るなと言われ、高速道路などの状況を見ると八代〜人吉間は通行止め。また、国道も数え切れないほどの場所で浸水や土砂崩れが起きているとの情報もあり、2次災害に繋がる恐れから今は行くタイミングではないと判断しました。現場の社員は早く社長に来て欲しいという気持ちだということも感じていたのでかなりの葛藤はありましたが、水害が起きてしまった以上もう被災前には戻れない訳で、頭の中ではすぐに復旧方法へ考えをシフトさせました。

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河川が氾濫し、浸水被害が起きたということはイコールで大量の泥が溜まっていることが想像できました。それは熊本において平成24年7月に起きた九州北部豪雨があったからです。今回の熊本南部豪雨と同様に当時の阿蘇地方は凄まじい豪雨に見舞われ、阿蘇乙姫を中心に甚大な被害がでました。知人の阿蘇内牧地区の宿泊施設のオーナーの方々は流入した泥の撤去に一番苦労されていた事が記憶にあり、泥の撤去作業を効率的に行うためにはどのようにしたら良いかを考える事としました。早速、「球磨川くだりの社員」と私が代表を務めるもう一つの会社「シークルーズ の社員」それぞれの担当者を決め、「復旧打ち合わせ専用LINEグループ」を作り現場・被害状況の確認、各種作業に必要な機材の準備に入りました。

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このような形で事前にしっかりと打ち合わせを進めた事で必要な情報が整理されていきました。その中で明らかに重機がないと難しい作業があることも見えて来ました。今回の水害発生後に有り難いことに多くの友人知人の皆様から支援の申し出を受けました。その中には建設業の方も多くいらっしゃったので、現状を伝え協力をお願いする事としました。

加えて、現地社員に各種手続きに必要な”復旧作業前の状態の写真をしっかり撮影する事”を指示していました。これはうっかり忘れる人も多いので要注意です。それらの写真を撮影せず、片付けを行ってしまったら保険手続きに苦労する恐れがありますし、作業中にその都度確認の必要が出てくるため作業の進行が遅れる原因にもなります。罹災証明書の発行にも写真が必要。ここも事前準備として大切な事です。

片付け前に写真撮影が必要な理由
①写真が無いと保険の査定手続きに時間がかかってしまう。
②写真撮影の有無を確認しながらの作業は効率が著しく落ちる
③罹災証明書の発行にも写真は必要

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このような形で「建設業メンバー打ち合わせ専用LINEグループ」を作成させていただき、必要な情報を写真で現地の社員から送らせて「建設業のプロの目から必要な重機のピックアップ」を進めて頂きました。重機選択のミスマッチがあればせっかくのご支援が無駄になってしまう可能性があるからです。あとは皆さんの都合と天候から総合的に判断して7月8日(水)に撤去作業を実施する事となりました。

当日は建設業の皆さんがユニックやダンプ、バックホウ、ホイルローダーなど総勢9台12名、その他にも私が所属する経済団体の友人たちが4トンユニックと4名、シークルーズ からダンプ1台と7名の社員で現地へ駆けつけました。駐車場にそれらの車両・重機が集結した姿は圧巻で、球磨川くだりの社員も含め総勢35名近くで作業を開始しました。さすがプロの建設業者は仕事が早い! また、シークルーズ の社員は掃除のプロフェッショナルなのですごいスピードで片付いていきました。結果はたった1日でほとんどの作業が完了。先の見えない片付け作業で途方に暮れていた球磨川くだり社員は笑顔になり、お手伝い頂いた皆さんも充実した表情。心配して当社へ足を運んで頂いた金融機関やマスコミ、行政の皆さんは余りにも早い復旧に驚かれていました。もちろん、当社のようにこれだけの多くの建設業の皆さんのご協力を頂くことは簡単ではございませんが、少なくともこういう時こそ感情に任せ、無計画に慌てて現地に行くことより、必要な準備をしっかりと行った上で現地に入り、作業に取りかかることの大切さを改めて実感した次第です。
ちなみに早く片付けが終わったことにより、当社のスタッフは家族や友人知人の片付けを手伝う余裕が出来ております。早い復旧は様々なプラス効果があると実感しております。

生産性の高い復旧作業を進めるために大切なこと
①現地と支援者が現地の状況・必要な機材を事前に打ち合わせを行う
②初期作業ほど重機やトラックなどを準備した方が効果的
③専門的な方々の知見を入れて復旧計画を立てること
④やはり人手は多ければ多い方が良い
⑤最初から出来るだけ災害ごみの分別は行うべき

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3.業務のオンライン化・データクラウド化の必要性

浸水によって当社の全てのパソコンやデスク、書棚が水没致しました。ただ濡れただけでなく泥まみれ。簡単に言えば事務に必要なものが無くなってしまった訳です。当社は観光業ですので予約台帳や旅行会社との紙資料がたくさんありましたが全滅。多くの観光事業者はお手上げとなる状況です。

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当社は長年経営難が続いた中でメインバンクの仲介により1年半前に旧体制から我々シークルーズ が経営を引継ぎ、新体制に移行して経営再建をスタートしました。普段上天草にいる私が現地に常駐できないこともあり、5月まで再生支援業務をしてくれていた取締役のサポートの元、ほとんどのデータのクラウド化が進んでいました。レジはPOSレジアプリのAirレジを導入。WordやExcelなどのドキュメントはDropBoxに保存していましたし、会計、人事労務、予約システムはクラウドシステムを導入。振り込みは当然ネットバンキングがメイン。また社員と私のやりとりはChatworkで行っていました。つまりほとんどのデータがクラウドが残っていましたので、被災後の事務処理に大きく役立っています。一例を挙げると加入していた保険の一覧データから加入会社、支払い金額をすぐに確認することができました。これが紙メインでしたらなかなか難しい状況だったと想像できます。実際、今回被災された大半の事業所が紙メインまたはオフラインでのデータ管理だと思われ、事業を再開するにしても膨大な手間がかかると予想されます。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにリモートワークやオンライン会議の普及、ハンコの廃止などデジタル化、オンライン化が一気に浸透してきましたが、今回の水害のように企業のリスクマネジメントの面からも業務のオンライン化、データのクラウド化は必要だと実感しています。

当社が導入していたオンライン・クラウドシステム
①会  計  :会計freee
②人事労務  :人事労務freee
③予約システム:予約システム エジソン
④POSレジ  :Airレジ(会計freeeと連動)
⑤ファイル共有:Dropbox
⑥振り込み  :インターネットバンキング(取引各行)
⑦社内連絡  :Chatwork(財務・人事)、LINE(全体)
※皆様気になっているようなので一覧でご紹介します。

4.最後に

ここ近年の日本は梅雨の豪雨や台風による風水害、東日本大震災や熊本地震などの巨大地震など多くの自然災害に苦しめられています。
私も熊本地震の経験はありましたが、売り上げなどの間接的な被害だけで直接的な被害は受けておらず、今回の熊本県南部豪雨で初めて本当の被災者となりました。そして被災者となったことで常日頃の準備の大切さも思い知りました。自然の前では人間は本当に無力です。だからこそ様々なことを想定し備える必要があります。自然災害は決して他人事ではありません。皆さんが被災者になる可能性は常にあります。この記事で書かせて頂いた3つの必要性は企業経営者の皆様なら必ず意識して頂ければと思います。

企業経営者が伝えたい、災害時に大切な3つの必要性
①常に最悪を想定すること
②冷静な判断
③業務のオンライン化及びデータのクラウド化

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最後に
当社は今回の豪雨で財産の全てを失ってしまいました。元々が経営再建中だった中でのコロナ&豪雨まで加わったトリプルパンチ。流石に事業の継続が困難な状況なのは間違いありません。人吉球磨の観光のシンボルであり、球磨川とともに歩んで来た球磨川くだり。皮肉にもその球磨川の氾濫で事業継続が厳しい状況に追い込まれてしまいました。今後のことはまだ何も考えられませんが、これから待ち受ける更なる困難に対し冷静に考えていきたいと思います。

※被災地のご支援は被災した自治体への義援金またはふるさと納税が一番有効です。物資のニーズは日々変化しますので、やはり現地にとっては”お金”のご支援が最もありがたいと考えます。宜しければ被災した各自治体への直接のご支援をよろしくお願い致します。
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株式会社シークルーズ 代表取締役・球磨川くだり株式会社代表取締役 専門は公共交通と観光を核とした地域づくり。 公共交通機関・地方の発展のため船舶・鉄道・バス・航空の連携の推進を目指しています。

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