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進化するよさこい系創作ダンスの世界:《こいや祭り》 2019初日の感想

今日と明日は大阪城公園で、YOSAKOIソーラン系の大規模パフォーマンスイベント『こいや祭り』が開催されている。大学生を中心に、多世代にわたる《踊り子》たちのエネルギーと創造性に触れられる、青春イベントだ。明日や来年参加する方のために、推しチーム紹介とともに初日の感想を記す。

よさこいってなんだっけ…

札幌のYOSAKOIソーラン祭りを知っている人は多いのだろうか?2000年代にすごく盛り上がって、いまは全盛期ほどではないと言われるけど、こいや祭のようなイベントに来ると、相当数のよさこい人口がいることに驚く。

伝統的なよさこい/YOSAKOIは、両手に持ってカチっと鳴らす小道具《鳴子》を持って踊る。ステージだけでなく前に進みながらのパレードもあるから、格子状に位置を固定して整然と舞うスタイルになる。衣装はだいたい統一で、途中で「衣替え」がある(複数枚着込んでいて上を脱ぐ)。

たとえば下の写真は関東学院大学《誇咲(ほこさき)》。

関東勢は、伝統的なスタイルのいわゆる「高知流」が多い気がするけど(法政の鳳遙恋とか好き)、高知流をやるいくつかのチームがMCで敢えて「関西では少ない」「学生では珍しい」と言うくらい、関西勢の主流スタイルは変容している。

多くのチームのスタイルは、動きや衣装が異なるいくつかのが、ステージ上を縦横無尽に動き回り、5分程度の演舞のなかでひとつのストーリーを組み上げていくようなスタイル。その中によさこいっぽい動きや掛け声が入る。鳴子はあったりなかったり(鳴り物ないチームが増えてる感)。「よさこい」との離れ具合でチーム名にもさまざまあり、以前「よさこいサークル」と名乗っていたけど今は「創作ダンスサークル」と紹介しているところもある(潔い)。

岡山うらじゃ勢がよかった

今回いいなーと思ったのが岡山勢だ。「うらじゃ」という岡山地域のお祭りに踊りが組み込まれているそうで、「岡山うらじゃ連」を冠するチームが複数来ていた。下の写真は社会人チーム《蓮雫(れんげ)》(2回見た)。社会人チームは動きに統一性と安定感がある感じがする。《四季》も上手だった。

岡山の「うらじゃ」に並ぶ共通の冠のひとつとして、京都の大学サークルの「京炎(きょうえん)そでふれ」がある。これも京都学生祭典発祥のローカルイベントにつながる名称だ。京炎そでふれの子たちも、前述したようなクラシックじゃないスタイルが多い。

さて、そんな中でもイチオシを紹介する。

推し①文化と練度の《咲産華》

3年前のオリジナル演舞『希(こいねがう)』に惚れ込んで以来ずっと追いかけている、京都産業大学《京炎 そでふれ!咲産華》。咲産華は去年の『あゝ、浪漫』が、こいや祭り「準大賞」を獲得している。かなり評価が上がってきている(気がする)実力派チームだ。京都勢がだいたい取り入れてくる京都文化的な文脈を、相当振り切って組み込んでいると思う。今回は女性踊り子が全員おしろい化粧で、男性踊り子全員編み笠をかぶった敢えてのツートーン。それでいて、動きのキレがはんぱない。圧倒的に切れ味がいいと思った。

咲産華はサークル参加人数もはんぱないようで、ステージに入り切らないベンチメンバーが、チームTシャツを着て客席の端の方で応援していた。やぐら会場の最前列で見ていた8歳娘は、気づくと30人ぐらいのオフメンバーの声援に周りを囲まれているという稀有な体験をした。

腰に手を当ててステージの横から演舞を観る娘。

それだけ人数が多いと、中の競争も激しくて、上手い人が前に出てくるのかも。今年のオリジナル演舞『ユケミライ』だけ動画貼っちゃう。こんなクオリティである。

推し②怪談とダブステップの《炎流》

もうひとつは、メインステージ一番手の大役を務めた関西学院大学の《炎流(えんる)》。炎流の演舞テーマは『皿屋敷』……お菊の亡霊が夜な夜な皿の数を数えるという怪談をモチーフにした……と聞くとどんなダンスやねんと思うが、実際の演舞も、「いちまーい、にーまい、、あれ、、いちまい、、たりない?(どろどろ~~)→あった~~(ぺかー)」となって怪談がポジティブに終わるというハチャメチャな展開。すごくクリエイティブ。それでいて踊りがうまい。去年の『福男』もすごいインパクトあった。

あと、炎流の使う音楽ってダブステップというのか、ポップスじゃなくてすごいハードな電子音のところがある。これは昨年大賞を獲った嘉們 -KAMON- の影響ある気がするんだけど。耳触りのいい歌モノやジャズ、和もの……に限らない音選びの幅広さも、トレンドの変化のひとつだ。

***

きょうは8歳娘が、お昼には飽きるかなーと思っていたら案外こいや祭りを気に入ったようで、大阪城の櫓と天守閣の見物も含めつつ、丸一日会場に滞在できた。メイン会場→教育塔前→極楽橋→やぐら。20ちかくの演舞を観たと思う。

3人の少人数チームで踊りきった精華の《葵和(あおなぎ)》。ダイナミックな南中ソーランを見せてくれた三重の《かもめ》。小一から中三までのジュニアチーム《ほたる》も娘が心奪われていた。ほんとうに個性的で多様なパフォーマンスを楽しめた。

よさこい「系」創作ダンスは、毎年すこしずつ進化というか変容しながら、全国でイベントをやっている。最近はプロの映像部隊を入れた4K品質の映像も普通にYoutubeに上がっている。

興味のある方はぜひ「推しチーム」を追いかけて、踊りの世界をのぞいてみてほしい。



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