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「あったらいいな」をつくるのが僕たちの仕事。〜対談:阿部友彦/やきとり職人(後編)

約10年前から、そこに「あったらいいな」と思うのは何かを考え、大塚という街に向き合ってきました。

JR大塚駅北口のビル「ba 05」最上階の「やきとり 結火(むすび)」を手掛ける焼鳥職人、阿部友彦さんは僕と同世代。これまで大塚に無かったような店をつくって、新しい焼鳥の世界を表現してほしいという想いで、大塚への出店をお願いしました。

前編では、イタリアンのシェフからフリーターとなり、紆余曲折を経て焼鳥職人として独立、第1号店となる「やきとり阿部」を開店されるまでの経緯をうかがいました。

後編では、阿部さんがこれから焼鳥の世界で目指すものについて、聞かせて頂きました。

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【阿部友彦さんプロフィール】
1984年生まれ、新潟県出身。元々はイタリアン・レストランのシェフだったが、28歳の時、目黒の名店「鳥しき」の門を叩き、修業。2016年に独立し、目黒に「やきとり阿部」をオープン。2020年、港区白金に2店舗目「やきとり 陽火(はるか)」を、2021年7月、JR大塚駅北口 ba05 8階に3店舗目となる「やきとり 結火(むすび)」グランドオープン。

武藤 「2016年に目黒に『やきとり阿部』を開店されて。そこから2020年に2店舗目陽火(はるか)を白金、2021年に3店舗目を大塚に出されるわけですが、大塚にはどんなイメージがありましたか?」

阿部 「下町で、ちょっとやんちゃなイメージがありました。でも、店を開けてみると実際にいらっしゃるのは上品な方が多くて。ワインをたしなんだり、デートをされる方、大事な方をお迎えされる方など、みなさん上手に『やきとり 結火』を使っていただける方ばかりなんです」

武藤 「それは阿部さんのおかげでもあります。例えば港区だと、おしゃれで美味しい店はすぐに巷の話題になってしまって、行ってみたら知り合いとバッタリ、なんてこともあるけど、大塚ならその辺の気兼ねがいらないし、価格も比較的安い。そんな風にメリットもたくさんあるのが大塚だということを、もっとたくさんの人に知ってもらえたらと思っています」

阿部 「誰もが知るおしゃれスポットにはない、穴場的な楽しさがありますよね」

武藤 「そんな大塚を含め3店舗の運営となると、人材が必要じゃないですか。その辺りはどうされたのですか?」

阿部 「うちで働いてくれているスタッフはみんな、将来独立するつもりで働いてくれているので、なるべく彼らが成長できる場をつくりたいと思っています。たとえば、お店が一軒しかないとスタッフが勉強したくても、焼く機会が少ないですよね。でも、新たに店をつくれば、それだけスタッフの腕を磨く時間が増えます。大塚の結火をやるときは、笠井剛くんが『やりたいです!』と自分で手を挙げて大将になってくれたので、3店舗目のオープンを実現できました」

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「やきとり結火」大将の笠井さん。カウンター越しの会話も楽しい。

武藤 「接客担当の女将、中田真央さんはじめ、みんなも頑張ってますしね。彼女からワインを勧められると、つい飲んじゃいます(笑)。焼鳥がおいしいのはもちろんですが、スタッフのチームワークもいいから、行くと楽しいんですよ。僕もいろいろな方をお連れしますが、みなさん大絶賛してくれます」

阿部 「ありがとうございます。僕たちで頑張って、少しでも大塚に、焼鳥好きなお客さまを増やせたらと。そのなかでも結火が一番と言っていただけたら嬉しいです」

武藤 「結火には大将の笠井さんが立つ焼台の後ろにもうひとつ、グリルがあります。お忙しいとは思いますが、月に何回か阿部さんにここで焼いてもらって、阿部さんならではの世界観を表現してもらえたら……というのが僕の希望です」

阿部 「はい。なんとか実現できたらと思っています。実は、目黒や白金の店ではあっさりした味わいの伊達鶏を使っているのですが、結火では鹿児島産の黒さつま鶏という鶏肉を使っているので、味わいの表現が違うんです。弾力があって旨みが強くて、パンチがあるので、さらにワインに合います」

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武藤 「そう聞くとますます、阿部さんには大塚から“焼き”の世界で頂点を目指していただきたいと思いますね。阿部さんは鶏を焼くとき、何を一番大事にされているんですか?」

阿部 「おいしいものは訓練すれば、誰でも出せると思うんです。でも、僕はお客さんがこの瞬間に食べたい! という一瞬に串を出せるか、ということを一番気にしています。会話の邪魔をせずに、ベストのタイミングを狙いたい。これが、なかなか難しいんですね。僕の師匠である『鳥しき』の大将の受け売りですが、間合いが重要です」

武藤 「間(ま)ですよね。店でも街でも間、余白が大事。それが成長のための、のびしろになるんでしょうね。最近、雑誌でも特集が組まれるなど、焼鳥ブームがきていますが、それについてはどう感じられていますか?」

阿部 「それだけ需要があるということですから嬉しいことですよね。店舗もすごく増えましたから。ただ、ひと口に焼鳥店といってもクラシカル、前衛とタイプ別の棲み分けができていて、価格帯も広いですから、お客さまは自分に合うところを選びやすい。また、そのなかで淘汰もあり、より洗練されて良いものだけが残っていくはずですから、業界にとっては好ましいのではないでしょうか」

武藤 「業界全体が底上げされるのは、お店を訪れる人にとっても有難いことですよね。ちなみに阿部さん個人としては、今後、どうしていきたいとか、ありますか?」

阿部 「個人としては技術をもっと高めたいというのが第一にあります。それでお客さまが来てくれるなら幸せですね。あとは自分の子供に、この仕事かっこいい、大きくなったら焼鳥職人になりたい、って言ってもらえたら(笑)。会社単位としては、スタッフが元気で楽しく働いてくれて、彼らの独立をバックアップしていけたらいいですね。武藤さんは何か考えていることはありますか?」

武藤 「不動産賃貸業だけでなく『あったらいいな』をつくっていくために、これまで阿部さんにお願いした焼鳥屋もそうですし、星野リゾートのようなホテルなども大塚に誘致してきました。それをこれからも継続していきます。これは自分でやるしかない。それに自分自身で取り組んだ方が、阿部さん含め、楽しい仲間と一緒におもしろいことができる。その活動や街の魅力を伝える努力を続けていきたいです」

阿部 「このnoteでの対談シリーズもその一環ですよね?」

武藤 「そうなんです。雑誌やテレビのお世話になることもありますが、ワンクッション入ると、自分が伝えたいことが100%伝わらないこともあります。ですので、大塚の魅力を鮮度そのままにD to C(ダイレクト トゥ コンシューマー)で伝えられるようnoteで発信しています。ただ、伝えるというのは難しくて、独りよがりにならないよう、過去を振り返りながら自分たちのこと、そして大塚のよさを直接、ひとりでも多くの方に手渡しできたらと思っています」

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阿部 「5年後、10年後の展望はもう決まっているんですか?」

武藤 「それが、まだあまり見えてないんです。コロナのような不測の事態もありますし、ガチガチに決めずに、柔軟に考えていきたいなと。大塚のプロジェクトのブランディングディレクターであるKさんに出会ってから、こんなことになるなんて5年前には想像もできませんでした。40歳を迎えたときは、まさかこんな40歳になっているとは思いませんでしたが、10年後、50歳になったときも、こんな50歳になれるとは思わなかった、という自分であったらいいですね(笑)

阿部 「それは僕も同じかもしれません。武藤さんやKさん、店舗の設計を手掛けてくれた白濱さんたちと出会って、自分の想像を超えたお店づくりをさせてもらえて、視野が広がりましたし、すごく刺激をいただけましたから」

武藤 「それも阿部さんがこのプロジェクトに飛び込んでくれたからだと思うんです。やはり、動かないと変わらない。もっと自主的に動いていこうよ、ということを伝えていけたらいいですね」

阿部 「そしたらきっと、街もやきとりの世界も魅力的になっていくでしょうね」

武藤 「はい。その結果として、日本をよくしていけたら。阿部さんとは、成功して勘違いしそうになったときも『ちょっと最近、謙虚さが足りないんじゃない?』と言い合える関係でいられたらと思っています(笑)」

阿部 「そこはお互い遠慮なしでいきましょう(笑)。今後ともよろしくお願いいたします!」

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大塚のまちをカラフルに、ユニークに

大塚が変わるプロジェクト「ironowa ba project(いろのわ・ビーエー・プロジェクト)とは?(▼)

編集協力:寺尾妙子

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