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SNS嫌いの経営者が1年間noteを発信してみたら起きた、「3つの変化」

「『うつ』になったことを書いたほうがいいんじゃない?」

2020年10月、山口不動産の会議室。

このnoteを始めるにあたり、大学からの友人で編集者の佐渡島庸平と打ち合わせをしていた最中、彼から突然発せられた言葉です。

「ハイ??……いきなり何を言い出すんだ⁉️」と慄きました。
打ち合わせに同席していた社員も知らない過去だったのに……。

メディアはおろか、SNSの発信すら避け続けてきた僕にとって、振り返りたくもない過去を公にさらけ出すなど、考えられないことでした。

こんなふうにして始まったnoteも、回数を重ねて気づけば1年が経ちました。

当初の自分が想定もしていなかった変化がありました。

最後の更新となる今回は、1年間noteを発信し続けた結果起きた、3つの変化についてつづりたいと思います。

その1、自分に起きた変化

「うつになったことを書いてみたら?」と佐渡島に言われてドン引きしながらも、「noteの発信は自分の思考の整理にもなるし、(noteが読まれることで)まだ会っていない人にも自社の取組みや想いを伝えられるメリットは大きいよ」とも説得され、渋々始めました。

note で発信する目的は、僕が大塚で力を注いでいる「ironowa ba project(いろのわ・ビーエープロジェクト)」の想いを届けて、広げること。

そのためには、このプロジェクトをスタートすることになった背景や、そもそも僕がなぜ山口不動産に入社したかに触れなければなりません。

これまでのnoteで書いてきたとおり、中学受験に始まり、大学受験、公認会計士試験と、レールの上を順調に歩んできたかのように思えた僕の人生は、27歳でうつになったことで暗転します。

うつの時だけでなく、親族同士で裁判が起こった時プロジェクト融資が撤回された時……目を背けたくなる過去に、向き合わざるを得なくなりました。

振り返りたくない過去の記憶を掘り起こして文章にする作業は、正直なところ相当苦痛でした。でも、そんな作業を繰り返す中で気づいたことがあります。

これらの辛い出来事の、どれが欠けたとしても、今の自分、そして今の大塚には辿り着いていない。

順風満帆そうなレールの上を進んできただけでは、見えない景色が見えている。

そう気づいてからは、消したいと思っていた過去も、肯定的にとらえられるようになっていきました。

これが、noteを発信し始めて最初の変化でした。

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テレビ東京の番組『田村淳が豊島区池袋』収録にて、田村淳さん、出演者の皆さまと

「『今』は、『未来』をつくっていると思いますか?それとも、『過去』をつくっていると思いますか?」

あるミーティングにて、ironowa ba projectのブランディングを担当して頂いているディレクターのKさんから、こんな質問をされました。

「今からつくれるのは、未来しかないと思いますが……」。

1年前の僕だったら、Kさんにこう返したかもしれません。

でも今なら、「『今』は、これからをつくると同時に、『過去』もつくっている。過去の捉え方を変えられる気がします」。こんな風に答えることができるようになりました。

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eightdays dining ホームページの撮影現場にて
イメージモデルの女優・松木里菜さん、そのご家族、弊社スタッフと

その2、大塚の人たちに起きた変化

noteを発信したことで起こった2つ目の変化……それは、大塚で暮らす人や働く人、訪れる人たちに起きた変化です。

この1年間、僕のバックグラウンドや山口不動産が取り組むironowa ba projectについて、noteで月に約2回のペースで発信を行ってきました。

また、同時期に始めたInstagramとTwitter(アカウント名:@otsuka_color)では、大塚のおいしい飲食店やおすすめスポットなど、大塚を街ごと楽しんでもらえるような情報発信に努めました。

地道な発信は徐々に目に留めてもらえるようになり、noteのビュー数やSNSのフォロワー数も着実に伸び、Instagramアカウントのフォロワー数は2022年3月時点で3,500人を超えました。

その効果でしょうか、最近は街の方から「今回のnote、特に面白かったですよ!」と声をかけて頂いたり、「Instagramで投稿していた#CleanUpOtsuka(ゴミ拾い活動)に参加してみたい」とDMが届いたり。

先日、賃貸マンションba apartmentの内覧に来てくださったお客さまからは、「たまたま大塚に来たら、建物についている「ba」の文字が気になって。調べたら武藤さんのnoteに辿り着いて、大塚に住んでみたいと思ったんです」という言葉をもらいました。

発信を始める前に比べて、僕たちの取組みに共感してくださる方、協力の意思表示をしてくださる方が目に見えて増えたのが、何よりも嬉しい変化でした。

加えて、某大手企業の広報の方も僕のnoteを読んでくれていて、「話を聞いてみたいので一度お会いしたい」「イベントに登壇してほしい」といった依頼や、雑誌やWEBメディアからの取材も増え、より多くの方に大塚のことを知ってもらえるようになったと思います。

今だけにとどまらず、これから大塚に関わってくれるかもしれない仲間とつながるチャンスが生まれる。

佐渡島が発信を薦めてくれた理由が、だんだんと分かってきました。

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2021年11月に開催した「200人de清掃!」イベントで、参加者の皆さまと

その3、旧友やかつての仕事仲間に起きた変化

そして、このnoteを発信して、最も予想外だったこと……。

それは、旧友や仕事仲間に起きた変化です。

noteの第1話を公開した日、それまでほとんど使っていなかった個人のfacebookアプリを開いて、記事をシェアしてみました。

その後に続く2話~6話は、うつを発症したこと、親族間で裁判が起きたことなど、これまで親しい友人にもほとんど明かしてこなかった話がてんこ盛りでしたが、これも思い切ってfacebookでシェア。

待っていたのは、noteを読んだ学生時代の友人や元同僚からの、予想を超える数のコメントやメッセージでした。

「実は、俺も『うつ』になったことがあって」
「社会を変えるつもりで就職したけど、変わろうとしない組織の中で20年以上も過ごしてしまって、身動きがとれない」

そんな声を聞いて、輝かしい仕事をしているように見える人にも、辛い挫折の経験や、組織の中での葛藤があるのだと知りました。

むしろ、「一見すると輝かしい」人だからこそ、過去の挫折をうまく消化できなかったり、レールを外れることに不安を感じ、苦しんでいる人が多いのかもしれません。

僕の発信が、一度立ち止まって過去を捉え直したり、日々の行動を変えてみたりするきっかけになってくれるとしたら、頑張ってこのnoteを続けてきた意味があるように思えました。

僕らの意思と行動が、世界を変える

東大卒で、銀行や監査法人を経て、不動産会社の社長。

経歴だけ見れば、もしかすると僕も「一見すると輝かしい人」に映るのかもしれません。

でもその中身は……まったくなんです。

僕は、決められたルール内で「正解」(高得点)を出すのに長けていただけ。

合格という「正解」を達成した後は楽をすることばかり考えていました。そんな僕とは対照的に、さらなる高い目標のために努力し続ける同期や同僚を見て、「オレはダメな奴だなぁ」と劣等感を募らせていました。

マラソンにたとえるなら、先頭集団の最後尾をただ何となく走っていたようなものです。前方を走る選手に置いて行かれないように。先頭集団から脱落しないように。

そんな僕は、今。

かつて走っていたコースからは、大きく外れた場所に立っています。

僕は、国の政策を決める官僚でもなければ、誰もが知るような大企業の幹部候補でもありません。

山手線の中でもマイナーと言われている大塚にある、たった7人の会社の社長をしています。

世の中への影響力など、微々たるものかもしれません。

それでも、noteを書くことを決めて、過去を捉え直し、プロジェクトにかける想いを発信し続けたことで、大塚でも「変化」が起こり始めました。

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2021年3月に竣工したironowa hiro baの、夜の風景

今、ウクライナが戦乱の最中にあり、ほんの数日前までそこにあった穏やかな日常が、無残に破壊されていく光景を見て、考えることがあります。

日本に暮らす僕たちは、この平和な日常が、当たり前に続くものと思っていないだろうか?

この社会で、街で、会社で、起こっている「おかしなこと」を、見て見ぬふりし続けていたら、いつかこの国もおかしくなってしまうかもしれない。

各々が社会で起きていることを「自分ごと化」して行動することができたら、会社も、街も、ひいては世界も、もっと良くなる伸びしろはまだまだあるんじゃないか?

変化を起こそうとすると、正直言って面倒なことに多々直面するでしょう。
「どうせ変わらない」、「自分なんかが」、「大変そうだし……」そんな気持ちが、足枷になってしまっている人もきっと少なくないでしょう。

でも、変わることを諦めて、何も変わらない無難な人生を過ごすよりも、
社会が少しでも良くなるよう変わることに挑んでいく人生の方が、
楽しそうじゃないですか?

人生は、
どれだけ呼吸をし続けるかで決まるのではない。
どれだけ心のふるえる瞬間があるかで決まるのだ。

僕の好きな言葉です。

見たくないことから目を背けずに向き合う。自分を取り巻く世界が、明日は少しでも良くなるように、行動をしてみる。

世界を変える第一歩は、明日の行動をほんの少し変えてみることから、始まっているのかもしれません。

最後に、聴いてみてほしい曲があります。

RADWINPS『正解』
https://www.youtube.com/watch?v=xKjFYKWCDas

かつての僕の葛藤をまさに表現してくれていて、初めて聴いたとき思わず心が揺さぶられました。

♪ 
あぁ 答えがある問いばかりを教わってきたよ そのせいだろうか
僕たちが知りたかったのは いつも正解など大人も知らない
喜びが溢れて止まらない夜の眠り方 悔しさで滲んだ心の傷の治し方
傷ついた友の励まし方

(中略)

制限時間は あなたのこれからの人生
解答用紙は あなたのこれからの人生
答え合わせの時に 私はもういない
だから採点基準は あなたのこれからの人生
よーい、はじめ

答えがある問いばかり解いてきた僕は、これからの人生をかけて、自分自身に、そしてここ大塚の街に、新たな問いを立てて、僕にしか導き出せない「正解」を見つけていきたいと思います。

大塚のまちをカラフルに、ユニークに

大塚が変わるプロジェクト「ironowa ba project(いろのわ・ビーエー・プロジェクト)とは?(▼)

編集協力/コルクラボギルド(文・平山ゆりの、編集・頼母木俊輔)


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