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SS【醜いコイントス】


南の島の王が北の島の王に宣戦布告した。

「お前たちは我々の島から南の民を追い出し、自分たちのものにしてしまった。 一ヶ月猶予をやる、島から出て行け。さもなくば制圧する!!」


北から南にかけて無数の小さな島が点在している。その中でも一際大きい島が南北に一つずつあり、そこに両国の王が住んでいる。

昔からお互いをけん制し合いながら、隙あらば島を奪い領土を増やそうと目を光らせてきた。

期限の一ヶ月が経ち、血で血を洗う愚かな戦争が今にも始まろうかという時、北のナンバー2の地位にある大臣がこう言った。

「コイントスで決めよう。それなら誰の血も流れないし、運を天に任せるのだから決めるのは神様だ。結果がどうあれ恨まず受け入れられるだろう」


歴史の記録も曖昧でどちらの領土か決まってない島はすべて、コインの表が出たら北のもの、裏が出たら南のものにすることに決まった。

コイントスは北と南の中間に位置する大きな穴の空いた島で、両国の王と大臣たちが集まり行われることになった。

穴は島の面積の半分以上を占めており、そのあまりの深さと大きさに危険を感じてか、今まで誰も住もうとはしなかった。その穴は奈落に通じているという噂もある。


南の島の王が空に向けてコインを投げると、落ちてきたコインは王の手をすり抜け、コロコロと転がり穴の底へ落ちていってしまった。

みんなが呆然として穴の中を覗いていると、中から声が聞こえた。


「コインを落としたのは誰だーー!!」


「どなたか存ぜぬが、そのコイン返してくだされ」

北の国の大臣は大声で叫んだ。

するとこんな答えが返ってきた。


「この両面表のコインのことかーー!!」


北の国の大臣は、この日のためにマジックの腕を磨き、ギリギリの所でコインをすり替えていたのだ。


騙されたと知った南の王は激怒し、コイントスは中止になった。

それから間もなく戦争になった。

似たような戦力の両国はお互いが壊滅的なダメージを負った。


だが両国は気づいていなかった。

この戦争は北と南だけの争いではなく、もう一つ勢力があったのだ。

かつて南北を統一しようとした小さな第三の勢力があった。しかし迫害され穴に姿を隠した。

穴は底に横穴が空いており地上まで通じている。

今がチャンスとばかりに地上に躍り出た第三の勢力は、一気に両国を制圧した。

彼らも他者をおとしいれて自分たちだけが生き残ることを考えていたのだ。



戦争に勝者などいない。

始めた時点で負けなのだ。

勝っても負けても必ず誰かが犠牲になるのだから。


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