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SS【タケルくんの夢】
食いしん坊のタケルくんは何やら朝からソワソワしています。
ふだん学校がお休みの日は、なかなか起きてこないタケルくん。
でも今日は違います。
お母さんとタケルくんは早朝から部屋の真ん中で非常持ち出し用のリュックを開けて点検しています。
お母さんのリュックには厚めのレジャーシートに救急箱、それに必要最低限の日用品、それから飲み水が入っています。
タケルくんのリュックはほとんど食料です。大きなカンパンの缶二つと長期保存できるプレーン味とチョコ味のパンが三個ずつ。それにカロリーメイトは六個もあります。もちろん飲み水もあります。
今日は荷物の点検と賞味期限の切れそうな食料の更新です。
食料はどれも三年から五年はもつものばかりですが、カンパンはそろそろ更新が必要のようです。
お母さんはすでに新しいカンパンを用意していたのでさっそく詰め替えました。
いよいよ待ちに待った時間がやってきました。
タケルくんは古いカンパンの封を切りました。缶には金平糖入りと書かれています。どうやら下に沈んでいるようで姿は見えません。
タケルくんはサクサクした歯ごたえのおいしいカンパンを一人で食べ始めました。
あれよあれよという間に減っていき、ピンクに黄色、緑にオレンジ、それから白と、色とりどりの金平糖が顔を見せ始め、ガリガリと食べるタケルくん。
お母さんが朝ドラを観ている間に空になった缶をよく見ると、ホームサイズ・五食分と書かれています。
その後、目玉焼きと納豆で白飯を二杯食べたタケルくんは、お母さんと散歩に出かけました。
もしもの時の避難場所や井戸のある公園の確認です。
家の近くには大きな川があるので、大雨で氾濫する恐れもあります。そんな時に避難する丈夫で高い建物も調べました。トイレが何ヶ所あるかも重要なポイントです。
しかしタケルくんの頭の中は食べ物のことでいっぱいです。みんなが集まる避難所で炊き出しが始まった時、そしてもしそれがカレーだった時、おかわりはできるのだろうか? タケルくんは心配でなりません。
でも自分で作れば好きなだけ食べれるかも? そう思ったタケルくんはお母さんに言いました。
「ぼく、将来は炊き出しのオジサンになるよ」
終
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