山札とシールドを入れ替えるのはイカサマか?
こんにちは。
デュエプレチームGlänz(グレンツ)に所属しています、iroと申します。日々楽しくデュエプレをしています。
いきなりですが、もしあなたの対戦相手が、突如山札の一番上とシールドのカードを入れ替えたとしたら、あなたはどう思いますか?
たしかに意味不明な行為で、イカサマというか、ルール違反な行為に違いはありません。紙の大会などには出たことが無いのでわかりませんが、ジャッジの方を呼ぶのが良いのでしょうか…?
ただ、確率的な話ではどうでしょう? たとえばシールドトリガーの埋まっている確率はどうなるのでしょうか?
あるいは、相手のDNAスパークで増えた盾と元からあった盾のどちらからブレイクしようか迷ったことはありませんか?
もっと単純な場面で、トップで特定のカードを引く確率が知りたいとき、色マナを引く確率が知りたいとき、そして、相手の盾にシールドトリガーが埋まっている確率が知りたいとき……
このゲームにはどうしても確率が付きまとい、割と複雑なものが多いです。
そして、それは時にプレイングミスを誘う要因になり得ます。
今回は、そういった複雑な場面での選択の一助となるよう、考えたことを共有したいと思います。ぜひお付き合いいただけると幸いです。
命題
さきほど上げた例は、すべて以下の問いに帰着できると考えました。
N枚のカードの中に当たりが$${x}$$枚入っています。よくシャッフルした後、裏向きのまま二つの束AとBに分けます。
束Aからカードを何枚か表向きにし、当たりの数を数えます。
この数によって、
束Aの残りから一枚を取り出したときに当たる確率
束Bから一枚を取り出したときに当たる確率
はそれぞれどうなるでしょうか?
結論から書くと、「どちらも同じ値になる」が答えになります。
証明については後述しますが、このとき、これら二つの確率は、残りの(裏向きの)当たりの枚数と残りの裏向きのカードの枚数で、簡単に求められることが示せます。
つまり、次の命題が成り立ちます。
カードN枚中$${x}$$枚が当たりであるとする。
このカードを裏向きのまま二つの束AとBに分け、束Aからカードを何枚か表向きにし、当たりの数を数える。
このとき、束Aの残りから一枚を取り出したときに当たる確率と、束Bから一枚を取り出したときに当たる確率は、ともに等しく、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りの当たりの枚数}{残りの裏向きのカードの枚数}
$$
となる。
なお、残りの当たりの枚数とは、束Aから取り出した以外の、まだ見えていない裏向きのままの当たりの枚数ということです。
証明
それでは、証明を書いていきます!
……と、思ったのですが、大変長くなってしまったので、別記事にて投稿しました。こちらからご覧ください。
なるべくわかりやすく書いたつもりなので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。
が、とても複雑な上に長いので、お暇な際にでもどうぞ( ̄▽ ̄)
では次に、いくつか具体例を示していきます。
具体例1 エンゲージチャージャー
Nを40枚のデッキ、束Bは5枚の盾、束Aを35枚の山札として、命題の状況に当てはめます。
ゲームが進んで山札からカードがめくられていき、エンゲージチャージャーを打つその瞬間。
先ほどの命題より、束Aの残りである山札の一番上と、束Bである各盾において、それがトリガーや特定のカード等である確率は同じになります。
よって、次ターンのエンゲージチャージャーの処理の際、また返しのターンに相手がブレイクするシールドを選ぶ際、どれも同じ確率になるということです。
ファンキーナイトメアが落ちるかどうかも、魔狼月下城が落ちるかどうかも、同じ確率になります。
すなわち、このnoteのタイトルの答えは、「確率の観点からはイカサマではない」となります。
とはいえ、絶対にやってはいけませんよ!!
ん…?
エンチャ…魔狼月下城…🤔
また、例えばエンゲージチャージャー→ボーンおどりチャージャーと続けて打つ場合。
ボーンおどりチャージャーでなにが墓地に落ちようが、追加された盾と、元々あった盾で、諸々の確率は変わりません。
前述の通り、エンチャによって増えた盾ともともとあった盾、山札で諸々の確率は等しいですから、増えた盾を含むシールドゾーンのカードを束B、山札を束Aとして考えることができます。例えば、非公開カードをよくシャッフルしてから盾6枚と山札の残りに分けたのと同様とみなせるからです。
よって、Aからなにが墓地に置かれようが、命題より「束Bから一枚取り出したときに当たる確率」は同じ式で求められるため、どのシールドをとっても、確率は変わりません。
ちなみに…
具体例2 シールドトリガーを踏む確率
以前のnoteでも示しましたが、改めて命題を用いて考えます。
なお、ここでは先程の命題の「ともに」同じ式になることではなく、「束Aの残りから一枚取り出したときの確率」や「束Bから一枚取り出したときの確率」自体が
$$
\footnotesize
\cfrac{残りの当たりの枚数}{残りの裏向きのカードの枚数}
$$
で求められることを用います。
ここでは、「当たり」をデッキ内のシールドトリガーのカード、Nを40枚のデッキ、束Bを5枚の盾、束Aを35枚の初期山札と考えます。
ゲームが進み、ドローしたり、マナ加速したりして、山札(束A)から色々なカードをめくっていったとします。
しかし、なにが何枚めくれようとも、束B(盾)から一枚取り出した時の確率は先ほどの式で求められますので、つまり1枚ブレイクされたときにシールドトリガーを踏む確率は、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りのシールドトリガーの枚数}{非公開カードの枚数}
$$
となります。
非公開カードとは、多くの場合、まだ裏向きのままである、山札の残りと盾を合わせた枚数になります。まだ見えていないカードすべてということですね。
以前のnoteと同じ結論が導けました。
また、盾が何枚か割られたあとの残りの盾についても同様です。
いわゆる刻むプレイングを取られ、残った盾。
相手がシールドブレイクにくる直前の盾を束A、山札を束Bとして考えると、束Aから何枚かカードを取り出す=盾のうち何枚かが割られたときも、命題が適用され、残った盾にシールドトリガーが入っている確率を求める式は、やはり、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りのシールドトリガーの枚数}{非公開カードの枚数}
$$
となります。
お気づきかと思いますが、これはさらに繰り返して用いることができます。
盾が刻まれたあとであっても、山札と盾は同じ確率になるわけですから、それはシャッフルして分けられた束とみなすことができます。
よって、返されたターン開始時の山札と盾を束AとBとして考えれば、このターンにドローやマナ加速などしても、トリガーの確率は常に同じ式で表されます。
そしてまた相手のターン盾が割られて……。
それ以降も同様に考えられます。
つまり、山札がどれだけ捲れようが、盾がどれだけ刻まれようが、また山上から追加されようが、シールドトリガーの確率を求める式は、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りのシールドトリガーの枚数}{非公開カードの枚数}
$$
となるということです。
このゲームのワンパントリガーが試合を大きく作用するのは、盤面の覆り方だけではありません。
ワンパンでトリガーを踏んだ際、命題より、次に割る盾のトリガー率は、踏む前と比べて、
$$
\footnotesize
\cfrac{トリガー数-1}{残りのカード-1}
$$
となります。
つまり、序盤に踏んだからといって次に踏む確率はそんなに下がらないのです。「一枚踏んだんだから、もうないだろ〜」と考えるのは、踏んだ際の運負け感を強め、メンタルに大きく影響します。
実際は、残念ながら、一枚踏んだからといってそんなに大きくは下がらないのです。ワンパントリガーの不運を受け入れ、もう一枚踏むことも考慮しながらゲームを進行しましょう。
刻んでクロックを踏める確率はどれくらいでしょうか? 踏めたとして、もう一枚ある可能性も結構あるのに? だったらgtで封殺したほうが良くないですか…? みたいなことをずっと考えており、先攻3ターン目の一点が、本当に有効なのか(相手のハンド+1と釣り合っているのか)が疑問でした。システム化してはいけないプレイングだと思いました。
具体例3 トップ〇〇の確率
トップで切り札を引きたい時、トップで色マナを引きたい時、などなど。
このときも、「当たり」を引きたいカードや色マナ、Nを40枚のデッキ、束Bを5枚の盾、束Aを初期山札35枚とします。
そこからドローやマナ加速を行い、束Aからカードが取り出されていきます。
「トップで刃牙かピクシーライフを引きたい…!」、「トップで青マナ引いてドンドン吸い込むナウを打ちたい…!」となったとき、目当てのカードが引ける確率は、命題より、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りの目当てのカードの枚数}{非公開カードの枚数}
$$
となるわけです。
色マナの場合は、例えば手札にドン吸いだけがあって青マナが欲しい場合は、青のカードの枚数-1を分子として計算できます。
ちなみに、盾一枚から目当てのカードを引ける確率も同じなので、例えば相手が1点刻んできた時は2ドロー分のチャンスがあるということです。
ビート使いのみなさま。
色マナバランスが崩壊してそうなデッキや、マナ加速に命をかかたデッキ相手に1点刻むことのリスクが如何に大きなものか、お分かりいただけたかと思います。素直に打点並べて貯める方がよいこともあります。
あなたが刻んだその盾が、彼らの行動の源となるのです。墓地ソースならぬ、盾ソースなのです。
具体例4 ジャバキッドの成功率
たまに、ジャバキッドの成功率は、自分自身を除いて、
$$
{\cfrac{リキピ}{39}}
$$
となる。
などと見かけますが、命題より、彼がリキピを拾う確率は、
$$
\footnotesize
\cfrac{残りのリキピの枚数}{非公開カードの枚数}
$$
であり、当然召喚のために2マナを要し、そもそも初手に5枚のドローを行いますので、分母が39になる瞬間はありません。公開情報はそれ以外にもあるのに、バトルゾーンの彼だけを公開情報とするのはいただけません。
手札に来たリキピの枚数によって変わってしまうので、デッキを作る時等にジャバキッドの成功率を考える際には、素直に、
$$
{\cfrac{リキピ}{40}}
$$
とするのがよいでしょう。
このことは、メンデルスゾーン、マッドネス系統の回収率について同様です。
具体例5 ペナルティガイドラインより
デュエマのルールを調べていたらこんなのを見つけました。
過剰な枚数のシールドを置いてしまい、そしてそれに気づかずにゲームを進行してしまった場合。
この場合、シールドゾーンから無作為に選び、山札に戻してシャッフルするという措置になるようです。
「理念」には、「軽いペナルティが妥当」「ただし、違反が発覚したプレイヤーが既にシールドゾーンの情報を得ていたり、著しく枚数が変化してからこの違反が発覚した場合は、その限りではない」とある一方で、
「追加措置」には、「そのプレイヤーがすでにシールドゾーンの情報を得ていた場合、かわりに対戦相手が裏向きのままシールドを選び、それらを山札に戻してシャッフルする」とあります。
実際にジャッジの方がどう判断するかは分かりませんが、命題を用いて、確率的な話をしてみます。
シールドを誤って過剰に置いてしまった後に、
① 山札からドローやマナブーストなど、無作為に山札をめくるプレイが行われた
→過剰な分の盾を無作為に選び、山札にもどしてシャッフルすればよさそう
命題より、どんな場面でも盾と山上で確率は一定です。確かに不正な感覚はあります(というか違反行為です)が、例えばドローをするとき、山札の一番上を引くのと、代わりに二番目を引くのでは、確率は変わりません。また、盾が一時的に増えていることで、例えばマナに落としたいカードが落ちやすくなっているように感じるかもしれませんが、そのカードが盾落ちするパターンもあると考えると、こちらも変わりません。
②盾がブレイクされた
→同様に残りの盾から該当枚数を無作為に選び、山札に戻してシャッフルでよさそう
どの盾であっても、余分に追加された盾であっても、シールドトリガーなどの確率は一定です。
例え余分に追加された盾をブレイクしてトリガーを踏んでいたとしても、どの盾でも確率は一緒だったわけですが、同じ処理で良さそうです。ちょっと嫌な気持ちになりますが…。
ただし、例えばすべての盾が破られたあとだとゲームへの復帰が不可能に思えます。
③手札から盾を追加した
→うーん…🤔
例えばこのカード
まず、手札に加えるカードが何になるかの確率は、盾が余分に置かれていようが変わりません。命題より、盾と山上の確率は一定なので、手札に戻すカードがもともとの盾にであろうが、山上から余分な置かれた盾であろうが、確率は等しいからです。
次の盾を追加する効果も、特に問題はなさそうです。例え山札から余分に置かれた盾がヘブンズゲートで、それを回収し打たずに埋め直した場合も、そのカードがヘブンズゲートである確率は、他の盾と同じであるため、特に確率上の問題はありません。
以上より、効果によって得られる結果の確率は変わらないと考えられます。
よって、エメラルーダで埋めた盾以外から余分に置いてしまった枚数をランダムに選び、山札に戻してシャッフルすると、確率上では通常通りのゲームに復帰できます。
……が、しかし、実際の「追加措置」によると、今回プレイヤーがシールドゾーンの情報を得ているため、「対戦相手が裏向きのままシールドを選び、山札に戻してシャッフル」することになりそうです。この場合、埋めた盾が山札に戻ってしまったり、埋めた盾がどれかわからなくなってしまう可能性が出てきます。
ミスへのペナルティなので仕方がないということなのでしょうか…?
その他、本家エメラルやアクアスーパーエメラルなどについても、処理の順番が違うだけですので、同様なことが言えます。
また、
単に手札から追加するだけであっても、無作為にシールドゾーンからカードを選んでしまうと、埋めたカードが選ばれてしまう場合があり、確率上で通常通りのゲーム進行とはいかなくなります。まあいいか。
ちなみに確率上だと、間違えて1枚余分に盾を追加してしまった場合、それを次のターン開始時のドローカードに変えても問題ありません。
ところが公式が「山札に戻し、シャッフル」としています。
その方が公正感があるからなのでしょうか…🤔
確かになんか釈然としないですもんね。
付録 いろんな確率
付録として、Glänzのサーバー内で話題になり、表計算ソフトを用いて確率を求めたものを共有します。
やや賞味期限切れのものもありますが、諸々の参考になれば幸いです。
なお、この確率はゲーム開始時のものになります。
フェアリーライフが打てる確率
序盤に打てる確率をあげたい場合、次の2通りの方法が考えられます。
①ピクシーライフやジャスミンなど、2コストブーストを増やす
②緑マナを増やす
①と②が各枚数のときの、2ターン目にライフ系統が打てる確率は、以下の表のようになります。
注1 横軸が①、縦軸が②、色付けは80%のライン
注2 ②に①の枚数を含む(=②はライフ系統の枚数込みでの緑のマナの枚数)
注3 緑マナが多色であることは無視(多色が多いと少し確率が下がる)
先攻のとき
後攻のとき
これらの数値は、ライフ系統が打てない場合を100%から引くことで求めています。
打てない場合は、以下の2パターンです。
・ライフ系統が1枚だけ引けたが、緑マナが引けない
・ライフ系統が引けない
これら確率を組み合わせの総数を用いて計算する式を考え、表計算ソフトで様々な場合を計算しました。
注目すべきは、
緑マナの枚数が19枚であってもライフ系統を12枚積めば、緑22枚でライフ系統が10枚の時より確率が上がる
ということです。
これにより、他の文明の積みたいカードから逆算して緑マナの枚数を決め、そのうち何枚をライフ系統にするか、といったデッキ構築が可能になりました。緑以外で積みたいカードが沢山ある…けど、ライフ打ちたい…と言った場合の回答がこの表になります。
実際はライフ系統を積みすぎると後半トップで引く確率もあがるので、そういったデメリットも考えなくてはなりませんが、デッキ構築の参考にしていただければと思います。
参考
ミラーでモルト王のリーサルが止まる確率
モルト王全盛期、ミラーが多発するなかで、トリガーになにを入れたらよいのかという話題になり、計算しました。
相手がモルキン単体で攻めてくる場合です。
プロトハート&ギガハート装備
モルト2点、アンタップ→モルト2点→オウギンガ龍解で1点→ガイギンガ(選ぶとEXターン)でリーサルをかけてくる場合のことを考えています。
トリガー候補と止まるタイミングは、
バーニング銀河→はじめの4点
レイジクリスタル→はじめの4点
ホワイトフレア→はじめの2点と、最後の1点
となります。これ以外のタイミングだと、踏んで止まりません。
このことを踏まえて、バーニング銀河とレイジクリスタルの合計枚数を縦軸、ホワイトフレアの枚数を横軸として表を作成しました。
こちらも止まらない場合を考えて100%から引く式をつくり、表計算ソフトで計算しています。
計算するアイディアは、このたびGlänzに加入していただいた、きたじーさんから。
私は当初、細かく場合分けが必要かなと考えていたのですが、非常にシンプルでスマートな式を立てて頂きましたので、そちらを拝借しました。
それにしても、4枚ずつの採用の場合でも、54%しか止まらないんですね…。
フレアのみだと、27%ですし…。
ドラグハートの強さがよくわかりますね。
○点でトリガーを踏む確率
ドラグハートの台頭により、ノートリの確率よりも、○点以内でトリガーを踏みたくない/踏ませたいと考えることが多くなりました。
例えば、グレンモルトがガイハートを装備して盾を攻撃する時は、2点以内で踏まなければ、ガイハートを龍解させることができます。
相手の有効トリガーが8枚だとすると、ガイハートを龍解させることができる確率はどれくらいでしょうか?
もちろん、ゲームの進行とともに変化する値ですので、ゲーム開始時の参考値として計算を行います。
求め方は非常にシンプルで、「非トリガーの枚数から○枚を取り出す組み合わせの総数」を、「40枚から○枚を取り出す組み合わせの総数」で割ることで、「○点でノートリの確率」を求め、それを100%から引くだけです。
各トリガー数における、○点(以内)でトリガーを踏む確率は、以下の表のようになります。
つまり、有効8枚の時、モルトの2点は36.41%で通らないのです。
ちなみにこれがエクス→モルトなどと3点の時は49.80%通りません。
Glänzの服リーダ(副リーダー)のDmagiさんが、「モルト王に4点以内にトリガーを踏ませたい!」とこの表を弾幕型刃牙デッキの構築の際に取り入れてくださり、BA2023winterにてベスト64まで勝ち進んでいます。
自分の作ったものが少しでも役に立つと嬉しいものですね☺️
結びに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
またなにか思いつきましたら書きたいと思います。
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