開催中止になったミュージカルのゲネプロに招待された話。 - ミュージカル「ロミオの青い空」感想 -


前回の記事書いたのが去年の6月。
一年経過する前に書けたので筆無精としてはだいぶ良いペースですね!

今回書くのはミュージカル「ロミオの青い空」の感想です。

・「ロミオの青い空」とは?
かつて1995年に放映されていた「世界名作劇場」のアニメ。
スイスの小さな村で平和に暮らしていた少年ロミオが、わけあってイタリア・ミラノで煙突掃除夫となり、親友・アルフレドや仲間たちとともに、自由に生きられる世界を作るべく「黒い兄弟」という同盟を作る話。
今回のミュージカルは、そんなアニメを原作にした、いわゆる2.5次元ミュージカルです。
公式サイト→https://www.romisora-musical.com/
公式Twitter→https://twitter.com/romisoramusical

さて、今回の舞台をなぜ見に行くことにしたかというと、ひとえに目当ての出演者がいたからでした。

ダンテ役・南部海人さん。

舞台『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage track.1にてオリジナルキャラクター「狐久里梁山」役を務めた方です。そういうことです。

といっても、ダンテって誰だっけ、程度にしかアニメの記憶がない。
原作アニメに関しては、リアルタイム放送時に見ていたおぼろげな記憶しかない状態。でもリアルタイムで見てたのは間違いない。

覚えてるのはロミオが煙突掃除をしてたことと、アルフレドという親友が病気になることくらい、という超断片的な記憶のみでしたが、とはいえ全体の雰囲気はなんとなく覚えていたので、ミュージカル化が発表されたときは「さぞかしミュージカル映えするだろうなあ」という印象でした。

そんな状態で、アニメの配信もしていたにもかかわらずうっかり予習しそこねたまま幕開けを目の前にしようとしていた時、ある知らせが舞い込みます。

「3/30夜、3/31昼公演中止のお知らせ」。

理由は言うまでもなく、ここ二年間のライブエンターテイメント行くオタクにはもう慣れたものですが、実際発券したチケットが手元にある状態でのお知らせはやっぱりキツい。

初日である3/30夜公演を取っていたので、中止かあ、と落ち込んでいたのですが、そこに追って入ってきたもう一つのお知らせがありました。

「3/31 取材入りゲネプロご招待」。

こんなん初めて。

それは、中止公演のチケットを持っている方をゲネプロへ招待する、というお知らせでした。
払い戻しはするけど公演も見せる、こんなのあり???
と混乱しつつも、まあせっかくなので行くしかあるまい、と思い、急遽有給とって向かうことにしました。
なんたって開演時間11時30~15時15分。

……3時間45分!?!?!?

原作映画より一時間も長くなったと話題の舞台『千と千尋の神隠し』ですら3時間だそうなので、大ボリュームにもほどがあるだろ……というのが事前の驚き。
実際、休憩時間10分で3時間35分の上演時間だったわけですが、それにしたってとんでもない長さです。
(ジャンルによってはもちろんもっと長い舞台はありますが、こと2.5次元系でくくるとなれば驚異的な長さと言って過言ではないかと思います)

そのほか、劇場が近頃(あんまりよくない方向に)話題の東京建物 Brillia HALLであることもあり、本当に面白いのか、ちゃんと楽しめるのか、正直なところおっかなびっくりで幕開けを待ちました。

※ブリリアについてはこちらを参考にしました。
https://clarice20.hatenablog.com/entry/2021/08/20/200717

座席は、もともと持っていたチケットに関係なくランダム配布。
2階席中央あたりから、1階席のO列右端へ。
これが吉と出るのか……凶と出るのか……

非常に不安になりながらでしたが、着席すると左前が背の高い方だったので舞台中央が若干遮られるものの(いやまあだいぶ見づらかったですが)、近さ・角度的にはそこまで悪くないなという印象でした。
O列は前ブロックの最後列なので、すぐ後ろが通路というだけでちょっと気楽。

心配だった音響に関しても、はじめは若干声に対してオケが大きいような気がしましたが、慣れたのか、調整されたのか、すぐに気にならなくなりました。

前提の話をものすごくダラダラと書いてしまったのですが、いよいよ内容に入ります。

一応、これから見る方のために大きなネタバレは避けて書きますね。

オープニングは、嵐の中船を漕ぐ少年たち。
「帰りたい」と叫びながら、暗い荒波を渡っていきます。

この時点で、コーラスが厚い!!!!! とびっくり。
ストーリーの細部をまったく覚えていないのでなにが起きているのか状況はさっぱりなのですが、衝撃的な出だしの演出としてつかみはバッチリ。

そして場面は変わって、さっきのシーンに至るまでの回想かな、という流れでロミオの生い立ちについて。
彼が生まれ育った村と、そこに現れた人身売買人の男の登場。男の策略により、ロミオが村を出てミラノへ向かうまで……というのが、歌に乗せて語られていきます。

この歌による語りが、世界観や状況を提示するのに非常にスマート。
特にこの公演は、2.5次元系ではかなり珍しいレベルで大人数のアンサンブルがおり、重厚で華やかなコーラスが随所で楽しめます。

メディアミックスというのは、ただ原作に忠実であることだけではなく、違う媒体でやることによって新しい価値を創造することが必要だとどこかで聞いたことがあるのですが、この舞台は間違いなく、歌による世界観の再構成というかたちで、アニメだった原作に新たな価値を付け加えたのだなと感じました。
ハモりが綺麗なミュージカル、それだけで楽しいですからね。

個人的にすごく楽しかった思ったシーンが、ミラノについたロミオとアルフレドが競りにかけられるところ。
「50リラ!」「80リラ」「51リラ!」と親方たちvs人身売買人シトロンで競り合う様を、軽快な音楽とダンスにのせて表現しているのですが、ここがとても面白い。
親方たちが椅子代わりのカホンを叩き、足踏みをしながら歌うという演出がいかにもイタリアの陽気で豪快なおじさんたち、という雰囲気で、ミラノの街の空気が伝わってくるようでした。

そういう歌の雰囲気で、起きてることとしては人身売買だから良いことではないはずなんだけど、それでもこの街は明るくて良いところなんじゃないかな、と希望が持てるように思えて、そういう「歌による雰囲気作り」がすごく上手いんですね、全体的に。
だからそのシーンをどういう気持ちで見ていいのか、誰が特別なキャラクターなのか、といった物語の流れやキャラクターの立ち位置・力関係がよくわかる。上手い作りです。

それに舞台の天井に届くかというほどの、セットの建物。
煙突掃除夫となったロミオが煙突をのぼり、三階くらいの高さにある煙突から顔を出して見る、抜けるような青空……それこそが「ロミオの青い空」を象徴するシーンになるのですが、これが実際の舞台の高さも相まって非常に印象的なものになっていたように思います。

と、細部を語っていくと本当にキリがないくらい、ミュージカルとして、舞台としてすごく丁寧に作られている作品なのが、開始15分するや否やの時点でよくわかりました。

そして本当にキリがないので各シーンについて書くのは割愛するのですが、全体で見てもやっぱり素晴らしいとしか言いようがない出来でした。

前述の通りアニメのストーリーはほぼ記憶にない状態だったのですが、それでも話の筋がスルスルと頭に入ってくる。

ロミオという少年の物語にフォーカスし、たくさんのキャラクターが出てきても、起きた出来事の一つ一つとリンクして登場・退場・再登場、と複数の線を編むように繋がってストーリーが流れていくので、なんの話をしているのか迷子になるようなことが一切ない。上手い構成になっているなと感じました。

たとえば、ロミオを引き取ったロッシ親方の家に暮らす少女・アンジェレッタ。
彼女は貴族の血を引いていて、祖母である伯爵家当主イザベラと再会し、家族として心を通わせる、というのが前半での一つの山場となります。

そこではある種ボス的な存在として、問題が解決すると退場するイザベラですが、後半、国王も参加する晩餐会のシーンで再登場します。そこでロミオたちがある計画を実行するのですが、偶然(というか貴族である以上ある意味必然)居合わせた彼女が手を貸す……というかたちで活躍がありました。

こういったかたちで、「アンジェレッタとイザベラの話」が単発で終わるのではなく、次のシーンへの布石にもなる。そういうかたちでシーンの一つ一つが繋がって、大きな物語を構築されていく、という構造でした。
もちろんこれだけでなく、全てのシーンに対して言えることです。

もちろん、おそらく原作アニメからそういう作りになっているのだろうなとは思うのですが、舞台という限られた尺に収めるにあたって、一つ一つをぶつ切りにすることなく綺麗にすべて繋げる、というのはやはり技術の必要なことだと感じます。

シーン一つ一つをぶつ切りにしないこと、簡単なように思えますがシナリオ作りで一番難しいといっても過言ではないですからね…………………………(仕事のことを考えている顔)

そういう点でも、実に丁寧な作品だなと感じました。

それから各々の役者さんたちについては各種メディアなどで語られると思うので、そろそろ贔屓の俳優さんのこと話しますね。

そう、ダンテ役南部海人さんです。

南部さんはもともとダンサーとしても活躍する方なのですが、とにかく立ち姿が美しい。動きの一つ一つが美しい。
登場して、歩いて、立って、しゃがむという一連の動作どこをとっても完璧な絵になる。たぶん体幹がすごいんだと思う。

もちろんただ美しいだけじゃなく、ダンテというキャラクターによく合っているように感じました。
自分のことを「おいら」とか「ダンテ様」とか言ったりするお調子者な少年なのですが、そのやんちゃな少年感がすごい。
朗らかな笑顔とハスキーな独特の声が大変癖になる。
立ち姿が堂々としていてものすごく舞台映えするんですよね。とてもよかった。

ダンテはストーリーを語る時に、絶対に外すことのできないキーキャラクター……というわけではないのですが、ロミオやアルフレドが生きるミラノの街で一緒に働く少年、「黒い兄弟」のムードメーカーとも呼ぶべき仲間、という、その場その場の空気を動かすのに必要不可欠な存在感だったように思います。

詳細は、一応ネタバレになるので伏せますが、終盤で落ち込んだロミオに喝を入れるシーンがとても素敵で。
ロミオに前を向けと叫びながら、自分も泣きそうなのをずっと堪えている、そういう大胆さと繊細な感情を兼ね備えた演技が素晴らしかったなと思いました。

地に足のついた、堂々とした存在感、本当によかった。この人を見るためにチケットを取ったわけですが、本当に見てよかったなあと思わされました。

本当に立ち姿が美しいから見てほしい。グッズに個別ブロマイドがないのが惜しすぎる。役どころからしてもあってよかった。

あと「黒い兄弟」と街の悪ガキ集団「狼団」の戦いが中盤~後半の山場になるので、喧嘩シーンでは見事な殺陣が見られます。
体捌きがねえ……見事なんですよ……派手なアクロバットをするわけではないのですが、細々とした動き、攻撃の受け方であったり攻撃をするときであったり、どの動きをとっても様になるんですよね……

まず南部さん好きな人は本当に大満足できるのでぜひ見てほしい。

というわけで、それだけのものを見たからには、せっかくの取材入りゲネプロだしということもあり、まあ別に関係者でもなんでもないんですが、お礼もかねて少しでも宣伝になることをしようと思ってこの記事を書いたという運びです。

ただ、非常に悲しいことに4/1夜公演はキャスト急病のため中止、土日の公演もまだどうなるか、という状況です。

あれだけの作品が、そんなかたちで日の目を見ないのはあまりにも辛い。

そういう思いもあり、誰か一人でも興味をもってくれる人が増えればと思います。(もちろん中止になってしまったら我々ファンにはどうすることもできないのですが……)

4/3の千秋楽は配信もあるそうです。
現地には行けなくとも、少しでも興味があるという方。
自信を持って勧めます。

≪チケット情報≫
https://www.romisora-musical.com/ticket

この後の公演、無事に幕が開くことを願いつつ、配信に向けて原作アニメ33話を見ることにします。

単発とかじゃなく末永くやってほしいなー!!!

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