村上春樹 『猫を棄てる』
始めて読んだ村上春樹の本は、『風の歌を聴け』で、中学生か高校生1年の頃と記憶している。父の本棚に置いてあった。
それから、もう40年近くになる。ずっと、彼の本を読んでるわけではなく、何年も読まずにいることもある。でも、必ず、また手に取ることになるのが、不思議なもの。
『猫を棄てる』は、ニューヨークの市立図書館の日本語コーナーで見つけた。小さな本だったので、内容は確認せず、借りて読んでみた。
村上春樹が、自身の父親について書いたエッセイだった。
彼の作品は、恋愛小説だとか、マジカルリアリズムだとか言わたりする。それは、そうなのだろう。けれど、全部の出版物を読んでいる訳ではないが、私は、特に小説について、日本の対アジア戦争、主に中国戦線が、主なテーマだと考えている。さらに、『戦争体験と、その傷を受け継ぐこととは。』だろうか。
『猫を棄てる』は、そのテーマの源、父親について、村上が語るエッセイだ。
父親の戦争体験について、村上春樹が、父親が亡くなった後に調べたことと、彼の記憶にあることが、中心の本である。
ただ、その部分については、ここでは、上手くまとめられないと思うので、書かないでおこうと思う。
以外に、一つ。
中に、今でも、『父親を落胆させてきた、その期待を裏切ってきたと』感じているーということが、語られている。そして、村上と、父親の間柄が、長年にわたって、疎遠になったこと。亡くなる前には、和解のようなものは、できたにしても、まだ、完全に息子側の傷は癒えてないようである。
実は、私も、似たような身だ。父が、私の生き方にがっかりして、怒っている状態なのである。私の場合、その事実を、2年前、帰国した際に、はっきりと、本人から告げられた。それまで、このことを、知らなかったので、かなりショックだった。
でも、ずっと前から怒っていたとしたら、私が、知らずに過ごせたのは、良かったと思う。もしかしたら、最近、腹が立ち出したのかもしれない。
現在、父は、年はとったものの、生きているので、そのあたり、どうにかなると良いのだが、無理かもしれない。
確かに、それは辛い。
ただ、残念でも、私が私でいる限り、無理なことはある。それは、心して、受け入れようと、また、思った。